第二十話 反逆の勇者・バルト
オリビアが先導して城内を歩いていく。煌びやかな通路を通り抜けて、地下に続く階段を降りていく。
ここは確か――
「勇者なら城内を見たことがあるだろうから分かると思うが、この先は牢獄だ。罪を犯した者が入る」
王様が渋った理由はこれか。オリビアが話すと少し面白く感じてしまうが、イジるとラキアが怒るから静かにしておこう。
階段を降りきると、左右に鉄格子があって1人一部屋ずつ割り当てられていて収監されていた。時折唸り声が聞こえてきて気持ち悪い。
「目当ての罪人は、1番突き当たりにいる」
どれくらい歩いただろうか。100人程罪人を見た先に、望みの相手が目に入った。
大胆不敵にあぐらをかいていて、両手には鎖が巻き付けられている。鎖の先には鉄球が付いていて動きを制限されていた。にも関わらず、眼光は一睨みで人を殺せるんじゃないかと思う程鋭い。
「なんだオリビア。今日の飯の時間はもう終わっただろう。それに知らねぇ奴らを引き連れてくるなんて、一体何の用だ?」
バルトは問いを投げかけた。
まだ若そうだが、無精髭が伸びていて随分と声はしわがれている。
伸びている黒髪が鬱陶しそうだ。
ラキアはマジマジとバルトを見つめている。時折り首を傾げているが何をしているのか。
そんなラキアを横目にオリビアが口を開く。
「喋る許可はしていないぞバルト」
「じゃあ喋らせるようなことをするなよ。用事があるから来たんだろう? 話せよ」
大罪人のはずだが、立場は対等だと言った風だ。
オリビアは大きく息を吐いて話始めた。
「条件付きでお前を牢屋から出してやる」
「ほう? 急にどうした? こんなにオレを縛っておいて」
「お前を半永久的に牢屋から出す代わりに、魔獣討伐を手伝ってもらおう」
オリビアの話を聞いたバルトは口角を上げた。
「なーるほどねぇ。都合のいいときだけ利用するってか。てめぇらのやりそうなことだな」
そう言ってバルトは俺とラキアを交互に見た。
「こいつらも勇者ってわけか」
こいつらも……だと?
バルトは勇者だというのか。牢屋に入れられた勇者なんて聞いたことがない。
オリビアは俺の動揺を察したのか、説明に入った。
「こいつはスキルを手に入れた途端、王国に対して反乱を起こしたのだ。そのときは私が捕らえたのだが……」
「はっ、あのときは不覚をとったが、今のオレならもう負けねぇよ。この世界でオレに勝てるやつはいねぇ。秒で王国を支配してやるよ」
不思議と負け惜しみには聞こえないバルトの言葉。感じる魔力量がオリビアを上回っているからか。今まで牢屋に居たというのに練り上げられている。
だが、俺はバルトを仲間に入れるつもりはない。
「オリビア、残念だけどこの話はなしだ。」
俺は後ろを振り返りバルトから目を逸らす。
「愛国心がなくて勇者は務まらない。バルトは確かに牢屋の中がお似合いの男だ」
「カイト君……」
バルトは笑いを堪えきれないといった様子で肩を震わせていた。
「クククッ、まーオレを御しきれる自信のねぇ雑魚はやめておいた方が無難だな。足すくわれて死ぬだけだ」
刃のようなバルトの言葉が脳天に突き刺さる。
俺が……雑魚だと?
額が俺の意思に反してピクピクと動くのが分かった。
「………………オリビア、バルトを牢屋の外に出してくれ」
「なっ……カイト君!?」
「嫌なら俺が出す」
俺は掌をバルトが居る牢屋にかざす。
「重力操作・下転」
重力場を形成して鉄格子を平にしてバルトの鎖を破壊した。
自由になったバルトは立ち上がった。大して驚きもないのか、首を鳴らして俺を見る。
「中々おもしれぇじゃねぇか。んで? 魔獣討伐とやらを手伝えばいいのか?」
「バカなことを言うな。まずお前には上下関係を分からせてやる」
ラキアとオリビアはポカンとしていたが関係ない。大体覚悟もなく勇者をするというだけで虫唾が走るのだ。力の差を見せる必要がある。
「オリビア、城内に戦える場所はないか?」
「一応、騎士の演習場があるが……」
「案内してくれ」
俺は即座に答えた。
オリビアは迷っているそぶりをみせていたが、俺が本気であることが伝わったのか、観念して前を歩き始めた。




