第十二話 お騒がせ騎士団長
「どうしてこんな真似をしたんだ」
呆然としているオリビアに問いかける。
返事はない。
屍でもないくせに。
ラキアがオリビアの近くに駆け寄った
「おい、ラキア。危ないぞ」
「大丈夫です。抵抗する意思は感じられませんし、これ以上厳しく追求してもダメだと思います」
オリビアの肩に手を置いて優しく語りかけるラキア。
確かにラキアの言う通りやり過ぎてしまったかもしれない。
少し任せてみよう。
「オリビアさん、なんでこんなことしたんですか?」
「…………私は勇者になりたかったんだ。みんなに認められる勇者に。18歳のときに得たスキルも他を圧倒するものだった。けど、刻印は得られなかった」
ぽつり、ぽつりと降り始めの雨の様に言葉を紡いでいくオリビア。儚げな表情は幼い少女の様だった。
「なら、一緒に行動しましょうよ」
「え!?」
俺とオリビアが同時に声を発した。
今さっきまで殺されかけていたのだが……。まあ、ラキアがそう言うなら別にいいか。
「確かに刻印はないかもしれないですけど、勇者として国を守りたいという意思は本物じゃないんですか?」
「それは……そうだが……」
「じゃあいいじゃないですか! 仲間が増えることはいいことです! カイトさんもいいですよね?」
こうなったラキアは止められない。仲間――家族が欲しいラキアにとっては1人でも周りに人間が多いほうが休まるだろう。
「ああ、いいよ。旅は道連れ世は情けだ」
俺はそう言ってオリビアの元へと近づいて手を差し伸べる。
「……寝首を掻くかもしれないぞ」
「大丈夫だ。絶対に負けないから」
オリビアの舌打ちが聞こえた様な気がする。しかし表情は付き物が落ちた様に綺麗な笑顔になっていた。
「え……と、そういえば王様の命令で今回ここまで来ましたけど、これは任務完了ってことでいいんでしょうか?」
ラキアは人差し指を顎に当てて首を傾げた。
うーん、確かに王様に説明が難しいところではある。犯人が獣ではなく騎士団長というのだから、牢屋に入れられたっておかしくない。
「まあ、王様にはきっちり説明する必要があるだろうけど、国民を脅かしたとはいえ、直接的な被害は別に出してないから大丈夫……じゃないかな」
オリビアを安心させる意味も含めて半信半疑ながら答える。
「絶対とはいえない。自分で言うのもなんだが、私は王からかなり信頼を得ていた。今回の件は裏切り行為といっていいだろう。もしかしたら投獄されるかもしれないな」
そう言うものの、オリビアは後悔などない顔つきで俺の手を取り立ち上がった。
「それでも私は勇者という立場でこの国を守りたい。それだけは真実だ。だから、君のパーティに入れさせてもらえるか?」
深々と頭を下げるオリビア。もう悪態をつくこともなく、ただひたすらに懇願している。
ラキアを見ると、女神の様な微笑みで俺を見ていた。
全く。オリビアはやり方は間違えていたが、国のことを思ってのことだろう。俺に権限はないけれど、俺個人としては許してやるか。
「ああ、これからよろしく頼むよ、オリビア」
そうして俺たちは無事任務を完了してお城へと帰った。




