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第十一話 猛獣退治?

 城を出て北区方面へ向かう。

 王国の外れに向かえば向かうほど、建築物や人の影は消えていき、木々が溢れた土地へと変わっていく。


 ――気のせい……だろうか。

 城の中でも感じたが、妙にオリビアから圧をかけられているような気がする。

 魔力を当てられているような……まあ、俺からしたら微弱も微弱。大したことはないが。


「王様はカイト君たちの実力を見込んでこのクエストを頼んだみたいですね」


 僕の顔を見ずに話始めるオリビア。

 

「ええ、そうみたいですね。正しい選択だとは思いますよ」

「随分と自信があるんですね」


 なんだ?

 やけに突っかかってくるじゃないか。

 王様からのクエストとあっては緊張せざるおえないのかもしれないが。


「着きましたよ」


 ラキアの言葉で意識を現実に引き戻す。

 王国と未開の地は明確にラインを引いてある。

 クエスト以外でラインを踏み越える人間は基本的には自己責任になる。


 そのラインより目についたものは、獣の死体だった。


「これはまた派手だな」


 獣はオオカミだった。

 はらわたを一刀両断といったところか。

 他にも転がっているオオカミの死体は誰も同じ死因だ。


 気になるのはその切り口。

 一撃で絶命させてるうえ、わずかに凍っている。


 俺の経験上こんな傷跡を残す猛獣、魔獣の類は見たことも聞いたこともない。

 考えられるのは――


 空気が凍る。

 比喩でもなんでもない、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「カイトさん!」


 ラキアが叫ぶ。

 振り向くと、オリビアがラキアを後ろから捕まえていた。

 片手にはレイピア。

 抵抗すれば殺すという意思表示か。


「……どういうつもりですか? オリビアさん」

「別にどうということはない。君たちを殺して私が勇者になるだけだ」

「騎士団長という地位についてなお勇者にまでなりたいなんて、強欲ですね」

「王様の近くにいるというだけだ。私は勇者として名を上げたい」


 勇者になりたくてもなれなかった人間、か。

 そういう人間も一定数いるとは思っていたが、こんな荒技を仕掛けてくるとは思いもよらなかった。


「仮に俺らを殺したところでオリビアさんに勇者の刻印はない。どうやって勇者になるつもりなんですか」

「君の右手を切り取れば問題ないだろう? 安心しろ。凍結して持ち運べば腐らない」


 おめでたい脳みそだ。

 王国一丸となって繁栄を望むべきなのに、なぜこうも利己的な人間ばかりなのか。

 

「さあ、この女の子を殺されたくなければ腕を後ろに組んで……」

「そんな面倒なことをしなくても、簡単に勇者になれる方法があるぞ」

「なに?」


 俺は両手を前に出して、胸を揉むポーズをする。


「その大きなおっぱいを俺に差し出せば、勇者なんて称号、いくらでもくれてやる」

「なっ……!」


 僅かな弛緩した雰囲気。

 その隙を穿つ。


「重力操作・下転」


 レイピアの切先に重力をかける。

 ラキアは察したのか、捕縛から逃れて俺の元まで走り寄る。


「……ありがとうございます」

「お礼は後だ。猛獣退治はまだ済んでいない」


 オリビアは深々と地面に突き刺さり続けるレイピアを引き上げようとしていた。


「なんだッ……! この力!」

「なんてことはない、重力操作だ。王様も言っていただろう。猛獣退治には俺が適任だと。最強なんだ、俺は」

「こしゃくな!」


 レイピアから手を離したオリビアは、空気を凍らせて氷の剣を作り出した。


「私のスキルは、《氷獄紋(ひょうごくもん)》、氷を操るスキルだ」

「ほお」


 なにをしてこようと興味はない。

 負けるわけがないのだから。


 不意に足元が冷える感覚に襲われる。

 オリビアの足元から地面を伝って凍らせてきたようだ。


「そうら、もう動けまい!」


 オリビアは勝利を確信したのか、氷の剣を両手で持ち突っ込んでくる。


「喰らえ! 氷獄紋・氷壊剣(ひょうかいけん)!」


 上段に構えられた氷の剣は、周りの空気を取り込んでさらに巨大な剣へと変貌していた。


「氷を操るスキル……か。いいスキルだな」


 魔力を練り上げる。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「俺以外が相手ならいい線いっていただろうが……」


 掌をオリビアに向ける。

 

「重力操作・炎上転!」


 瞬間、発火する。

 掌から作り上げられる直径1mほどの火球。

 唇が裂けるほど乾燥していく。

 火球は空気を入れた風船が飛んでいくように、自然と掌から放たれて飛んでいく。

 向かう先は――!


「な、なんだこれはぁぁぁぁぁぁ!!!」


 オリビアの鎧に命中する。

 熱量だけでなく、突進力も桁外れの火球。

 鎧を溶かしながらオリビアを押していく。

 

「氷獄紋・六華(ろっか)!」


 6枚の氷の花弁がオリビアの上に現れ火球に突き刺さる。

 だが、まるで意味がない。氷の花弁は火球に全て飲み込まれる。

 オリビアは大木に体を打ちつけた。もう後ろがない。


「死……死ぬ! 分かった! 私の負けだぁぁぁぁ!」

「そう言って騙してまた不意を突くんじゃないか?」

「そ、そんな余裕があるか! 悪かった! 私が悪かったー!」


 指を鳴らして火球を消す。

 オリビアは項垂(うなだ)れるように膝をついた。

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