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「えっと…… 非科学的潜在力を使うテロリスト集団よ。なんの略だかわすれたけど」
清川が言うと、すかさず中谷が略したの部分を説明する。
「Aはなんだったかな? アカシックだったかな。KKはカルマの守護者という意味らしい」
「カルマの守護者ならKGじゃないんですか」
「清川くん、俺が決めたんじゃないんだから、そこ突っ込まないでくれる?」
中谷は必死にキーボードを打って、どこかにアクセスしている。
亜夢が画面をのぞき込むと、ブラウザでたくさんのタブを開いている。
「おかしい…… どこにも書き込みがない」
「書き込みがないってなんのことですか?」
亜夢がたずねると、中谷は説明した。
「ショートメッセージSNSや、電子掲示板システムに書き込みがないんだ」
「まだ始まったばかり、とか人質になっていることに気付かないんじゃないの」
アキナがそう言うと、清川が言った。
「もう一時間以上経過しているわ。どこにも出れないだろうから、さすがに気づいているでしょうね」
中谷がノートPCの上で手首をこねている。
「あれだ…… 清川くんはしってるかしらないけど」
「なんですか?」
中谷がふーっと息を吐いた。
「|対テロ用の情報統制(インフォメーション・コントロール・フォー・カウンター・テロリズム)だよ」
「対テロ用情報統制(ICCT)…… うわさは聞いたことはあります」
「これが発動されているってことは、相当やばいぞ。中の人の安否も。おそらくSATも動き出している。犯人をやることが主だからな。人質が生きてようが死のうが関係ない」
「えっ? 警察組織は国民の安全や財産を守る仕事ではないんですか?」
亜夢は顔を真っ赤にして怒った。
「全員を均等になんか守れない。だから、そのた大勢の命や財産を脅かされないうちにテロを排除するのが目的なんだ。まさか今日これが発動されるとはな」
「中谷さん。じゃあ、私達は何のために呼ばれたんですか? 」
「……」
中谷は亜夢から視線をそらして、ノートパソコンの画面を見つめた。
そして、なにやらまたキーボードから打ち込みを始めた。
「俺たちも、とにかく現場に向かおう。清川くん」
「はい」
清川はもくもくとパトカーを走らせた。
都心に近づくにつれ渋滞で移動が遅くなった。しかし、問題のドームスタジアムの周囲は交通規制すらなく、まるで何事もなかったような状況になっている。
亜夢たちが乗るパトカーも誰に制止されることもなく、ドームスタジアムの駐車場に入ることができた。
「どうなってるの?」
「情報統制しているから、見た目でわかるような規制を取れないんだろう」
中谷は自らのスマフォを清川につきつける。
「アニメの壁紙がどうしましたか?」
「違う! 『圏外』だってことだよ。他人の趣味に口出さないでくれ」
「いいとも、わるいとも、ロリコンだとも、変態どすけべとか、何も批判してないじゃないですか」
「言った言った、今言った!」
中谷と清川はまるでプロレスの開始直後のように、手を合わせ、指を絡ませるようにして、力比べをしている。
亜夢とアキナも自分のスマフォを取り出して確かめる。
確かにアンテナ強度の表示が『圏外』になっている。
「ほんとに圏外だ」
「中谷さん、これも情報統制なんですか?」
ようやく中谷が力比べに負けたようだった。
「ああ。かなりピンポイントで圏外を作り出せるそうだよ。これは政府と携帯電話会社と細かく取り決め……」
中谷は口を開けたまま立ち止まった。
「そうだ。干渉波キャンセラー。携帯電話の会社なら問題なく作れるのかも?」
「?」
「もしかしたら、キャンセラーである必要はないのかも、ってことさ。干渉波を止めれれば、その空間は非科学的潜在力を使える人の聖域になる」
中谷は立ったままノートパソコンを開けて何か調べてみようとする。
「ちっ、圏外じゃなにも……」
ドームの入り口から、数人の男が急ぎ足で出てくる。
男たちはみなバラバラでカジュアルな服装だった。しかし、あからさまに組織だって行動している。
「えっ?」
亜夢が言った時には、四人は男たちに囲まれていた。
たとえようのない無言のプレッシャーがかかかっている。
一人が口を開く。
「君たちがヒカジョの子だね?」
亜夢とアキナは中谷の方を見る。
中谷の身体がブルっと震えた。
「じゃあ、中谷くんに聞こう。この娘たちを借りるぞ」
「……この娘達はものじゃありません」
すると男たち前がんが、深々と礼をした。
「君たちの協力が必要だ」
中谷がうなずいた。
亜夢とアキナはそれを見て返事をした。
「はい」
男たちが出てきた入り口へ戻っていく。
亜夢とアキナがそれについて行く。清川と中谷が続いて入ろうとすると、しんがりの男が立ち止まって手を広げる。
「中谷さん、清川さんはここでお待ちください」
「えっ……」
「命令を守らないと……」
しんがりの男は手のひらを水平にして首に当てた。
「……」
亜夢とアキナは男たちが軽快に階段を上がっていくのに、必死になってついていっていた。
階段を上がりきって、小さい扉を潜って入った部屋は、どうやら狭いパイプスペースでコンクリート打ちっぱなしで様々な配管がそのままだった。その部屋の中には、配電盤やら機械類が並んでいた。
最初から部屋にいた、リーダーらしき男が近づいてきて、亜夢とアキナの前で立ち止まった。
「君たちが非科学的潜在力を使う子か」
二人は同時にうなずく。
「この戦いは負けられない。大勢の命がかかっている。敵は銃を持っていて、加えて電撃、身体の硬化など、君たちと同様に非科学的潜在力を使う。その力は君たちにとっては当然で、我々が銃を持ってそれに対抗するのは酷いと思うかもしれんが、奴らは非道でこのスタジアムの人間を人質に取っているような人間だ。我々が行うことに協力をしてもらうために呼んでいる。もしそれができないようなら、悪いが君たちも同罪として、銃を向けることになる」
「……なぜ、いきなり私達に銃を向ける話をするのですか?」
「同じ非科学的潜在力を使うものとしての共感を捨ててくれ、ということだ。そして、テロリストとして犯人を殺してしまうかもしれないが、それについて理解してもらう必要があるからだ」
「……殺すかもしれない、というのには」
「参加できないというのか」
「はい」
亜夢は男を睨みつけるようにしてそう言った。
アキナも慌ててうなずいた。
「分かった。水沢。この子達をもとの場所に連れて行け」
呼ばれた水沢という男が、亜夢とアキナに銃を突きつけた。
「悪いが、作戦に賛同いただけないなら、さっきいた地下駐車場に戻ってもらう」
亜夢とアキナは手を上げて後ろを向いた。
「扉を出ろ。さっきの廊下の先の階段から戻るぞ」
男がしんがりをつとめ、亜夢が先頭になって階段を下りていく。
「亜夢。本当にこれでいいのかな?」
「テロリストだって人だよ。人殺しに加担できないよ。だいたい私達は連れ去られた美優を探しに来たんだし」




