62話:「あれから11日後」
リリスとの直接対決を何とか回避することに成功した大和たちは
再び馬車を走らせ11日ほど掛けて3つの補給拠点にたどり着き
今現在最初の拠点から数えて5つ目の拠点を目指していた。
地図の順路通りに行けば、あと2日ほどで次の拠点に付く予定だ。
ここまでの時間を使って、リナたちは目まぐるしく成長しているが
本人たちの性格は全く変わる気配がなかった。
男女別でテントを張って寝るのだが、朝になったら三人とも大和のテントに
潜り込んで四人で川の字になって寝ていることがしばしばあった。
あまりにそれが続くため大和は三人を布団で簀巻きにして
テントに投げ込むという暴挙に出たりもしたが、三人とも翌日反省の色を見せたので
それ以降は潜り込んでくることはなくなった。
拠点で寝泊まりするときはいいのだが
野宿となるといつモンスターが襲ってくるかわからないため
交代で寝ずの番を過ごすことがあった。
その時間を利用して大和はさまざまな実験的なことを行った。
まず一つがアイテムボックスの件だ。
アイテムボックスに入れられる大きさの限界を知るため
岩場にあった10メートルほどの大きさの岩の塊を仕舞ってみたが難なく入った。
だが入ったのはいいが取り出すときに若干取り出しにくいことが分かったので
あまり大きいものを収納するのは控えた方がよさそうだ。
次に魔法やスキルの実験で【練度】に関する実験を行った。
具体的には大和がタワーファイナルで修得した魔法やスキルには練度という概念は存在しない
覚えたものはすぐに使うことができた。
だがこの世界での実践経験がまだまだ足りないためいろいろ試していかないといけない。
その一つとしてこの世界とタワーファイナルの世界で魔法やスキルに関して違いはないのか?
その答えはYES、つまり違いがあった。
具体的には短時間で同じ魔法やスキルを連続使用した場合
最初に使ったものと2回目で使ったものでは2回目に使った方が
消費するMPの量や威力が少し落ちてしまうという事実が判明した。
スキルに関しては一回の戦闘で使用できる回数に制限があるが
どうやらこの世界では戦闘が終了すればまた再び使えるようになるようだ。
ただし、戦闘が終了してから3分以上が経過しないと
再び使えるようにはならないことがわかった。
これがこの10日ほどで大和が調べた内容の成果だ。
実は他にも調べたいことがあったのだが
夜の見張りを大和が積極的に引き受けるのを不審に思った三人が
ある時に途中から起きてきたため実験ができなくなってしまったのだ。
余談だが三人はどうやら大和が見張りを買って出る理由を
彼が日々抑えている欲望を発散させるために一人で秘め事をしているのではないかと思い
その手伝いをしようと起きてきたらしい。
「言ってくれれば私はいつでもお相手します! ってか今すぐやりましょう!!」と宣っていたため
三人ともチョップをお見舞いしておいた。
このときマーリンも同じことを言ってきたのは少し意外だったが・・・・
そんなこんなで大和たちはアース大陸の三分の二ほどの位置まで進めてきたことになる。
残すところ補給のための拠点はあと2つあり
その先にはアース大陸の隣、ビルド大陸に渡るための港町ドグロブニクを残すのみとなっていた。
「最初のうちはどうなることかと思ったけど、なんとかここまで来れたな!」
「そうですね。 今思うと長かったような短かったような・・・・」
「ヤマトさまと出会わなかったらこんな体験できませんでしたよっ!」
「マーリンもヤマトさんに会わなかったらジェスタでずっと雑貨屋を営んでましたですのん」
それぞれが今まであった出来事を振り返り感傷に浸る。
もう慣れてしまった馬車での長旅、今は車輪がからからと回る音だけが聞こえてくる。
外からは暖かい太陽の陽気を含んだ風が大和たちの頬を撫でながら吹き抜ける。
そんな和やかな雰囲気が心地よく四人は顔を見合わせ声を出して笑い合った。
ひょんなことから始まった魔王討伐の旅、大和はこの時こんな旅も悪くないなと思った。
2日後次の補給拠点となる町が見えてきたため馬車を止めアイテムボックスにしまう。
そこから30分ほど歩いて行くと、この旅が始まって5つ目の拠点に到着した。
町に入るとそこには異様な光景が広がっていた。
その町に活気はなく人もまばらにしかおらず、ほとんどの人間が
ぐったりと壁際にもたれ掛かっておりまるでゴーストタウンと化していた。
「なんなんだ、この町は・・・・」
とりあえず大和たちはこの町に異常事態が起きていることを肌で感じたため
この町を取り仕切る者の所に出向くことにした。
町の中央部にひと際大きなテントが設営されており
そこがこの町の代表者のテントだと推測した大和はそこを目指して歩を進めていたが
その道中ガラの悪い連中に絡まれてしまったがなんとか言葉巧みにかわして事なきを得た。
目的地のテントにたどり着くとそのテントの入り口の両脇に
見張りらしき屈強な男が二人立っていた。
大和たちを視認すると男の片割れがドスの利いた声で威圧してくる。
「おうおう、兄ちゃんたち何しにここに来やがった!?
ここがこの町を仕切るバルバロ様のテントと知って来やがったのか?」
「まあそんなところだ、先ほどこの町に来たばかりなんだが
どうも町の様子がおかしくてね、ひとまずこの町の代表に事情を聴こうとここまで来たわけだ」
いかつい雰囲気の男の威圧など歯牙にもかけず大和は淡々と用件を伝える。
大和の態度が気に食わなかったのかそれとも只者ではないと察知したのか
男は鼻でふんと笑うと大和に提案してきた。
「そうかいそうかい、それはご苦労なことだ
だがどこの馬の骨とも知らねえ奴をバルバロ様に合わせるわけにゃあいかねえんだ」
男は一呼吸置くとさらに言葉を続ける。
「そこでだ兄ちゃん、俺と一騎打ちで勝負しねえか?
兄ちゃんが勝ったらバルバロ様に取り次いでやってもいいぜ
ただし、負けたときは有り金全部と食料を置いて行ってもらおうか?」
一騎打ちね、なんとまあ分かり易いことで・・・・
って考えてる場合じゃないか、さてどうしたものか?
まあRPGにおいてはあるあるパターンだがどうするのが正解なのか?
わざと負ける? いやそれはないな、負けたら金と食料を盗られるわけだし。
大和はしばし逡巡したあと男の申し出を受けることにした。
かくして大和とテントの護衛の男の一騎打ちが始まる・・・・・・




