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オンラインゲームしてたらいつの間にやら勇者になってました(笑)  作者: こばやん2号
3部【ビルド大陸上陸編】 第1章 「勇者ってこんなに人気者?」
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120話:「大和助けを求める」


 人気のない倉庫街の一画、そこに複数の人影があった。

 刻限はまだ朝日が顔を出し始めてから大体5時間程度しか経過していない朝と呼ぶべき時間帯

そこに彼らは対峙していた。

 状況は最悪と言っていいだろう。

 そう心の中で思っていたのは大和の仲間の一人である神官服に身を包んだ少女リナ・シェーラだった。

 

 現在彼女の目の前には邪教徒信者を自称する集団のリーダー格らしき人物の手によって

囚われの身となった勇者である大和がいた。

 実質的に大和を人質に取られてしまった彼女たちは動くに動けずにいた。

 下手に相手を刺激すれば大和の身が危ない、かと言ってこのまま手をこまねいたところで埒が明かない。

 リナは白く透き通る歯で自らの下唇を噛みしめこの状況を打破できない己の無力さに苛まれる。

 

 (ヤマト様・・・・・・)


 さらにこの状況を悪化させる事態として、付き従っていた十数人の護衛全員が

邪教徒側の手の物だったらしく、リーダー格と思しき黒髪オールバックの男を守るように陣取っていた。

 ただでさえ大和を人質に取られた状況にもかかわらず、この上味方のはずだった護衛までもが

寝返ったとなるとさらに厳しい状況と言えるだろう。


 リナは大和を一瞥した後、自分の仲間の状況を確認すべく目を向ける。

 彼女たちもまたリナと同じことを考えているのだろう、臨戦態勢を取りながらも

大和という人質がいるが故に積極的にこちらから打って出ることができずにいた。


 (どうすれば、この状況をひっくり返すにはどうすればいい―――)

 

 リナが頭の中で幾通りものシミュレーションを思案していると、人質となった大和が唐突に口を開いた。


 「お前ら、早く助けてくれ!」


 助けを求める彼の言葉を否定するようにオールバックの男が答える。

 

 「馬鹿め、この結界を壊すことなど不可能だ。 大人しくしていろ」


 まるで大和の言葉を嘲笑うような言葉に奥歯を噛みしめるリナ。

 それは他の仲間も同じようで、マチルダとフレイヤは己の拳を力強く握りしめている。

 大和の救助を求める声に応えることができない歯痒さと自らの未熟さ、非力さを改めて実感させられてしまう。

 自分の好いた男が命の危機に瀕しているのにもかかわらず、助けることができないことに

焦りと苛立ちを覚え始めた頃、不意に大和の口から予想だにしない言葉が放たれた。


 「お前ら、俺を助けてくれたらほっぺにチューしてやるぞ!」




 時を少々遡ること数分前、大和はリーダー格の男の放った束縛系と思しき魔法を受け

人一人を覆い隠すほどの球体の中に閉じ込められてしまっていた。


 (見たところ結界の魔法かな、対象をこの球の中に閉じ込めるといった感じか?)


 紫色がかった球に触れてみると、まるで静電気が起こったようにバチバチと音を立てながら

球の外に出ることを妨害されてしまう。


 (あれれ、出れない。 うーん、わざと捕まったのは失敗だったか?)


 大和の反応速度をもってすれば回避できないことはなかったのだが

敢えて相手の術中に嵌ってみるのも一興かと考えた彼はわざとこの結界に捕まったのだ。

 だが予想に反して、相手の魔法の拘束力が強かったため球体に閉じ込められてしまった。

 もちろん本気で出ようと思えば出ることはできるのだがそれにはかなりの量の魔力を消費するため骨が折れる。

 仮にこの結界が切り札でなかった場合、結界から抜け出せても次の一手で切り札を出されたらアウトだ。

 

 (さて、どうするか・・・・・・)


 頭の中でありとあらゆる可能性を思案したが、ここは仲間に助けてもらうという

最もシンプルな方法を実行することにした。

 

 「お前ら、早く助けてくれ!」


 わざとらしい態度を出さないようできるだけ焦った感じで大和は仲間に助けを求めた。

 彼がこの選択を取ったのには彼なりの理由があった。

 先ほど言った通り、この状況何とかしようと思えば大和一人で何とかできるが

もし仮に何らかのトラブルでパーティーを分断されリナたちだけで戦わなければならない状態になるやもしれない。

 そう考えた大和は先のことを見越してここはリナたちに任せてみることにしたというのが

彼女たちに助けを求めるという結果に繋がったのだ。 要するに完全な【人任せ】であった。


 「馬鹿め、この結界を壊すことなど不可能だ。 大人しくしていろ」


 黒髪オールバックの男が大和の言葉を否定する。

 悪役然とした口調に思わず吹き出しそうになるのをギリギリのところで耐えると

大和はどうしたものかと思案する。

 彼が望んでいるのはこの事態をなんとかリナたちだけで切り抜けさせること。

 そのためには士気が完全に低下しているこの状況を一転させるに足りる何かが必要だ。


 (・・・・・・気乗りしないが、あれを試してみるか)


 大和は自分がこの世界では美形の青年だという自覚を持ち始めていた。

 さらにこの世界は大和の世界と貞操観念が逆転している世界、すなわちこうだ。

 元の世界では女の子が言うとやる気を出す男の子だが、逆に男の子が言うと女の子がやる気を出す言葉が

あるのではないか。

 物は試しとばかりに大和は古いラブコメで見たセリフを言ってみることにした。


 その言葉というのが―――


 「お前ら、俺を助けてくれたらほっぺにチューしてやるぞ!」だ

 果たしてリナたちの士気は向上するのか。

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