119話:「大和、取り囲まれる」
「あなたの好きな○○は何ですか?」
この質問は人生において必ず一度は問われる内容のものだが
あなたは経験があるだろうか?
この質問を一日に千回質問されたことが―――。
現在大和たち一行はジェノンの港町の観光をするために市場と宿を含めた住居区とを繋ぐ
メインストリートを歩いていた。
通りには様々な職種と人種が入り混じった人の往来があり、港町らしい活気と喧騒が耳に届いてくる。
聞いた話によればジェノンはこの世界でも五本の指に入るほどの港町であり
その活気と職種・人種の多さでも随一の都市としてその名を世界に轟かせている町だそうだ。
「うーん・・・・・・」
そんな大通りのど真ん中を我が物顔とはいかないまでも、どことなく申し訳ない顔を
顔に張り付けながら少し小幅で大和は歩いていた。 理由は至って単純だ。
今は大和の周りを十人ほどの護衛が守ってくれていた。
どうやら町長のウミガスキーが手配してくれた護衛のようだったが、護衛が必要な理由を
リナたちも大和も十二分に理解することとなった。
絢爛豪華な宿を後にしてこの大通りにやってきた途端に大和の姿を見つけると
人がワラワラと集まり出し、現在大和の周囲には数百人規模の人ごみが形成されていた。
その人ごみの殆どが女性であり、男性もいるにはいるが人ごみに割って入ることができずに
弾かれてしまっていた。
何とかその群がってくる人を大和に近付けまいと護衛の人たちが頑張ってくれているのだが
あまりに人が多いため全てをカバーしきれず何人かは大和のところまでやって来てしまうのだ。
そこで先の質問【あなたの好きな○○は何ですか?】という類の質問攻めにあっているのだ。
内容は至ってシンプルなものが多く、好きな色、好きな食べ物、そして最も多いのが
好きな異性のタイプというのが八割を占め、その質問がある度リナたちの耳がこちらに傾いているのがわかった。
リナたちも協力して、大和に近づいてくる人たちの対応をしているがそれでも押し寄せる人の波に
対応しきれずにいたのだった。
「ヤマト様、申し訳ありません戦線を維持できません!!」
「馬鹿者! 諦めたらそこで終わりだとどっかの監督も言っていただろうが!!」
「ヤマト様、カントクってなんですか?」
そんな掛け合いもやりつつ何とか人ごみをかき分け人通りの少ない通りに来ることができたのだが
ここで少し気になることが起こった。
(ん? 見られているな、数は・・・・・・二人、いや三人か―――)
「ヤマト様」
「主」
そんなことを考えていると、フレイヤとマチルダが真剣な表情で大和の名を呼ぶ。
大和は二人に手を上げるとその先の言葉を言う必要はないと無言で答える。
殺気交じりの視線が肌にビリビリと伝わってくる感覚を覚えながら大和はできるだけ
人通りの少ない方へと進んでいく。
どれくらいの時間歩いただろうか、そこは人通りの少ない倉庫街のような場所で
見た目通り、物資やアース大陸に輸出する品物などを保管しておくための倉庫が立ち並ぶ区画であった。
その区画を抜けた先に波止場のような場所にたどり着いた大和たちは先ほどから追ってきていた
視線の主が現れたことを確認するととりあえず問いかけることにした。
「それで、お前たちは一体何者だ?」
「我々は魔人メルウェム様を神と崇め崇拝する信徒の一派メルウェム教財団である」
大和の前に現れた数人の人物のうち真ん中にいたリーダー格らしき中年の男性が答える。
黒髪をオールバックにした目つきの鋭い痩せ型の見た目をした男だ。
「故あって、勇者コバシヤマトにはここで死んでもらう。
くらえ、黒魔術【封呪結界】!!」
男が呪文を唱えると、大和の周りに紫がかった魔法陣が展開し、そこに同じ紫色をした
人ひとりを覆いつくすほどの球体が大和の周りを取り囲んだ。
「ヤマト様!!」
さらに男が右手で紫の球体を操ると、大和を球体の中に閉じ込めたまま自分の方へと引き寄せたのであった。
怪しげな術で球体に閉じ込められてしまった大和の運命や如何に。




