1夜限りの。
僕は夢を見るのが好きだった。1夜限りでならどんなことでもできる。それが夢だから。嫌なことがあったらすぐに夢を見た。夢を見ている間は何でも忘れられるから。
僕には特殊な能力がある。夢の内容が可能な範囲で現実になるというもの。
僕はこの能力がキライだった。
夢は内容を覚えていないから良いのだと、僕は思っていた―――
本を閉じ、ため息を付いた。
この主人公はどれほど自分が恵まれているのか気付いていない。と思った。
俺は最底辺にいた。ブラック企業、孫の顔孫の顔と煩い母親の声、過ぎていくだけの時間。もうこの世の地獄だ。
この力があれば、どれほど俺は生まれ変われるのだろうと思い、カフェインで寝られない頭をたたき、無理やり眠りについた。
夢を見ていた。理想の女性が現れる、そして結婚する夢。
目が覚めた。なぜだかわからないが、頭の中にはしっかりと夢の内容が残っていた。俺はなぜかフラフラと街に繰り出した。そこからはトントン拍子だった。いつの間にか一世一代の告白が終わり、好みの女の子の手を握っていた。
いつの間にか、転職し、妻と一緒に楽しく働いていた。とても楽しかった。
そして、いつの間にか妻は妊娠していた。
そして、目が覚めた。気がついたらいつもの暗い部屋にいた。
「ああ、夢か。」
笑えるな。ようやく希望を持っていたのに。折角まともな生活を遅れたと思ったのに。ああ、笑える。笑える。
ありがとう。夢、最後に希望を持たせてくれて、
ありがとう。小説、夢を見させてくれて。
俺は夜に駆ける事にした。
6日後に、出産後、入院が終了し、帰宅した妻に発見され、火葬が始まった。
妻は最後まで泣いていた。
生まれたばかりの子供は理由もわからず、静かな雰囲気に泣いていた。




