38話 『ガレオン』
かくかくしかじかで、遅くなりました。
あと、ついでにこれまでの話のタイトル変えました。前の二字熟語とどっちがいいか教えていただけると嬉しいです。
ダリオに見送られ、俺とロカルドはガレオンの城門をくぐった。
街中に一歩足を踏み入れた瞬間、俺は思わず立ち止まってしまった。
石畳の広い通り、両脇にひしめき合うように立ち並ぶ、二階建てや三階建ての建物。
商店の軒先には色とりどりの品物が並び、露店からは香辛料や焼きたてのパンの香ばしい匂いが漂ってくる。
「圧倒されるのも無理はない。俺も最初はこんな顔をしてたはずだ」
ロカルドが懐かしそうに笑いながら言う。
「これが……街、なんですね」
村での暮らしがどれほど静かで、そして小さなものだったのか、この光景を前にして改めて実感する。
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..
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「まず、金の話をしておこうか」
ロカルドが、通りを歩きながら切り出した。
「この世界の通貨は、銅貨、銀貨、金貨の三種類だ。銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚になる」
「村では、あまりお金を使う機会がなかったので、正直感覚が掴めません」
「まあ、実際に使ってみりゃ慣れる。とりあえず、これを持っておけ」
ロカルドが、革袋に入った銀貨をいくつか渡してくれた。
「これは……」
「村長から預かってきた、お前の当面の生活費だ。遠慮せず使え」
「ありがとうございます……」
思いがけない気遣いに、胸が熱くなる。この村を発つ前、村長がひそかにこうした準備をしてくれていたのかと思うと、改めて感謝の気持ちが湧いた。
通りを歩きながら、様々な店の様子を眺める。武器屋、防具屋、道具屋、宿屋――村にはなかった専門店の数々が、俺の好奇心を刺激した。
「物価は、村より高いんですか?」
「そりゃそうだ。人が多く集まる分、需要も高い。だが、その分稼ぐ手段も豊富にある」
街の中心部に近づくにつれ、建物の規模も一段と大きくなっていった。
その中でも一際目立つ建物。
「あれが、この街の領主――カストール伯爵家の屋敷だ」
ロカルドが指差した先には、他の建物とは一線を画す、荘厳な造りの屋敷が見えた。高い塀に囲まれ、門の前には武装した衛兵が立っている。
「随分と立派な屋敷ですね」
「伯爵家は、この辺り一帯を治める権力者だ。いずれ関わることもあるかもしれんが、今は気にしなくていい」
その言葉に、以前ロカルドから聞いた「ヴィント」という名前を思い出す。あまり評判の良くない、伯爵の息子。
「さて、そろそろ冒険者ギルドに向かうか」
「はい」
ダリオとの出会い、そしてこの街の壮大さ。初日から色々なことがあったが、まだこの日の本題――冒険者ギルドへの登録が残っている。
俺は改めて気持ちを引き締め、ロカルドの後に続いた。
通りをさらに進むと、大きな時計塔が視界に入った。村にはなかった、精巧な機械仕掛けの塔だ。
「あれは、ガレオンの象徴とも言える建物だ。街の中心部からなら、大抵どこからでも見える」
「時間が、こんなに正確に分かる仕組みがあるんですね」
「便利だろう。村じゃ、太陽の位置で大体の時間を測ってたもんな」
街の中心を離れ、住宅街に近い区画に差し掛かると、先ほどまでの喧騒が嘘のように、落ち着いた雰囲気が漂っていた。
「この辺りは、比較的静かな住宅区画だ。冒険者向けの宿も多い」
「同じ街でも、区画によって全然雰囲気が違うんですね」
「ああ、ガレオンは広いからな。慣れるまでは、地図を頼りに歩くといい」
ロカルドが折り畳まれた簡易地図を渡してくれた。
村の村長が作った不正確な地図とは違い、細部までしっかりと描き込まれた、実用的なものだった。村長が作ったものと違って。
「これがあれば、迷子にならずに済みそうです」
「まあ、それでも最初のうちは、迷うこともあるだろう。困ったら、遠慮なく人に聞くといい」
「はい」
冒険者ギルドの建物は、街の中心部からほど近い場所にあった。
木製の大きな扉を開けると、中は思っていた以上に賑やかだった。壁一面に貼られた依頼書、酒場を兼ねているのか、昼間だというのに酒を飲み交わす冒険者たちの姿もある。
「相変わらずの雰囲気だな」
ロカルドが、懐かしそうに周囲を見渡した。
「ここが……冒険者ギルド」
「ああ。まずは、あの掲示板を見てみろ」
示された壁には、大量の紙が貼られている。依頼の内容、報酬、依頼主の名前などが、簡潔に記されていた。
「これが、依頼の一覧ですか」
「そうだ。冒険者は、ここから自分のランクに見合った依頼を選んで受注する」
依頼書には、それぞれ色分けされた印がついている。
「色は、依頼の難易度を表してる。白が最低ランク、そこから緑、青、赤、銀、金と上がっていく」
「難易度に応じて、依頼を受けられる人が制限されるんですね」
「その通りだ。低ランクの冒険者が高難易度の依頼を受けようとしても、受理されない仕組みになってる」
なるほど、と俺は頷いた。単純明快だが、理にかなったシステムだ。
「まずは、受付でランク登録の手続きをしよう」
カウンターに向かうと、若い女性の受付嬢が対応してくれた。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件で」
「こいつの新規登録を頼みたい」
ロカルドが俺を示しながら言う。受付嬢は俺の姿を一瞥し、事務的な様子で書類を取り出した。
「かしこまりました。それでは、こちらの用紙にご記入をお願いします」
差し出された用紙には、名前、年齢、出身地などの基本情報を記入する欄があった。
「出身地は、どう書けばいいですか?」
「田舎の小さな村、とでも書いとけ。詳しい場所は聞かれないはずだ」
ロカルドのアドバイス通り、俺は当たり障りのない範囲で用紙を埋めていった。
名前の欄には、迷わず「望月葵」と記入する。この世界に来てからも、この名前は変わらず自分自身のものだ。
用紙を提出すると、受付嬢がそれを確認しながら説明を続けた。
「新規登録の方は、まず実技試験を受けていただきます。魔物討伐の実績や、体力・反応速度などを確認させていただくものです」
「実技試験、ですか」
「はい。通常は、この試験の結果を元に、最低ランクからの登録となります」
最低ランクからのスタート、という言葉に、俺は少しだけ気を引き締めた。
これまで培ってきた力が、この世界の基準でどう評価されるのか。それを試される瞬間が、いよいよ近づいていた。
「試験は明日の朝、ギルド裏の訓練場で行います。それまでに、必要書類の確認と、簡単な面談を済ませておきましょう」
受付嬢の案内で、俺たちは奥の部屋へと通された。
いよいよ、ガレオンでの冒険者生活が、本格的に始まろうとしていた。
依頼掲示板の前で、ロカルドはさらに詳しくランク制度について教えてくれた。
「ランクは、白、緑、青、赤、銀、金、そして最上位の『黒』という順に上がっていく。上位ランクになるほど、報酬も危険度も跳ね上がる」
「黒、というのは?」
「国内でもほんの一握りしかいない、最上位の冒険者だけが持つ称号だ。俺も会ったことは数えるほどしかない」
「数えるほどはあるんですね」
その話を聞きながら、俺はふと、この世界における「強さ」の基準について考えを巡らせた。
村での経験だけでは測れない、もっと広い世界での立ち位置を、これから少しずつ確かめていくことになるのだろう。
「まあ、焦る必要はない。着実にランクを上げていけばいい」
「はい」
受付での面談を終えると、ギルド内の掲示板をもう一度眺めてみた。
薬草採取、荷物運搬、簡単な魔物討伐――様々な依頼が貼り出されている。
明日の実技試験を終えれば、いよいよこの中から自分の依頼を選べるようになる。その日が待ち遠しく感じられた。
面談を担当してくれた受付嬢は、最後に一枚の小さな案内図を渡してくれた。
「ギルド内の主要施設をまとめたものです。訓練場、資料室、依頼相談窓口など、迷った時はこちらをご参照ください」
「ありがとうございます、助かります」
初めての場所で右も左も分からない状態だったので、この案内図はありがたかった。ギルドという場所が、単なる依頼の窓口ではなく、冒険者を支える様々な機能を備えた施設なのだと、改めて理解した。
「明日の試験、緊張するか?」
ロカルドの問いに、俺は正直に頷いた。
「はい、少し」
「まあ、実力は既に証明済みだ。自信を持っていい」
その励ましに、俺は改めて気持ちを引き締めた。
「まあ、実力は既に証明済みだ。自信を持っていい」
その励ましに、俺は改めて気持ちを引き締めた。
ギルドを出た後、俺たちは早めに宿へと戻ることにした。
「明日に備えて、しっかり休んでおけ」
「はい」
部屋に戻ってからも、俺はしばらく、明日の試験について、頭の中でシミュレーションを繰り返していた。
どんな結果になるにせよ、これまで積み重ねてきた力を、正直に示すだけだ。そう自分に言い聞かせながら、俺は静かに目を閉じた。
前にもいった通り、人との交流書くのが苦手なので続きは少し遅れます。




