39話 『赤』
お盆の間、一週間ほどいろいろあって投稿できません。
翌朝、俺はギルド裏の訓練場に立っていた。
広々とした敷地には、的や障害物が設置され、既に何人かの職員らしき人物が待機している。
「それでは、実技試験を始める」
試験官を務めるのは、屈強な体格をした中年の男だった。名をガイストと名乗り、ギルドの上級職員だという。
「まずは基礎能力の測定からだ。あの的に向かって、全力で攻撃を加えてみろ」
指し示された先には、頑丈そうな木製の的が設置されている。
俺は少し悩んだ末、あまり目立たない範囲で――と思いつつも、正確な測定のためにはある程度本気を出す必要があると判断した。
地面に落ちていた石を拾って、怪しまれないように振りかぶる。
「『磁極付与』」
石にS極を、的にN極を付与する。
石は轟音を立てて的に直撃し、木製の的が粉々に砕け散った。
「な――」
ガイストの表情が、一瞬にして凍りついた。
「今の攻撃は、一体……」
「ただ、投げただけです」
その説明に、ガイストは信じられないという様子で、砕けた的の残骸を確認しに行った。
「これは……ただごとじゃないな」
ガイストが険しい表情で戻ってくる。
「もう少し、詳しく力を見せてもらう必要がありそうだ。すまんが、少々お待ちを」
そう言って、ガイストは慌ただしくギルドの奥へと向かっていった。
しばらくすると、ギルドマスターらしき初老の男性を伴って戻ってきた。
「話は聞いた。若いの、もう一度、その力を見せてもらえるか」
ギルドマスターの要請に、俺は改めて簡単な実演を行った。今度は、複数の的を同時に破壊してみせる。
またバレないように、小さくスキルの名前を呟く。
「『磁極付与』、『磁極付与』」
複数選択で発動した磁力が、離れた場所にある三つの的を、同時に粉砕した。
その光景を見たギルドマスターが、深く息を吐いた。
「これは、通常の審査基準では測れんな……」
周囲で様子を見ていた他の冒険者たちからも、驚きのざわめきが上がっている。
「規格外の実力、ということで、特別審査に切り替えさせてもらう」
ギルドマスターが、真剣な表情で告げた。
「通常なら、まず最低ランクからのスタートとなるが、お前さんの場合、そのランクでは実力に見合わない。かといって、いきなり最上位ランクというのも、実績が伴わない」
「では、どうなるんでしょうか」
「中堅ランク――『赤』からのスタートを提案する。異例だが、これだけの実力があれば、周囲からの反発も少ないだろう」
その提案に、俺は少し驚いた。まさか、初日からこんな異例の扱いを受けるとは思っていなかった。
「アオイ、これは名誉なことだ。素直に受けておけ」
ロカルドの言葉に頷き、俺は改めてギルドマスターに向き直った。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
こうして、俺は異例の速さで、ガレオンの冒険者ギルドに「赤ランク」として登録されることになったのだった。
銀ランクとしての登録を終えた後、俺はギルドから正式な冒険者証を受け取った。
金属製の小さなプレートに、俺の名前とランクが刻まれている。
「これが……冒険者証」
「大事に持っておけよ。身分証明にもなるし、宿を取る時にも役に立つ」
ロカルドの言葉に頷きながら、俺はその冒険者証をしげしげと眺めた。
この小さなプレート一枚が、これからのガレオンでの生活を支える大切な道具になるのだと思うと、不思議な実感が湧いてくる。
「それにしても、初日からいきなり銀ランクとはな。俺が初めて登録した時は、当然のように最低ランクからだった」
「なんだか、申し訳ない気もします」
「気にするな。実力が伴ってるんだから、当然の評価だ」
ギルドを出ると、ガイストが見送りに出てきた。
「今後、依頼を受ける際は、この受付で手続きを頼む。何か困ったことがあれば、遠慮なく相談してくれ」
「ありがとうございます」
...
..
.
ギルドを後にすると、周囲の冒険者たちの視線が、明らかにこちらに向いているのを感じた。
「おい、あれが噂の新人か?」
「初日で銀ランクだって? 聞いたことねえな」
そんな声が、あちこちから聞こえてくる。
「早速、注目の的になっちまったな」
ロカルドが苦笑しながら言った。
「目立たないようにしたかったんですが……」
「まあ、あれだけの力を見せれば、注目されるのも当然だ。気にしすぎるな」
目立ちたくない、という思いはあったが、実力を隠していては、この世界での立ち回りが難しくなる。ある程度の注目は、避けられないものとして受け入れるしかないのだろう。
「さて、今日はもう遅い。宿を探すか」
ロカルドの提案に頷き、俺たちは街中を歩いて、手頃な宿を探すことにした。
いくつかの宿を回った末、比較的清潔で、料金も手頃な宿を見つけることができた。
「ここなら悪くなさそうだ」
部屋に案内されると、村の自分の家とは違う、簡素だが機能的な作りの部屋が広がっていた。
「俺は隣の部屋で寝る。明日から忙しくなるから、今日は早めに寝とけ」
「寝れるかは分かりませんけど一応頑張ってみます」
そう言って、ロカルドは隣の部屋へと入っていった。
俺も自分の部屋へと入り、ベッドに横になる。最近野宿が多かったため、ベッドの暖かさが気持ちいい。
眠れそうにないと思っていたが、ちゃんと疲れていたらしく、気づいたら眠っていた。
.
..
...
暗い。
重い。
遠い。
暗い。
ロベリア。
歪み。
暗い。
暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い。
暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い
「——助、け」
...
..
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なんか不穏な終わり方ですけど、アオイに何かあったわけではありません。




