36話 城壁と街と人と
タイトルのネーミングセンスが家出してしまいました。
頑張って連れ戻してるところです。
村を出発してから、ガレオンまでの道のりは、ロカルドの話によると徒歩で三日ほどかかるという。
「思ったより遠いんですね」
「まあな。もっと近くにある村もあるが、そこはあまり治安が良くない」
街道を歩きながら、ロカルドが道中の注意点を教えてくれる。
街道沿いには、いくつかの中継地点となる小さな集落があり、そこで休憩や補給ができるらしい。
「街道自体は、比較的安全なはずだが……最近は魔物の動きも活発だからな。油断はするなよ」
「はい」
初日は特に大きな問題もなく、順調に距離を稼ぐことができた。
今日――二日目も何事もなかった。
夜は、街道脇に設けられた休憩所――簡易的な避難小屋のような場所で野営をする。
「こういう旅、久しぶりだな」
焚き火を囲みながら、ロカルドがぽつりと呟いた。
「ガレオンでギルドに入って色んな依頼を受けていた頃は、よくこうやって野営したもんだ」
「大変じゃなかったんですか?」
「大変だったさ。でも、悪い思い出ばかりじゃない。今のお前と同じで、ワクワクする気持ちも大きかった」
焚き火の炎を見つめながら、ロカルドの若い頃の話に耳を傾ける。この人にも、俺と同じような時期があったのだと思うと、なんだか親近感が湧いた。
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三日目、街道の途中で、俺たちは中型の魔物の群れと遭遇した。
これまで戦ってきた魔物と似た、猪と猿を混ぜたような外見の個体が、五匹ほど群れをなしている。
「よし、俺たちで片付けるか」
ロカルドが剣を抜くと同時に、俺も『磁極付与』を発動する準備を整えた。
「『磁極付与』、『磁極付与』!」
複数選択で発動した磁力が、地面の石を巻き上げ、魔物たちへと撃ち込む。
これまでの戦闘経験から、こういった中型の魔物への対処は、すっかり手慣れたものになっていた。
あっという間に三匹を無力化し、残りの二匹はロカルドが難なく仕留める。
「相変わらず、あっという間だな」
ロカルドが感心したように言った。
「この程度の相手なら余裕です」
「頼もしい限りだ。だが、ガレオンに近づくにつれて、もっと厄介な魔物も出てくるかもしれん。油断はするなよ」
「はい、気をつけます」
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その日の夜、野営の準備をしながら、ロカルドがふと言った。
「アオイ、お前、この旅を通して、ますます頼もしくなったな」
「そうですかね」
「ああ。村に来た頃はあんなに頼りない様子だったが、今じゃすっかり、この世界に馴染んでる」
「頼りないって、俺ってどんな感じだったんですか?」
「気合いを入れて戦場へ入っていったけど剣を忘れましたみたいな感じ」
「そんなに酷かったんですか!?」
ロカルドの言葉に驚く
思えば、あの森で目を覚ました時から、ずいぶん長い道のりを歩んできた気がする。まだ道半ばだが、確実に前に進んでいるという実感が、この旅を通して強くなっていった。
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三日目の朝、遠くにガレオンの街並みが見えてきた時、俺は思わず息を呑んだ。
村の柵とは比べ物にならない、高く堅牢な城壁。その向こうに立ち並ぶ、数えきれないほどの建物の屋根。
「あれが……ガレオン」
「ああ、思ったよりでかいだろう」
ロカルドが誇らしげに言う。
「これでも、王都に比べればまだ小さい方だがな」
「王都は、もっとすごいんですか」
「ああ、比べ物にならんよ。まあ、それはいずれ、自分の目で確かめる機会もあるだろう」
その言葉に、これから始まる新しい生活への期待と、少しの不安が入り混じった。
城壁に近づくにつれて、街道を行き交う人や荷馬車の数も増えていく。村とは全く違う、活気に満ちた光景が、目の前に広がっていた。
城門が近づくにつれ、俺は自然と足取りが速くなっていくのを感じた。
村を出てからの三日間、様々なことを考えながら歩いてきたが、実際に街を目の当たりにすると、そんな思考も吹き飛ぶほどの高揚感に包まれた。
城門の前には、多くの人々が列を作っている。商人らしき荷馬車、旅装束の冒険者、家族連れらしき集団。前の世界でも、こんなに多様な人々が一箇所に集まっている光景は、そう頻繁に見るものではなかった。
「ここが検問所だ。身分証か、それに準ずるものがないと、入場に少し時間がかかる」
「身分証、俺持ってないですけど……」
「ああ、それは俺が保証人になってやる。田舎から出てきた身寄りのない若者、ってことにしとけばいい」
ロカルドの提案に頷き、俺たちは列に並んだ。
順番が来ると、門番の兵士がロカルドの顔を見て、少し驚いたような表情を浮かべた。
「おや、ロカルドじゃないか。久しぶりだな」
「おう、元気そうで何よりだ」
どうやら、ロカルドの顔見知りだったらしい。簡単なやり取りの後、俺たちはあっさりと城門をくぐることができた。
目の前に広がる街並みを見て、俺は思わず立ち尽くした。
俺たちは黙々とガレオンの城壁へと近づいていった。
石畳の道、両脇に立ち並ぶ二階建て、三階建ての建物。行き交う人々の服装も、村で見慣れたものとは違い、色とりどりで洗練されている。
露店からは香辛料や焼きたてのパンの匂いが漂い、鍛冶屋の槌の音、商人の呼び込みの声、子供たちの笑い声が、絶え間なく耳に届いてくる。
「圧倒されるのも無理はない。最初は誰でもそうだ」
ロカルドが、懐かしむような笑みを浮かべて言った。
「俺も初めてここに来た時は、お前と同じような顔をしてたと思うよ」
「これが……街、なんですね」
村での暮らしがどれほど穏やかで、そして小さなものだったのか、この光景を目の当たりにして改めて実感する。
同時に、この街のどこかに、新しい出会いや、これから自分を待ち受ける出来事が広がっているのだと思うと、自然と胸が高鳴った。
「さあ、まずは冒険者ギルドに顔を出すか。それから、宿を探そう」
「はい」
ロカルドの案内で、俺はガレオンの街の中へと足を踏み入れていった。




