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ハズレと言われた『磁石』スキルで、俺は世界を無双する。  作者: 小兼


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24/27

22話 行商

 うーん……

 注目度-連載中16位。16位!?

 まさかここまで読まれるとは思ってなかったです、ありがとうございます!

 ブロアの工房に通い始めてから五日が経った頃、村の入口の方がにわかに騒がしくなった。

 俺が鉄の選別作業を手伝っていると、ブロアが工房の扉に顔を向けて首をひねった。


「行商人が来たみたいだな」

「行商人?」

「ああ、たまに来る男で、ゲルドって名乗ってる。各地を回ってるらしくて、珍しい品を持ってくるから村人には人気なんだが……」


 ブロアが少し口ごもる。


「どうかしましたか?」

「いや、なんとなく、な。その男のことが前々から少し引っかかってるんだ。あくまで俺の勘だから、はっきりとは言えないんだが」

「どういうところが?」

「目が笑ってない、とでも言うのか。愛想はいいんだが、何を考えてるか分からない目をしてる。商人だから当然と言えば当然かもしれんが、それにしても……」


 なんだろう、少し気になるな。

 俺は手を止めて、扉の外に意識を向けた。


「見に行ってみますか?」

「そうだな。俺も一旦手を休めるか」


 工房を出ると、村の広場には確かに一人の男がいた。

 くたびれた茶色の外套を羽織り、大きな荷物を背に担いでいる。

 年齢は四十前後だろうか、整えられた口ひげと柔らかな笑みが、一見すると人当たりの良い商人そのものだ。


 村人たちが周りに集まり、男が布袋から品物を取り出すたびに歓声が上がっている。

 調味料、針と糸、乾燥した薬草、遠くの街で作られた小物。

 村にはなかなか入ってこない、そして需要の高い品々が、次々と並べられていく。

 そんな行商人に、子供が話しかける。あれは確か、ミルク、って名前だったか。


「ゲルドさん、今日は何を持ってきてくれたの?」

「毎度どうも、ミルクちゃん。今日は香辛料が入りましたよ。遠い南の国から来た品でしてね、一振りするだけでどんな料理も変わります」


 子供のミルクにも笑顔で答えるその男を、俺は少し離れた場所から眺めた。

 確かに、ブロアの言う通り、笑顔が完璧すぎる。

 それ自体はおかしいことではない。商売人ならば愛想が商売道具というのは当然だ。

 だが、その笑顔の奥にある目が、一度だけ俺の方を向いた。

 ほんの一瞬。

 しかしその目が、全く違う光を持っていることに気づいた。

 笑顔のそれではない。値踏みするような、あるいは計算する機械のような、冷たい光だ。

 すぐに視線は外れ、またいつもの商売の笑顔に戻る。


「ロカルドさん」


 隣に来ていたロカルドに、小声で話しかける。


「ああ、俺も見てた」

「あの人、何か知ってますか?」

「ゲルドか。俺がこの村に来る前から出入りしてたらしい。村長も素性までは把握しとらんと言ってたが……」


 素性くらい把握しとけよ、あのニコニコ村長。


「それがどうしたんだ?」

「さっき、一瞬こちらを見た目が、笑顔とは全然違いました」

「気づいたか」


 ロカルドが腕を組む。


「お前のことを調べに来ている可能性は、あるな。この村で、最近一番目立った話といえばお前のことだ」

「心外な。そんなに俺って不審者ですか?」

「素性もわからず、村に入ってきてあの魔物を倒したんだ。十分不審者だろうがよ」


 ぐうの音も出ない。

 余談だが、人生で初めてぐうの音も出ないと言った気がする。


「やっぱり洞窟の件ですか……」

「それだけじゃない。あの危険すぎる森で生き抜くどころか、魔物を倒し歩いてたんだぞ?」

「むむむ」

「なんだその変な声?」

「何も」


 俺を少し呆れた目で見て、続ける。


「俺たちはできるだけ目立たないようにしてきたが、それでも限りはある。特に子供や主婦あたりが噂する。行商人ならなおさら、色んな場所の情報を仕入れてくるだろう」


 俺は改めてゲルドを見た。彼はもう俺を見ていない。完全に、村人との商売に集中しているように見える。


「今日は様子を見るだけにしましょう。警戒しすぎると、向こうに察知されます」

「そうだな。ただ、次に来た時は少し話しかけてみるか」


 ロカルドが小声で言い、俺も頷いた。


...

..

.


 その夜、村長を訪ねてゲルドのことを聞くと、村長は「何年も前から来ている、特に問題は起こしていない」と言った。

 それが余計に引っかかった。問題を起こさない行商人など、ほとんどいない。大抵の行商人は、一度くらいは失敗する。考えすぎてるだけかもしれないが……


「村長、俺のことを、あの人に話したことはありますか?」

「いや……召喚のことは誰にも言っていない。だが、洞窟で魔物を倒したこと、畑の手伝いをしたことは、村人との会話の中で自然と出たかもしれんな」

「そうですか」

「心配しておるのか?」

「少しだけ」


 少しだけ、ではなくかなり心配している。他の場所からの行商人に知られてしまうと、俺を知っているものがいる場所や人数が増える。それが女神の耳に入った時、その人たちを巻き込みたくない。


「念のため、わしからも村人たちに口止めをしておこう。お前の力の詳細については、軽々しく外に話さないように」

「ありがとうございます」


 部屋に戻る道すがら、ゲルドのことを考え続けた。

 何者なのかは分からない。ただ、あの目の色は、純粋な商人のものではなかった、と思う。

 しばらくは、注意しておく必要があるなと、俺は思った。

 とりあえず行商人をめちゃめちゃ胡散臭い感じにして、印象がかなり強いんですけども。

 実はこれ以降、ほとんど出す予定がない。

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