21話 武器
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それから数日、ブロアの工房に通い詰める日々が続いた。
鉱石の選別、鉄の圧縮、不純物の除去――『磁石』を駆使した作業はどれも新鮮で、戦闘以外でのスキルの使い道を知るたび、少しずつ楽しくなっていった。
「よし、いよいよ仕上げだ」
ある日の夕方、ブロアがそう言って工房の奥から布に包まれた何かを取り出した。
「これは……?」
「お前さん専用の、小剣だ」
布を取ると、そこには見たこともない輝きを放つ、一振りの剣があった。
刃は灰色がかった銀色で、よく見ると微かに鉄粉のようなものが表面に浮き出ているような、不思議な質感をしている。
「触ってみな」
恐る恐る柄を握ると、不思議な感覚が手のひらから伝わってきた。
「これ……」
「お前さんに教えてもらった製法で、純度の高い鉄を圧縮して作った特注品だ。普通の剣よりも、磁力との親和性が高いはずだぜ」
試しに、剣に『磁極付与』を発動してみる。
「『磁極付与』」
すると、これまでナイフや石に発動していた時よりも、明らかにスムーズに、そして強く磁力が乗るのを感じた。
「これは……すごいですね」
今までは、対象の素材によって磁力の効きにムラがあった。だが、この剣はまるで初めから磁力を通すために作られたかのように、何の抵抗もなく力が乗る。
「だろ?お前さんの力に合わせて、特別に作ったからな」
ブロアが誇らしげに胸を張る。
「名前は、どうする?」
「うーん……あまりいいのが浮かびません」
「まぁ、思いついたら好きに名前をつければいいさ」
「はい」
そう言って、剣を軽く振ってみる。
ステータスの数値が高いせいもあるだろうが、振りやすさが今までのナイフとは比べ物にならない。
と、その時。
《武器の取得を確認》
《ステータスの修正を開始……完了しました》
「うん?」
ステータスの修正?何が変わったんだ?
「ステータスオープン」
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ステータス
アオイ・モチヅキ
種族:人間
年齢:17
レベル:305
体力:15,250/15,250
魔力:15,250/15,250
攻撃力:15,250(+5000)
防御力:15,250
素早さ:15,250
固有スキル:『磁石』
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よく見ると、攻撃力の欄に「(+5000)」という表記が新しく付いていた。
今までの武器では、こんな表記は出ていなかった気がする。
「ブロアさん、これ、攻撃力に補正がかかってるみたいです」
「マジか!?それは嬉しいな。よっぽどいい出来だったんだろう」
ブロアが満足そうに笑う。
「ところでブロアさん、もう一つお願いがあるんですけど」
「ん?何だ?」
「実は、こういう物があって……」
俺はポケットから、布に包んだ小さな塊を取り出した。
あのスライムを倒した時に手に入れた、命核だ。
使い道もないのでその辺に放っておこうと思ったのだが、うっかり村の子供が触ったりしたら大惨事だ。なので捨てようがなく、どうしようと悩んでいるうちにそのままになってしまっていた。
「これは……?」
ブロアが布を開け、中の宝石のような塊を見て驚いたように目を見開いた。
「冷たっ!何だこれ!?」
「魔物の核みたいなものなんですけど……周りの熱を奪う性質があるみたいで」
「へぇ……これをどうしたいんだ?」
「これを、何か武器に組み込めないかと思って」
ブロアはしばらく塊を見つめ、何やら考え込んでいたが、やがてニヤリと笑った。
「面白そうだな。よし、やってみるか」
そうして、ブロアは小さなナイフの柄の部分を加工し、その中に命核を仕込む作業を始めた。
慎重に、慎重に。命核が割れないよう、また熱を奪う性質を活かせるように。
「……よし、完成だ」
数時間後、出来上がったのは、刃元に小さな宝石のような輝きを持つ、一振りのナイフだった。
柄を握ると、ひんやりとした感触が手のひらに伝わってくる。
「これで、刃に触れたものは多少冷やされるはずだぜ。氷漬けとまではいかねぇだろうが、相手の動きを鈍らせるくらいはできるんじゃねぇか」
「すごいです、ありがとうございます」
試しに、あのブロア達を襲った魔物の体表——いくつか持って帰っていた——に、このナイフを押し当ててみる。
「……お?」
すると数秒で凍りつき、そのまま当てているとヒビが入り、割れた。恐ろしい冷却速度、そして温度だ。
こうして、剣とナイフ、二つの専用武器を手に入れた俺は、これまで以上に戦いやすくなったことを実感していた。
それと同時に、ブロアという――この世界での「気兼ねなく頼れる相手」ができたことに、少しだけ温かい気持ちになっていた。
その時、やっと気づいた。なんで俺が、ブロアとの武器作りがこんなにも楽しく感じていたのか。
それは——
「俺は、認めてほしかったのか……」
そう、この世界の人間に認めてほしかったのだ。俺がいてもいいと、そういう自信がほしかったんだ。
どうやら、あの女神に、ハズレと——いらない、ゴミだと言われたのを、俺は相当気にしてしたらしい。
そして、そんな自信を持たせてくれたブロア——それに村長たち、このレニス村の人たちは、何が合っても絶対に守ると、俺は誓ったのだった。
ちなみに命核の効果は冷却ではなく、吸熱です。




