20話 受容
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……言いたいことはたくさんあるんですけど、とりあえず読んでいただきありがとうございます
翌日から、本格的にブロアの工房に通うようになった。
目的は二つ。一つはブロアの仕事の手伝い、もう一つは――俺の専用武器の制作だ。
「よし、まずは素材選びからだな」
ブロアが工房の奥から、何種類かの鉄鉱石や鉱物を運んできた。
前の世界でも何度か見た、お馴染みの鉄鉱石だけではなく、紫色の光沢のある不思議な鉱物や、微かに青みがかった石なども混じっている。
おお、ファンタジーだ!
「これ全部、村の周りで採れるやつですか?」
と聞くと、ブロアの顔が少し曇った。
「ああ、半分はな。残り半分は、前にガレオンから仕入れたやつだ」
「ガレオン?」
「隣の街だよ。村よりずっとでかい街で、武具屋もたくさんあるし、交易も盛んだったんだが……今は貿易路の影響で、仕入れもままならねぇ」
ガレオン、か。前に村長から聞いた地名のような気がする。村長によると、貿易路を絶たれたんだったっけか。多分、その中にはガレオンも含まれるんだろう。
「で、お前さんの力で、まずはこの鉱石の中から純度の高いものを選り分けてくれ」
「選り分ける、ですか?どうやって……」
「お前さんの『磁極付与』ってやつ、磁力の強さも調整できるんだろ?」
「できないこともないですけど……」
「だったら、純度の高い鉄ほど磁力に強く反応するはずだ。微妙な磁力で試してみりゃ、選別できるはずだぜ」
なるほど、考えたこともなかった使い方だ。元の世界の磁石の原理を応用できるとは。
「磁力吸引」
ブロアの言う通り、ごく弱い磁力を発生させてみると、確かに鉱石によって反応の強さが違うことに気づいた。
この反応が強いやつを選べばいいのか?でも、反応が漠然としててわからないな……そうだ。
「『磁極付与』」
弱いS極を、鉱石の山全体にゆっくりとかけてみた。
すると、純度の高そうな鉱石ほど、わずかに俺の手のひらの方へ動こうとする感覚があった。まるで生き物が寄ってくるような、不思議な手応えだ。
「お、これは……いい感じだな」
ブロアがそれを見て、選別された鉱石を一つ一つ手に取り、満足そうに頷いている。
「こりゃ便利だ。今まで目視と勘でやってた作業が、一瞬で済む。職人冥利に尽きるぜ」
「役に立ってよかったです」
しばらく作業を続けるうちに、だんだんと打ち解け、自然と会話も増えていった。
「アオイ、お前さん、こんな田舎で燻ってるには勿体ない力を持ってるな」
「そうですか?」
「ああ。お前さんがその気になりゃ、街でも名を轟かせられるんじゃねぇか?もしその気なら、手伝うが……」
その言葉に、複雑な気持ちになる。
目立ちたくない、というのが本音だ。目立ちすぎると、俺のスキルについてバレるかもしれない。異世界の知識や異能は、この世界には馴染まないものだ。それが原因で排斥されたり、利用されたりするかもしれない。
それに、俺の噂があの女神の耳に入ったりしたら、どうなるかわからない。追手が来る可能性もゼロじゃない。
だが、いつまでもこの村に隠れているわけにもいかないだろう、というのも分かっている。
「……まあ、今のところはこの村でのんびりしたいですけどね」
「欲がないな」
「ないんじゃなくて、目立ちたくないんです」
「同じじゃないか、それ?ハハ、まあそれもいいさ。お前さんの好きにすりゃいい」
そんな雑談を交わしながら、作業を続ける。
「さて、純度の高い鉄が選べたところで……本番だ」
ブロアが選り分けられた鉄鉱石を炉に入れ、火をくべる。炎が勢いよく燃え上がり、工房の温度が一気に上がった。
「アオイ、お前さんにも一つ頼みがある」
「何ですか?」
「火で熱した鉄を、お前さんの力で叩く――いや、圧縮してみてくれ」
「圧縮、ですか」
炉の中で真っ赤に熱された鉄の塊を、ブロアが鉗子で取り出す。
「普通は、これをハンマーで叩いて鍛えるんだが……お前さんの『磁極付与』なら、内部から均一に圧縮できるんじゃねぇかと思ってよ」
「できると思いますけど、このままじゃ無理です。薄い、頑丈な金属の板を2枚くらい用意してくれますか?」
「おう」
そして渡された2枚の金属の板の片方に、S極を付与する。
そしてその金属板を熱した鉄塊の下に置き、鉄塊を挟むようにもう一枚の金属板をのせる。
「『磁極付与』」
上に載せられた金属板に、N極を付与。
ジュッ、という音とともに、鉄塊が2枚の板に挟まれてぎゅっと縮こまるように形を変えていく。
断面を見せてもらうと、確かにハンマーで叩いた時よりも気泡が少なく、密度が高くなっているようだった。
「……こいつは、すげぇな」
ブロアが食い入るように鉄塊を見つめている。
「こんな製法、見たことねぇ。お前さん、知らねぇうちにとんでもない技術を生み出してるぞ。もしかしたら、これで村の鍛冶技術自体が変わるかもしれねぇ」
「そんな、大げさですよ」
「いや、マジだって。これなら、今までよりずっと頑丈で、軽量な武器が作れるはずだ」
ブロアの興奮した様子に、こちらまで何だか嬉しくなってくる。
戦うためだけだと思っていたスキルが、誰かの役に立っている。それは、思っていたよりもずっと心地よい感覚だった。自分の力が創造的な面でも活きるなんて、意外と悪くない。
「よし、この調子で素材を仕上げよう。お前さん専用の武器、楽しみにしててくれ。きっといいものができるはずだ」
「はい、よろしくお願いします」
こうして、俺とブロアの「武器づくり」が、本格的に始まったのだった。




