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ハズレと言われた『磁石』スキルで、俺は世界を無双する。  作者: 小兼


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18/23

17話 帰還

 ここからは、今年から書き始めたやつです。

 1年前に書いた1〜16話までとは若干雰囲気が変わるかも。

 洞窟を出た時には、もう日が完全に落ちていた。

 月明かりだけが頼りの森の中、俺はロカルドとブロアを担いで、村への道を急いでいた。

 正直、二人同時に運ぶのはきつい。いくらステータスが上がってるとはいえ、人間を二人抱えて走るのはバランスが悪すぎる。

 仕方ないので、ロカルドを右肩に担ぎ、『磁極付与』で作った担架もどき――金属を編んで作った簡易ストレッチャーに乗せ、『磁力吸引』で引きずりながら進む。

 我ながら、ひどい絵面だろうな、これ。


「……ぁ、れ……ここ、は……」


 不意に、肩の上のロカルドが小さく呻いた。


「気がつきましたか?」

「お、前……アオイ、か……?何で、お前が……」

「説明はあとです。とりあえず、村に戻りますから、大人しくしててください」


 ロカルドは何か言いたそうな顔をしていたが、体力が限界なのかそのまま再び意識を失った。というか、そうしてくれないと困る。ロカルドは自覚がないようだが、実はかなりの重症なのだ。

 そのまま黙々と歩を進め、ようやく村の柵が見えてきたころには、空が白み始めていた。


「お、おい!誰か来たぞ!」


 見張りの声が響き、村の入口がにわかに騒がしくなる。


「あれは……ロカルドとブロア?」

「アオイ!?お前、何でそんな……!」


 駆け寄ってきた村人たちが、俺の担いでいる二人を見て息を呑む。

 すぐに集会所まで運ばれ、村の薬師らしき老婆が三人を診てくれることになった。


「うん……命に別状はなさそうじゃの。多少の打撲と裂傷はあるが、ちゃんと寝かせとけば治るじゃろう」


 その言葉に、村中からホッとしたような空気が流れる。


「アオイ、お前が見つけたのか?」

「はい……森の奥の洞窟で、二人とも捕まってました」

「洞窟……それに、その傷の魔物は……」

「もう、倒しました」


 その一言に、周りの村人たちがざわめいた。


「お、おい、もう倒した、って……お前一人で、か?」

「はい」

「あの森の奥に出る魔物だぞ?ロカルドでさえ手も足も出なかったってのに……」


 どうやら、思っていた以上に非常識なことをやっていたらしい

 まずい、ちょっと話しすぎたか。

 あんまり目立つのはよくない、と思っていたはずなのに、疲れと安心で口が軽くなっていたらしい。

 とはいえ、もう言ってしまったものは仕方がない。誤魔化すように頭をかく。


「ま、まあ、運がよかったんですよ。たまたま弱点を突けたというか……」

「運でどうにかなるレベルの魔物じゃないだろ、あれは……」


 誰かのそんな呟きが聞こえたが、聞こえないふりをしておくことにした。


..

.


 その後、村は朝から大騒ぎになった。

 ロカルドとブロアの無事を喜ぶ声、そして俺への称賛の声。

 今まで「森で拾ってきた、何者かわからん子供」という扱いだったのが、一晩でガラッと変わった。


「ありがとうな、アオイ!あんたのおかげでロカルドが帰ってきた!」

「俺の妹も、お前のおかげで畑が荒らされずに済んでるって言ってたぜ!」


 次々と感謝の言葉をかけられ、正直、慣れない。

 前の世界でも、こんなに大勢から感謝されたことなんて一度もなかった。十河と二人でつるんでいたくらいで、目立つタイプでもなかったし。

 いや、十河ばっか目立ってて俺は陰だったな……。


 そんな中、村長だけは少し違う表情をしていた。

 遠くから俺を見つめる、その目には、感謝とは違う何か――探るような色が宿っていた。

 あの、普段頼りないことばっかやってる村長だが、しっかりと村長としての目はあるらしい。流石にこれだけやらかせば、何かがおかしいと気づくだろうな。


 その視線に気づかないふりをして、俺は集会所の隅で、小さく座り込んだ。

 ロカルドとブロアが助かって良かった。それは、心の底からそう思う。

 でも、同時に少しだけ怖くもあった。

 あの岩のような魔物に負けそうになったのもある。

 だが、それ以上に、


「ちょっと、目立ちすぎたかな」


 目立てば目立つほど、いつか「異世界から来た人間だ」とバレる可能性も上がる。

 そうなれば、また女神に何かされるかもしれない。あの女神なら、村ごと俺を潰すとか十分にやりかねない。

 

 とはいえ、今ここで隠れて何もしないわけにもいかない。

 この村に、世話になっている以上は。


「……ま、なるようになるか」


 誰にともなく呟き、俺は重い瞼を閉じた。

 眠れそうにないと思っていたが、しっかり疲れていたらしい。気づいたら、俺は眠っていた。


..

.


 数時間後、目を覚ますと、すでに日は高く昇っていた。

 集会所の中を見渡すと、ロカルドが上半身を起こして座っていた。


「お、起きたか」

「……ロカルドさん、体は大丈夫ですか?」

「ああ、お前のおかげでな。……それより、聞きたいことがある」


 その探るような視線に、重い声色に、嫌な予感がした。


「——お前、いったい何者なんだ?」


 ロカルドの目が、まっすぐ俺を見つめていた。

 誤魔化しが効かなさそうな、そんな視線だった。

 そもそもあれだけ暴れて誰も怪しまないのがおかしいような……レニス村の人たちって危機感薄い……?

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