16話 救出
洞窟に入って暫く進むと、かすかな光が見えてきた。
洞窟の天井に穿たれた小さな穴から、夕日が差し込んでいるのだ。そして、その光の下に……。
二人の影があった。
「ロカルドさん!」
急いで近より、様子を見る。ロカルドといるこのもう一人は見たことがないが、多分鍛冶屋のブロアだと思う。
まあ、ブロアでなくても、助けるが。
二人とも全身を殴られたようなあとがあり、意識はない。
急いで、村に連れて帰らないと。
そういや、二人を襲った魔物はどこだ?いないようだが……今は、また人間を捕まえにいってるのか?
とりあえず、二人を何とかして連れて帰らないと……。
その時、暗がりの向こうに、巨大な何かが蠢く気配がした。
低く、湿った唸り声が洞窟に反響する。
ガラリ……ガラリ……岩を削るような鈍い音。
ナイフを取りだし、ナイフにN極を付与して構える。
多分、あいつはこの洞窟に住んでいる――二人を襲った魔物だ。出かけていたわけではなかったのか。
あいつがここに来る前に、急いで二人を連れて帰ろうと思ったが、無理だな。
あいつは、完全に俺を捉えた。逃げても、多分追ってくる。
二人を担いだまま逃げてもすぐ追い付かれる。
それに、あいつを生かしたままにしておいたらまた被害が出るかもしれない。だから、今仕留める。
深い闇の向こうで、裂け目のような黄色い眼光が、ゆっくりとこちらの方へ動き始めた。
天井からの光で、魔物の姿が露になる。
見た目は、熊に近い。だがその体表は灰褐色のゴツコツした――岩のようなものになっている。
目は単眼で、金色。猫のように、瞳孔が細い。
体長は4~5メートルほどだろうか。かなり大きく、威圧感を与える。
そして、その手には――血まみれの、人間の腕。
口にも血がついてるし、誰かを食っていたのだろう。ロカルドとブロアは、欠損なし。
多分、この二人とは別の被害者。
あいつ……。
とにかく、倒すか。
「『磁極付与』」
魔物の頭部に、S極付与。
俺の手から飛び出したナイフは、まっすぐ魔物の頭部に飛んでいき――。
バキッ!
魔物の大きな手に掴まり、折られた。
……え?ナイフが、折られた?武器がない。まずい――。
「『磁極付与』!」
その辺に落ちている、拳大の石複数個にN極付与。
ドドドドド!
……しかし、効果は薄い。
岩のような体表が少し削れたものの、それほど大きなダメージを与えた様子はない。
魔物は獰猛な唸りを上げ、足を大きくあげると、思い切り振り下ろした。
ドンッ!
大きな揺れが生じ、上から岩の欠片が降ってくる。ロカルドたちは大丈夫か?
と、二人に意識を向け、その隙を魔物が突いてきた。
ブンッ――ドゴッ
魔物が俺に向かって腕を降り、避けようとした。が、避けきれず、食らってしまった。
「――ッ!」
重い痛みが、痺れが体を襲う。
当たる前に体を捻って避けようとしてなければ、こんな程度では済まなかっただろう。
まずい……。ナイフは折られた。石も、ほとんど効かない。
このままじゃ――
《レベルが上がりました》
――え?
《レベルが305になりました》
レベルが上がった?目の前のこいつは、死んでないのに?
――あ、ここに来る途中のあの大トカゲか。放っておけば勝手に死ぬようにしてたのが、死んだのか。
だが、これで多少は体力が回復した。多少だが、かなり有難い。
とにかく、こいつを――。
《新たなスキルが解放されました》
――え?この、タイミングで?
ヒュンッ――ドゴッ!
魔物が腕を振り下ろしてきて、慌てて避ける。
うわっ、危ねぇ!ついつい思考に集中しすぎた。とにかく、新たなスキルの確認をしたい。それ次第では、この魔物を倒すことができるかもしれない。
魔物から逃げ、岩陰に身を隠す。
手のひらを上に向け、唱える。
「ステータスオープン」
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ステータス
アオイ・モチヅキ
種族:人間
年齢:17
レベル:305
体力:15,250/15,250
魔力:15,250/15,250
攻撃力:15,250
防御力:15,250
素早さ:15,250
固有スキル:『磁石』
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固有スキルの欄を、軽くタップ。
《磁力吸引:LV4》
《磁極付与:LV5》
《磁場生成:LV1》
新たに追加されたのは、この『磁場生成』か――磁場?
つまり、磁場を生み出し、自由に操作する、ということか?それならば――勝てるかもしれない。
ドゴッ!
ついに、俺が隠れていた岩が魔物に壊された。
俺という獲物を再び捉えた魔物は、俺へと歩み出す。
後ろは行き止まり。下がることは、できない。やるしかない。
「――『磁場生成』」
新スキル、『磁場生成』を発動した途端――大量の情報が、脳内を駆け巡った。
なんだ、これ?これは――俺の『磁場生成』の範囲内の、情報か?
感覚で、分かる。磁場をどうすれば、どのように動かせるか。
ヒュンッ――ガガガガ!
魔物の頭部に、高速で石がぶつかる。
さっきまでは、体表を少し削るだけしかできなかったが――今回は、当てる場所を一点に集中させた。
それに加え、強力な磁場による加速。
それにより、今回は大きく、深く削ることができた。
洞窟内に散らばる「鉄分」――折れたナイフの破片、岩に含まれる鉱物、そして先ほど『磁極付与』した石が、この「磁場」の中では俺の自由に動かせる。
次に目を付けたのは、先ほど攻撃に使った拳大の石たち。
先ほど『磁極付与』でN極を付与したため、操ることができる。
複数の石が力線に沿って、魔物へとまっすぐ飛んでいく。
鈍い衝撃音と共に魔物の体が大きく陥没し、ひび割れが走る。あと少し。
次は――足元に転がっていた、ロカルドの折れた剣。
磁場の全ての力を一点に集中させるイメージ。
剣は魔物の頭部へとまっすぐ飛んでいき――魔物の頭部が砕け散った。
魔物の巨体が大きく後ろにのけぞって倒れ込み、動かなくなった。
そして――
《レベルが上がりました》
《レベルが342になりました》
魔物が、死んだ。




