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ハズレと言われた『磁石』スキルで、俺は世界を無双する。  作者: 小兼


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14話 探索

 さて。近辺の魔物を倒す、とはいったものの、無策で森に突っ込むのはダメだ。力任せに殴り込んだところで、返り討ちにされるかもしれない。

 最悪の場合、森で暴れた拍子に魔物の注意を引いて、村に被害が及ぶ可能性もある。

 あの森にはまだどんな化け物がいるか分かんねぇし、そもそも地形すら把握していない。


 まずは下調べからだ。あの森と、森に住む魔物について知らないと。

 まずは、地形について。地図があればいいんだが、どこにあるかな……とりあえず村長に聞いてみるか。

 ということで聞いてみたら、


「ああ、地図か?掲示板に張ってあるやつを持っていくといい。あれは昔ワシが書いたもんでな。まあまあ役に立つはずだろう」


 まあまあ、ってのが少し不安だが、それでも無いよりはマシか……と受け取った。

 すると、村長が棚の奥から、本を一冊取り出して渡してきた。


「これは“魔物図鑑”だ。これもワシが若いころに作ったもんでな。見た魔物を片っ端から記録してある。お前の役に立つだろう」


 役に立つだろうって、断定なんだ。その謎の自信はどこから?まあ、多少は役に立つだろうし、貰っておくか……。

 ありがたいと頭を下げつつも、心には一抹の不安がよぎる。さっきから気になるのは、「まあまあ」ってやつだ。

 いざって時に役に立たなかったら困るんだが……ま、大丈夫だろう。


 結局、俺は地図と図鑑、羊皮紙とペン、方向を確認するための簡易方位磁石を携えて出発することにした。

 この方位磁石は、昨日の夜急いで作ったものだ。

 木片の真ん中を削って小皿状にし、水をたたえる。その上に、『磁極付与』で磁性を持たせた針金を浮かせることで、指針代わりに使う。


 魔物討伐というよりも、まずは偵察。そうして俺は、森の入り口に立った。


「……相変わらず、不気味な森だな」


 静かで、暗い。

 森に響くのは、俺の足音のみ。

 ていうか、前はそれどころじゃなかったので気づかなかったが――鳥の、声がしない。


 鳥の声がしない理由として、考えられる可能性は2つ。

 1つは、この世界にはそもそも“鳥”という生き物が存在しないという可能性。

 もう1つは――


「この森の鳥は、全部魔物に食われたか……」


 恐らく、後者。

 ロカルドによると、この森は人間が3日生き延びるのも難しいという。

 そんな森を、鳥が生き延びれるわけがない。

 全て魔物に食われたか、他の安全な森に逃げるなりしたんだろう。


 ま、そんなことはどうでもいい。とりあえず、近辺の調査にいくか。

 まずは、この3つの道の内、北側の道を行くことにしよう。地図によれば、500メートル先には湖があるはず……ある……ある……無い?

 おっかしいな、この地図によれば、俺は湖に沈んでるはずなんだが。場所が違うか?


「……」


 いや、確かにこの辺で間違いない。簡易コンパスによる方位も一致している。が、肝心の湖が、影も形もない。むしろ、土が乾ききっている。


 この地図、まあまあ古いものだしな。自然災害か、干上がって消失でもしたのだろう。この湖で水分補給を、と思っていたのだが、まあ仕方ない。

 じゃあ、もう少し先まで行ってみて、様子を見るか……。


「……」


 違和感。ていうか。何でここに、倒木があるんだ?

 倒木は、北ではなく東側の道をいったところにあるんじゃなかったのか?

 違う倒木かとも思ったが、地図に書かれた東の道にあるという倒木の特徴と一致している。

 この倒木は、東の道にある倒木と同じものだろう。

 じゃあ今、俺は……東にいる? だが、方位磁石によればここは北。

 少し、地図が怪しくなってきたので、一旦戻って東側の道を進むか……。

 そして。


「……何でここに、湖があんだよ」


 目の前に広がる、大きな湖。

 ここって、東側の道を進んだ場所だよな?

 確か、さっきの倒木は、ここにあるはずだったよな?

 方位磁石は間違ってないし、考えられるのは……。


 この地図。

 うん、そうとしか考えられない。


  もう一度戻って、残りの西側の道を進んだが、100メートルほど先にあるという巨大樹が2キロ以上先にあった。

 調べてみると、方位や距離、向きや高低差――言ってしまえば、全部違った。不良品じゃねえか。よくこんな地図で今までやってこれたな。

 何がまあまあ役に立つだよ、あのニコニコ村長め……!


 となると……この「魔物図鑑」は?これも確か、村長が作ったやつだったよな。大丈夫か……?


 結果。使い物になんない。


 俺がこれまでに見てきた魔物の5割以上が載っていなかった。あの数が多いダチョウすらも、載っていなかった。

 載っている魔物も、名前と一言コメントだけで役に立たない図鑑だった。

 ていうか、何このムキムキのウサギ?このウサギのような魔物、実際にみたことあるんだが……もうちょっと痩せてたろ。小学生の自由研究レベルじゃねーか。前世に絵心置いてきたのかあのニコニコ村長?

 何がまあまあ役に立つだよ、あのニコニコ村長。


 心の中で村長に罵詈雑言を浴びせつつ、ぶん投げたくなるほどの怒りをこらえ、地図を丸めてリュックに放り込んだ。こんなもの当てにしてたら、すぐ迷子になる。

 仕方がない。今日は偵察と割り切り、今いる場所の簡易地図を作ることにするか……。


 辺りを一通り見回し、安全そうなルートを選びながら探索を続ける。

 今は、まだ昼。魔物が多くなる夕方のまでは時間がある。

 ここまで数時間は経っているが、魔物に襲われる気配はなし。何だ、思ったより安全。


 すると、不意に……コツン、と何かにつま先が当たった。


「ん?……」


 人骨だった。しかも、3人分。

 ……ごめん、さっき「安全そう」とか言ったの嘘だった。

 この辺に魔物の巣でもあるのか?回りに気を付けた方がいいかも……なんだあれ?低木の枝に、何かが引っ掛かっている。


 布。


 かつて白だったに違いないその布は、泥と血で汚れていた。だが、その材質と縫い目で、一目で衣類の“切れ端”とわかる。

 手に取ってみると、まだ湿っていた。多分、最近のだ。

 じゃあ、このまだ魔物は近くにいるのか?

 今の俺なら、その魔物を倒すことはできるかもしれないが、まだどんな化け物がいるかわからないし……一旦、村に戻るとするか……。

 そして、俺は道を引き返した。


...

..

.


 村へ戻ると、何やら騒がしい。人々が集まり、何やら話している。どうしたんだ?

 その人々のなかから誰かが飛び出してきた。ロカルドだ。

 そのまま通りすぎていこうとするロカルドに声をかける。


「ロカルドさん、何があったんですか?」

「鍛冶屋のブロアが森に入ったきり帰ってこねぇんだ。で、俺が今から確認しにいくところだ。じゃあ、行く」

「あ、待ってください!」


 そのまま立ち去っていこうとするロカルドを呼び止め、先ほど森で見つけた布を取り出す。


「この布って、ブロアの服だ!どこで見つけた?」

「あ、えーと、湖から西に一キロほど行ったところに……」

「助かった!」


 そう言って、剣を手に森へ向かっていくロカルド。


「待ってください!俺も――」

「ダメだ!」


 ロカルドを手伝おうと呼び止めるも断られ、立ち止まる。一人で大丈夫か?あの危険な森に……。

 いや、ここはロカルドを信じるとしよう。

 あれ?そういえば……。


「ロカルドって、湖の場所とかわかりますかね?」

「大丈夫だ。村長が地図を渡してたし……」


 え?

ぶっちゃけるとこの話、村長の地図が使い物にならないってことを伝えたかっただけです。

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