13話 交流
翌朝。
まだ薄暗い時間、ロカルドが集会所にやってきた。
「おはよう。起きてるか?」
「……はい」
「村長からの指示だ。今日一日、俺と一緒に仕事を手伝ってもらう。村人たちに、お前の人となりを見せてやれ。お前が敵じゃないってわかれば、受け入れてくれるかもしれん」
「……はい、頑張ります」
この村にただで住ませてもらってるんだ。それぐらいは、やらないと。
それに、村長や村民にも、俺が無害だと知ってほしいしな……その辺で魔物を殺しまくってる俺が、無害かどうかは知らんが。
ロカルドの仕事は、村の防衛線の見回りと、畑の見張りだった。畑は最近、魔物による荒らし被害が増えており、警備が必要だった。
で、俺はロカルドと見張りの仕事を――と、思ってたのだが。
「あ、君暇?畑仕事手伝ってくんない?」
「え?あ、いや」
「大丈夫!大丈夫!見張りの仕事なんて、ロカルド1人で十分だから!」
「いや、あの、村ちょ――うわっ!」
突然、お婆さんに畑仕事を手伝えと言われ、一旦断ったものの手を掴まれて畑へ引っ張られた。
え!?俺ここきて1日も経ってないのに!?
村長にも、村の人とあまり関わるな、って言われてるのに、どうすればいいんだこの状況。
ちょ、ロカルド!助けて!
「……」
俺がロカルドの方を見ると、スッと目を逸らされた。その目には、哀れみと呆れの色が浮かんでいた。
ロカルドォォオオ!
そのまま畑へ引っ張られ、手を放された。と思いきや、放された手にクワを握らされた。
畑をこのクワで耕せ、ということらしい。ちなみに、拒否権はないっぽい。
……え?この畑、全部耕すの?
遠くで、とんでもないスピードで畑を耕していくお爺さんやお婆さんが見える。
あの人達が出来るなら、俺にだってできるか……。
と、思ってた時期もあった。
辛い……!
クワを振り上げる度に体が悲鳴あげる!
振り下ろしたら、その勢いで体が倒れてしまう!
それなのに、向こうのお爺さんやお婆さんは変わらず、談笑しながら畑を耕してる。
……始めて、お爺さんとお婆さんのこと尊敬した。
よし、俺も頑張るか。
振り上げる。下ろす。引く。
振り上げる。下ろす。引く。
振り上げる。下ろす。引く。
振り上げる。下ろす。引く。
振り上げる。下ろす。引く。
「……」
だんだんと、畑を耕すのが苦じゃなくなってきた。
え?コツ?何も考えないで、無心になること。
クワを持って無心になると、あら不思議。気づいたら、畑が耕されているではありませんか。
代わりに、身体中がとんでもなく痛いが。
数時間も畑を耕して、目と心が死んだがその甲斐はあったらしい。
黙々と畑を耕していると、少しずつ村人たちの視線が変わっていくのがわかった。
「……あの子、よく働くな」
「てっきりただの厄介者かと思ったが……」
そんな声が、聞こえる。
この畑仕事のお陰で、少しは印象が良くなっただろう。
そして、俺は無心で畑を耕し続けた。
...
..
.
昼過ぎ。俺のことを思い出したお婆さんに、「畑仕事はもういい」と言われ、畑の見張りをしていた時だった。
「おい、ロカルド。あれ!」
村の外れの林の中から、小型の魔物が現れた。
簡単に言えば、猪と猿をくっつけたような見た目。
「チッ、畑を狙ってやがる!」
ロカルドはすぐ、魔物に気づき、剣を抜いて駆け出した。
俺にも、何かできることはないかな……。
ナイフは……持ってきてないか。じゃ、その辺の石……そこそこの重さの大きさで、角が尖ってるもの……あった。
「『磁極付与』」
手に持った石に、S極を付与。
N極は、もちろん魔物に。
ヒュッ――ドスッ
S極を付与された石は、魔物の方へと飛んで行き、脇腹に直撃。
魔物が血を吐き、よろめく。
ロカルドが間髪入れずに斬りかかり、魔物はその場で絶命した。
「……今のは、お前が?」
あ、やべ。あんまりスキルを人に見せないようにしよう、と決めたばかりなのに、何も考えずにスキルを使ってしまった。
「はい……すみません、勝手に……」
ロカルドはしばらく黙っていたが、やがて苦笑した。
「いや……助かった。お前が石を投げてくれたお陰で、楽に倒せた」
……おっと?セーフ、か?危ない……。
今度からは気をつけることにしよう……守れる気がしないけど。
...
..
.
夕方。村長に、集会場に呼ばれた。
「聞いたぞ。畑を守ったそうだな」
あ、畑のこと、結構広まってるのか……。
「はい……」
何を言われるかと身を縮めた俺に、村長が意外なことを言った。
「ふむ……では、一つ提案がある。この村で、しばらく暮らすつもりはあるか?」
え?いいのか?
いや、住ませてもらえるならいいんだけど。
「……はい」
「ならば、滞在を認めよう。お前に、1つの家を与える」
「ありがとうございます!」
「ただし……」
ん?やっぱり、うまい話には条件があるのか?
「いくつか、お前の実力を見込んで、頼みたいことがある」
え?頼みたいこと?俺に頼んでもいいのか?
でも、せっかく信頼を得てきたし、断るのはまずいか……。
「何ですか?俺にできることなら、やります」
「うむ。実は、数日前にここの貿易路を絶たれたのだ」
「え!?」
ちょ、結構重要そうなことだけど、俺に言っていいの?
「まあ、ここはほとんど何もないしの。こんな危険な山奥まで行って、交易する必要はないとの判断だろう」
「え、でも大丈夫なんですか?」
「安心せい。この村にすむ全員をまかなうだけの食料は、あの畑で作れる」
「そうですか……」
「で、本題だが。これまでは、貿易に来る者がいたため、魔物達も大人しかった。しかし、貿易に来る者がいなくなったため魔物が活性化し始めたのだ」
「……」
「その魔物による被害も、最近増加している。そこで、お前の実力を見込んでの依頼だが、近辺の魔物を倒してくれないか?」
倒してくれないか?というけれど、これは断るのは無理だ。
俺がこの村に住めるかどうかも、この村長が簡単に決めれるのだから。
ま、それで信頼を得られるなら悪くない。それに、大抵の魔物なら倒せるしな。
「わかりました。準備を済ませて、明日倒しにいきます。それでいいですか?」
「うむ、頼む」
こうして無事に、俺は村に受け入れられることができたのだった。
人との交流を書くの苦手なせいか、話の進み方が早すぎたり、終わり方が中途半端になったかも……。
16話までは1年前に書いたやつなので、苦手なとこが目立ちます。
17話以降は最近書いたものなのでそれほどではないです。多分。




