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ハズレと言われた『磁石』スキルで、俺は世界を無双する。  作者: 小兼


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12/23

12話 人里

「何でこんな森に、1人でいるんだ?」


 村に連れていってもらってる中、1人が話しかけてきた。


「えーと、あんまり覚えてなくてですね……」

「ふぅん……」


 やべ、少し疑われてるな。言い訳を考える俺に、男が予想外のことを言った。


「お前、俺達に見つかって、運が良かったな」

「え?」


 運が良かった?どういうことだ?この森って、そんなに危険なのか?


「運が良かった?何でですか?」

「いや、ちょっとな……この森には、今何かが起きている」

「何か?」


 え?何だ?

 俺なら、多分何が起きても対処できるだろうが……この森には、この先何回か来ることがあるかもしれないしな。

 念のため、聞いておいた方がいいだろう。


 男は辺りを一回見渡し、俺を見て言う。


「多分、この森には何かしらの化け物が湧いた。そいつが、この森の動物を狩りまくってんだ」

「化け物?化け物って、スライムのことですか」

「いや、違う。そんなものよりも、遥かに化け物だ」


 あのスライムよりも化け物?あのスライムですら、ギリギリだったのに?

 あのスライムより強いとなると、それは正真正銘の化け物だ。

 この男の話し振りから、嘘とは思えない。多分、本当に何かがいるのか。

 心配だし、聞いておくか。


「何でそうだと思うのですか?その魔物を確認したんですか?」

「いや、確認はしてない――だが、あちこちで魔物が死んでるんだ」

「死んでる?」

「ああ、しかも、かなり強力な魔物ばかり。普通の人間じゃ、瞬殺されるようなやつらだ。そいつらが、あちこちで殺されてるんだ」


 ええ?ちょっと怖いな、何それ。


「そいつらを殺した化け物は恐らく、鎌鼬のような見た目だと思う」

「鎌鼬?」


 鎌鼬って、あれか?手が鋭い刃になっていて、それで人を切り去ってくやつ。


「ああ。それ以外に、あんなに鋭い刃を持つ魔物なんて、他にいないしな」

「鋭い刃?」

「ああ、死んでた魔物は、ほぼ全てに鋭い刃物で斬られたような傷があった。しかも、かなり強く斬られたのか傷が抉られてる魔物も……」


 ん?鋭い刃物で、かなり強く斬られてる?

 『磁極付与』での、高速ナイフ飛ばし……。

 えーと、すごい心当たりがあるんだが……。ちょっと、確認してみよう。


「その死んでた魔物って、どんなやつですか?」

「確か、一番最初に見たのが白色の狼で、その次はたしか猪で……」


 はい確定。それ、俺ですね。ていうか、あのあと少し待てば、すぐに人と会えたのか……。

 まあ、たくさん魔物を倒したことで、レベルが250くらいまで上がったしな。いいか。


「……ま、とりあえず気を付けろよ」

「あ、はい。わかりました」


 気を付けるも何も……俺が、その化け物なんだよな。まあでも、やはり他の人が見ても、俺のスキルは異常らしい。

 知られたら、避けられる可能性もあるし……持ってるスキルについては、黙っておくことにしよう。

 ていうか、少し前から思ってたけど、俺のスキルの効果、強くないか?

 決して、ハズレといわれるものではないような気がする。

 いや……別に、ハズレなのは間違いではないかもしれないな。


 ハズレ。外れ。元あるべきの、理から外れた、異常(イレギュラー)

 既存のスキルとは外れた、規格外な強さ。

 そういう意味では、俺の『磁石』は"ハズレ"、なのかもしれないな。

 などと考えながら、俺達は森を進んでいった。


...

..

.



 数分歩き、その間二人と色々と話し合ったことでだんだんと打ち解けてきた。

 先頭を歩く男の名はロカルド、その後ろに続くのがギース。

 どちらも、二人が住む村を守る、自警団のような存在らしい。


 森を抜けてからは、道は多少整備されており、歩きやすくなった。だが、周囲の景色は変わらず鬱蒼とした木々に囲まれている。

 しばらく歩いていると、前方にちらほらと煙が立ちのぼるのが見えてきた。


「見えてきたな。あれが、レニス村だ」


 ロカルドがそう言って指差す先、木造の柵に囲まれた小さな村があった。

 素朴な木の家々が並び、柵の内側には畑や家畜小屋も見える。


「……こんなところに、人が住んでるんだな」

「まあ、何もない場所だけどな。安全ってわけでもないし、最近は魔物の動きも怪しい。お前が歩いてきた方角、あれは普通は通らない道だ」

「……そうなんですね」


 村の入口に着くと、簡素な門の前で見張りの男がこちらに目を細めた。


「おいロカルド、そいつは?」

「森で迷ってた子供だ。とりあえず村に連れてきた。何者かはわからんが、ひとまず保護する」


 見張りの男は眉をひそめた。


「こんな時期に、よその子供?疑わしいな……」

「気持ちはわかるが、だからって見捨てるわけにもいかんだろ。何かしらあったんだろうさ」


 ロカルドのその一言で、見張りの男も仕方なさそうに門を開けた。


「わかったよ。ただ、村長には報告してくれよ」

「ああ、もちろん」


 村に入ると、何人もの村人たちの視線が集まってきた。子供もいれば、大人もいる。

 みんな、俺を見る目がどこか警戒しているようだった。


「おいロカルド、また妙なもん拾ってきたのか?」

「今度は子供かよ。最近、魔物も物騒だってのに……」


 そんな声が聞こえてきて、思わず身を縮めたくなる。

 俺の背後を歩くギースが、ぽつりと呟く。


「村人ってのはな、疑り深いんだ。特に、何もない田舎ほどな」


 そうなのか……。少し、不安だな。ま、いざとなったら逃げ出せばいいか。

 しばらく歩くと、村の中心にある少し大きめの建物の前に到着した。

 木製の看板には「集会所」と彫られている。


「ここが、村の中心だ。村長も大抵ここにいる」


 ロカルドがドアを叩くと、中から年配の男が現れた。

 白髪交じりの髭、皺だらけの顔。だが、目は鋭く、こちらを射抜くように見つめてくる。

 コイツが、村長か?


「この子は?」

「森で迷っていたようです。危険な区域を1人で……放っておくわけにもいかず、連れてきました」


 村長はしばらく俺を見つめ、やがて頷いた。


「名は?」


 ……あ、俺?

 えーと、望月葵(モチヅキ・アオイ)……いや、違うか。

 ここは、多分名を先にしたほうがいいか?


望月葵(アオイ・モチヅキ)です」

「……見慣れぬ名だな。出身は?」

「えっと……あまり、よく覚えていなくて……」


 答えると、村長はほんの少しだけ目を細めた。

 その視線が、胸の奥にチクチクと刺さるようだった。


「……そうか。まあ、事情はあるのだろう。だが、この村に入れるには、一定の信頼を得ねばならん」

「はい……」

「今夜は集会所に寝かせよう。だが、村の者と無闇に関わらぬように。少し様子を見させてもらう」

「ありがとうございます」


 そうして、俺は集会所の一室に案内された。

 床に藁が敷かれていて、角に置かれた古い布団が唯一の寝具だ。

 質素だが、野宿よりはマシだ。

 布団の上にゴロリと寝転ぶ。

 眠れそうにないと思っていたが、すぐに眠気が訪れてきた。今日だけで、狼、猪、ダチョウ、独眼巨人サイクロプス、スライムと戦ったのだ。疲れていないわけがない。

 俺はまどろみながら、ゆっくり目を閉じ、眠りについた――。

 人との交流書くの、やっぱり苦手です。

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