八章
ガサラとサファルは、国交を繋げているため、両国の条約の下、商業道路は整備されていた。
その道は、ガサラとサファルのそれぞれの首都を繋ぐ『中央道』と中央道から各町や村、もしくは領へと延びる『地方道』から出来ていた。
国境の境には、一つ一つの道に関所が置かれており、殆んどの商人や旅人はそこを通って入らなければ、野生動物が多くいる山脈を越えることは不可能とされる。
その『不可能』とされていた山脈を偶然なのか、必然なのか、越えた兄妹とこれもまた、偶然なのか、必然なのか、出会った老人、アレニウスは、サファル国の首都と首都より少し北にある村との分かれ道に来ていた。
「今は、魔術団はグリゴール村にいる。私らは左じゃな」
「私は右ですね」
馬を止め、立ち止まった。
「ここからは別れることになる。馬で行くとなると・・・・・・そうじゃな・・・・・・一日、二日で着くはずじゃ。気をつけて」
アランとアレニウスは、握手をすると、アランはウェンディの方を見た。
「・・・・・・気を・・・・・・つけてな」
照れくさそうに顔を赤くしながら、聞こえるか聞こえないかぐらいの声でアランは話していた。
「えっ・・・・・・うん。アランも気をつけてね」
ウェンディは、ついさっきアランとアレニウスがしていた握手をしようと、ウェンディは手を差し出した。
アランは、一瞬驚きながら、ウェンディの柔らかい手を握り返した。
二人の顔には、温かい笑みが浮かんでいた。
そっと手を放すと、アランは再びアレニウスの方に向いた。
「妹をよろしくお願いします」
「あぁ。応援しとるぞ」
「ありがとうございます」
そう話すと、アランは、毛並みもきれいになったアランの愛馬にまたがり、振り向かずに進んでいった。
「・・・・・・私達も進もう」
アレニウスの驢馬を引き、歩み始めた。
「ここがグリゴール村だ」
そこは、前の村とは違う情景だった。
花畑が広がり、花を摘んでいる娘の姿もあった。
「すごい・・・・・・」
感激しているウェンディにアレニウスが説明していた。
「この村では、花を咲かせ、蜂蜜にしたり、香水にしたりしている村なんだ」
我が事のように話しているアレニウスの顔は晴れ晴れしていた。
「さぁ、あと少しで着くぞ」
開けた野原に向かうとそこには、大小色とりどりなテントが立ち並んでいた。
夕日が沈みかけているなか、そこでは、十数人ぐらいの男女が入り交じって、夕食の準備をしていた。
近づいていくと、ウェンディよりは若い小柄の少年がアレニウスの姿を見つけた。
「団長がお帰りになったよー!」
その声変わり途中の独特な声色に、気がついた人達は、仕事の手を止め、集まって来て、二人を歓迎していた。
準備も終わり、夕食のテーブルを囲んだ席でウェンディは紹介された。
「新しく加わることになった、ウェンディだ」
アレニウスに促され、慌てて立ち上がった。
「これからお世話になります、ウェンディです。よろしくお願いします!」
周りから温かな拍手を浴び、ウェンディの心は熱くなっていた。
夕食も半ばに入り、酒の入ってきた人達は騒ぎだしていた。
その姿をボーッと見ていると、いきなりウェンディの肩に手がいきなり回され、話しかけられた。
「よっ!俺はグリン。フィレンステッド・グリンだ。よろしくなー」
「よ、よろしくおねがいします」
色気全開なのか、ただ酔っ払ってはだけただけなのか、上着の前を大きく開き、シャツも最低限ほどしかボタンを留めていない大柄な赤髪の男性が、ワインを持って、隣に座ってきた。
「そんなに固くなるなって。おーい、ジョージア!こっち来いよ」
一人で食事を摂っている女性をグリンは呼んだ。
彼女はグリンの隣にいる、ウェンディに興味を持ったのか、二人の前の席に座った。
「彼女はジョージアだ」
「ラビー国出身のジョージア・トリンだ。よろしく」
少し黒く焼けた肌の鳶色の目を持つ女性で、真っ赤な赤髪をポニーテールにして、男物の服を着ていた。服は男物だったが、スタイルがよく、きれいな顔立ちをしていた。
ラビー国は、サファル国に隣り合っている温暖な小国だった。
「ウェンディはどこからきたんだ?」
ジョージアはウェンディに尋ねた。
「えっと・・・・・・」
ウェンディは、アランに『ガサラ出身ということは言わない方が良い』と言われたことを思い出し、口を噤んだ。不審に思われてしまうと思った。しかし―
「俺はサファル国出身だぜ〜」
グリンは酔っていて、ジョージアの質問に答えていた。
「テッドには聞いていないぞ!」
ジョージアはグリンをキッと睨んだ。
「怒った顔もかわいいぜ〜」
「セバスチャン!この酔っ払いを連れてってくれ!」
ウォンは近くで給仕をしていた、コックの姿の少年を呼んだ。
「はいはーい!」
その少年は、最初にアレニウスを見つけた変声期途中の少年だった。
「ウェンディさんでしたっけ?セバスチャンです。よろしくお願いしまーす」
そういい、自分よりも大きなグリンを慣れた様子で担いでいった。
「・・・・・・すごい」
「いつものことだ。ウェンディも明日は早い。そろそろ寝に行くか?」
「はい」
ウェンディはジョージアについていき、小さなテントに入った。
そこには、小さいながらもベッドや机などがあり、きれいに完備されていた。
「私と同じ部屋だから、そっちのベッドを使うといい。じゃあ、おやすみ」
そう案内すると、広場へ戻っていった。
「おやすみなさい…」
ウェンディはベッドに入った後も寝られずにいた。
『アランは無事に着くかな?ここの人たちはいい人そうだけど、さっきみたいにガサラのことを聞かれたらどうしよう・・・・・・』
『それよりも問題は、ま、《魔術》って何だろう・・・』
そこまで考えたところで旅の疲れで眠ってしまった。
正直に告白します・・・サボっていましたm(_ _)m反省します・・・というところですが、次もまた更新遅れてしまうかもしれません。本当に不定期になってしまいましたが、これからもよろしくお願いします。




