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九章

 真夜中、団長の久しぶりの帰りで騒がしかった宴会調子の夕食も終わって、広場は静まっていた。

 そんな中、ウェンディは、一人目が覚めていた。

 贅沢を言えないのは分かっていたが、しかし―

(身体中が痛い・・・・・・)

 今まで生きてきた中で、普通の庶民の寝具で寝たことの無かったウェンディにとって、木で作られた簡素なベッドでの二晩目は体が堪えていた。

 カーテン越しで静かに寝るジョージアを起こさぬように、ウェンディは、軽い上着を着て、黒いリボンで緩く髪を束ね、そっとテントから抜け出した。


 夜は、空気が澄んでいた。

 星は、輝いていた。

「あ。あの星座は・・・・・・大鷹座・・・・・・」

 ウェンディは、草原に寝転び、空を見上げた。

 ふと、ダーウィンでのある夜の事が思い出された。

 その夜も空気の澄んだ夜だった。


 ウェンディが、十二歳、アランが十三歳の時だった。

 アランは、その年の春にガサラの成人年齢である十三歳の成人の儀を終えていた。

 ガサラの貴族の教育として、武術や作法の指導・教育担当の教授、指導係を成人(十三歳)以前に付けるようになっていた。

 ダーウィンに来た指導係の中で、彼らに年齢が近かったのは、十七歳のボルト・ストラトスだった。彼は、ガサラでは珍しいくすんだ色の茶髪で、伸ばしたままの髪は紐で緩く束ねていたが、結びきれない後れ毛はいつも残っていた。だらしない印象はあるが、十七歳の若さで剣の師をしているだけに、動きには無駄がなく、鳶色の瞳の奥に見る者に威圧を与える光を持っていた。

 真夜中、兄妹とボルトは城の北の塔で寝転び、夜空を見上げていた。

「あの青く輝いている星は、人に意思を伝えるのが好きと言われる藍銅鉱(アズライト)座。あっちの唯一桃色に光る星は、さまざまな神を魅了したと言われる紅水晶(ローズクォーツ)座だろ・・・・・・」

 ボルトは、二人に星を指して教えていた。

「ねぇ、ボルト。星座の名前って宝石の名前が使われてるのが多いよね。何で?」

 ボルトの左で寝転んでいたウェンディは、首を向けて尋ねた。

「神学で習ったろ?天上界に住む宝石神(アンビジュー)が、昼間は宝石、夜には星という形で人を見守り、管理しているんだよ」

「それは分かってるけど・・・・・・」

「ボルト。ウェンディが言いたいのは、その理由だよ。何でも興味がある年頃なんだ」

 何故か嬉しげに話すアランを明らかに呆れた様子で、ボルトは、右を向いてぼやいていた。

「おい・・・・・・その年頃は、もっと前だぞ・・・・・・と言うよりもお前は妹を甘やかしすぎじゃ・・・・・・」

「ボルト、そうじゃなくってね・・・・・・動物とか道具の名前はあまり聞かないなあって・・・・・・」

 ウェンディは、アランの反応はなかったことに流し、前髪を触りながら遮った。

「ああ、それか。あると言えばあるぞ。・・・・・・例えば・・・・・・そうだな・・・・・・そう!あれだ。周辺各国の国獣だな」

 ボルトは、胸元にしまっていた分厚い本を出すと、空と照らし合わせていた。

「あれがこう繋がって・・・・・・ガサラの国獣の大鷹で、その右側が・・・・・・こう繋げて、獅子だろ・・・・・・」

「向かい合わせなんだ・・・・・・やっぱり。・・・・・・・今、仲悪いのに・・・・・・」

 どこか寂しげに呟くウェンディは、本当に悲しそうなのを兄と兄のような指導係は、感じていた。

「そうだな。仲良くなればいいのにな」

「ああ。そうだな」

「「「・・・・・・・・・」」」

 まだ幼く、力がない彼らには、希望しか言えず、どうすることも出来ない国と国との問題に、それぞれが無力さを感じていた。

 すると、静けさを保っていた空に、すっと何かが横切った。

「あっ!流れ星だ」

 ウェンディは、嬉しそうに歓声をあげた。

「流れ星が通る間に三回願い事すると、叶うらしいぞ」

 俗説も知るボルトは、分厚い本をしまいながら、思い出したように話した。

「よし、ウェンディ!探すぞ!」

「うん!」

 兄妹は、勢い込んで探したが、その夜は見つけられずに、寝室へ戻った。


「大鷹座と向かい合うのが、獅子座で・・・・・・青い星が藍銅鉱(アズライト)座で、唯一桃色に輝くのが、紅水晶(ローズクォーツ)座・・・・・・」

 ボルトから教えてもらった星座を思い出すように、一人でぶつぶつと唱えるようにしていた。

(そういえば、アランは何を流れ星に頼みたかったんだろ。私は・・・・・・もう叶えられない望みだったけど・・・・・・)

 ウェンディの当時の願いは、「家族や城のみんなが一緒にいられること」だった。

 父親は、首都にいることが多く、食卓を囲むようなことも一緒に遊んだりすることもめったに無い。

 シィーフ達から逃げるため、城を出てきてしまった今、その願いは、望めぬ願いであった。

「あ、流れ星!」

 憂鬱に浸り始めたウェンディは、突然流れた星に驚いたが、ボルトから聞いた通りに三回願い事した。

 今度の願いは、何年後になって叶っていることも願って・・・・・・


 そんなウェンディは、テントから見る人影にも、その流れ星の正体にも、その時には、何も気づかずに・・・・・・



作者:ものすごいおまたせしました!

アラン:本当だよ。僕の出番がもうなくなるかと心配を・・・

作者:過去のことも入れて、名前だけ出てた人も出せました☆

アラン:・・・っおい!遮るなぁー!!

作者:次回も時間かかるかもしれませんが、よろしくお願いします!

アラン:・・・えっ!もう終わり!?

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