十章
次の日。ウェンディが目覚めたときには、テントの中にジョージアの姿は無かった。
外からは、テントの隙間から漏れる朝日が感じられ、同時に、賑やかな声が聞こえられた。
「なんか、外が騒がしい感じが・・・・・・」
着替え終わったウェンディが、テントの入り口を開けると、そこには、それまでに見たことの無い光景が広がっていた。
あちらこちらで、自然には有り得ないような、緑色の炎を出したり、人の形をした水を動かしたりしていたのだ。
「・・・・・・な、何これ・・・・・・」
ウェンディは、口をぽかんと開きながら、目を見開いてしまうほど、あまりの衝撃に驚きを隠せなかった。
棒立ちになっているウェンディに様々な怪奇現象――ウェンディには、そうとしか感じられなかった――を引き起こす団員の間を見回っていた、アレニウスが笑みを浮かべて近づいてきた。
「あの・・・・・・団長さん・・・・・・これって一体・・・・・・?」
「これが、《魔術》じゃよ」
「・・・・・・」
ガサラでの生活からしてみると、ただの奇術や曲芸にしか見えなかった。しかし、よく見てみると、ダーウィンにまで時々回ってくるような奇術師や曲芸師とは、明らかに異なっていた。今、目の前にいる彼らは、種も仕掛けも無いようなことをしていて、人並み外れたことに近かった。
「・・・団長さん・・・・・・私、こんなこと出来ませんよ・・・?」
「それについては、大丈夫じゃよ。君なら、練習すれば、出来る!絶対に!!」
握りこぶしをぎゅっと握り締めた老人の目は、活き活きとした少年の目のようだった。
(なんだか、妙な期待をされているんですけど・・・・・・)
不安げなウェンディには、気づかなかったのか、無視したのか、気づかれないまま教師役をしているという人のいる、一番か二番を争うような大きさのテントへとアレニウスに連れてこられたが、ウェンディは気持ちが乗らず、足取りはなぜか重かった。
「・・・ということで、ヴィドールは、サファルとガサラによって治められています・・・。・・・寝るな、新入り」
淡々と教科書らしき本を読んで歩き回る教師は、本で顔を隠しながら寝ていたウェンディが、かくんと頬杖から落ちたところを、本の角で叩いた。
「いったあーっ・・・!」
「ハハハハ・・・!」
痛がる様子を、日常茶飯事のお楽しみ、といった様子で笑ったのは、周りの生徒だった。生徒、といってもウェンディより七、八歳は年下の子供たちだった。
(う、うーっ・・・!くそおおおおっ・・・!)
ウェンディは、今まで年下と関わることがあまりなく、周りがある一人以外は、年下で接し方も分からず、これまでしたことの無かった反応をしてしまい、ウェンディの顔は、真っ赤になっていた。
こんなことになってしまうのを説明するには、少し前のこと。
「ウェンディ、彼が世界史をはじめ、基礎的魔術を教える魔法団唯一の教師役、フリッツだ。フリッツ、彼女は少し他の団員とは違う複雑な事情があるから、お手柔らかに頼むよ」
テントに入ると、アレニウスは、一番前の教卓で本を読みふけっている男を捕まえ、紹介していた。
フリッツと呼ばれた男は、教師をしているには、二十代後半ほどの若さだった。
端正な顔立ちで、色味の少ない銀色の髪と目をしていた。切れ長の目は、怜悧で、冷たい印象を与えるようで、ウェンディには、やや怖く感じた。
「よ、よろしくお願いします・・・」
おどおどしているウェンディを見定めるようにじっと食い入るように見つめた。
(うぐっ・・・)
明らかに怯んでいるウェンディの様子を見ると、満足気に鼻を鳴らすと、ウェンディにとって重大なことになってしまうだろうことを言い渡した。
「とことんしごいていくから、そのつもりで!」
(・・・・・・はあっ?!)
アレニウスの言った『お手柔らかに』を無視した宣戦布告だった。
アラン:なぁ・・・僕の出番無かったんですけど・・・
作者:あっ・・・気にしないで(笑)それより、妹さん大丈夫かなぁ・・・。
アラン:そうだよ!!ウェンディ、なんか可哀想なことにぃ・・・!!
作者:さぁ、どうなるんでしょ?!お楽しみにっ・・・☆
アラン:ウェンディー!お兄ちゃんは、応援してるよぉー!!




