六章
町の宿屋からは、すでに町の人が飲んでいるのか、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
馬を馬小屋に入れると、老人は扉を開け、ウェンディ達を通してくれた。
「奥さん、部屋は空いているかい?」
老人が宿の中に声をかけた。
「あら、アレニウス様。いらっしゃい。どうぞ入って」
明るい女の人の声が、出迎えた。
店の中は、一階が飲み屋になっているらしかった。
「女将さん、どこか個室で食べられる所はないかね?」
「あぁ、それなら奥の部屋にどうぞ。食事は、いつものでいいですね?」
女将さんと呼ばれた女性は、真ん中の大きなテーブルで飲んでいた男の皿を片付けながら、老人、アレニウスと話していた。
「あぁ。あとパンとスープも足してくれ。さぁ、二人とも行くぞ」
とりあえず二人は、小柄な老人についていくことにした。
席に着くと、ブランデーや香草焼き、アレニウスが頼んだパン、イモなどのスープが出てきた。
「美味しそう・・・・・・」
ウェンディは、目の前から漂う美味しそうな匂いに呟いていた。
「遠慮せずに食べてよいぞ、ダーウィン兄妹?」
ダーウィン兄妹は、驚いたようにアレニウスの顔を見ていた。
「わしは、君らの両親をよく知っているのだよ。特に母親は・・・・・・」
どこか懐かしげな表情がまた浮かんでいた。
「・・・・・・アレニウス殿のお話をお聞きたいのですが・・・・・・先に私達の話の方がよろしいですか?」
ウェンディは、隣で背筋を伸ばして口を開いたアランに驚いた。どこか父親に似た威厳のある姿勢から驚いたのかもしれない。
「あぁ、君らの話をまず聞いてもよいかな?」
アランがこれまでの経緯を話し、それにウェンディが付け足す形で話し始めた。
一通り話し終えると、ゴブレットに入ったブランデーを飲み干したアレニウスは、沈んでいた。
「そうか・・・・・・ソフィアもスティーブももう死んでいたのか・・・・・・そして、あやつも・・・・・・」
ウェンディは、パンを食べようと上げた手を止め、ふと尋ねた。
「なぜアレニウスさんは両親を知っているのですか?」
「ソフィアは、私の弟子だった」
ウェンディの金の髪を見つめながら、アレニウスは言った。
「えっ・・・・・・何の・・・・・・弟子だったのですか?」
「聞いていないのか?君らの母、ソフィアは金の風魔女と呼ばれる魔術使いだったのだよ」
「えっ・・・・・・」
「「《魔術》・・・・・・?」」
二人は《魔術》という言葉に驚いていた。
「スティーバは何も話さなかったのだな。ガサラは、サファルほど魔術技術が発達しておらぬしの」
アレニウスは、瓶からゴブレットにブランデーを注いでいた。
「神学の博士から少し聞いたことがありますが・・・・・・現実にあるものだとは・・・・・・」
「そうすると、アスタリさんも魔術使いなのですか?」
複雑な表情のアランとは逆に、興味が湧いたウェンディは、空色の目を輝かせていた。
「あぁ、サファル国立魔術団の団長だ」
「だ、団長さん・・・・・・ですか・・・・・・」
優しげな老人の予想外な立場に驚いていた。
「そうだ!君たちはその継母達を倒さなければならないのだな。だったら、アラン、君は王都へ向かってみてはどうだろう。しばらくすると、武術大会が開かれる。国王は公正だ。だから、どんな身分でも使ってくれるはずじゃ」
「ウェンディはどうするべきだとお考えですか?」
アランは、自身の返事よりも先に妹のことを尋ねていた。
「ウェンディは・・・・・・魔術団に入るのはどうだろう?魔術使いの血は娘に多く流れるという話もある。だから、サファル三大魔術使いとも呼ばれたソフィアの娘なら、きっと使えるはずじゃ」
「・・・・・・」
アランは口を閉ざしたままだったが、ウェンディは口を開いた。
「私は・・・・・・行くわ」
ウェンディは決意した。
「・・・・・・アラン、君はどうするんだ?」
アランは考えていた。
(ウェンディと離れることになるのは寂し・・・・・・っじゃない!離れることで危険が増える可能性は・・・・・・だが・・・・・・)
決意したようだった。
「あぁ、そうしよう」
「だが、ガサラ国出身だということは言わない方がいいと思う。これからの情勢どうなるか分からないから」
アランは険しい顔でウェンディに言った。
「えぇ、分かったわ」
「それでは、明日出発しよう」
話も一段落したので、アランも食事を始めた。
「そういえば、君らは服の予備は持っているのかね?」
「いえ・・・・・・あっ・・・・・・!」
雨に濡れて、生乾きのままだったことに気がついた。
「女将さんにもらって、熱い湯を浴びて寝なさい」
「「・・・・・・クシュンッ!」」
返事のように同時にくしゃみが出た。アレニウスは、その様子を孫を見るような優しい目で見ていた。
更新遅れてすみませんm(__)mコメントもぜひよろしくお願いしますっ!




