二十七章
数日経ったある日。
城内は騒がしくなっていた。
そうとも知らず、ウェンディはいつもの朝の魔術練習――魔術対決とも言えるだろうが――を終え、濡れた服を着替えるためにジンを後ろに連れて、部屋に戻っていた。
その時、身長をゆうに越えている重なった箱を持っていたサジの姿が見えた。
「あ、サジくん」
突然声をかけられて、ビックリしたのか、二個落ちてしまった。
「あわわ、すいません。レディ・ウェンディ」
「こっちこそゴメンね、驚かさせて。ところでその大荷物は?」
ウェンディは、年下は苦手ではあったが、それは、四、五から七、八歳の子供のことだったようだ。現に十二、三歳ほどのサジには普通に話しかけていた。
「これらは、アラン様の御荷物とアラン様がウェンディ様にと贈られる、冬用の上着と今夜のドレスです」
「私の?そんなの要らないってアランに言っておいてくれない?たとえ今夜のドレスだったとしても・・・・・・ん?・・・・・・今夜の・・・今夜の・・・今夜の!?」
急に驚きだしたウェンディにサジはまた荷物を落としそうになっていた。
「ど、どうしたんですか?」
「今夜?!・・・って、今夜は一体何のパーティーなの?こんな御時せ・・・・・・」
ウェンディは慌てていたが、理性を取り戻して後半の言葉は飲み込んだ。
(あまり人々には広まっていない不安を伝えない方か良いよね・・・それに、相手は子供だし・・・・・・)
言葉を無理矢理繋げるため、わざとらしく咳払いをして続けた。
「そ、それで、何のためのパーティーなの?」
「はい。第一王子のリチャード殿下が東部のギーゼ砂漠への遠征からお帰りになさったので、その無事を祝すそうです」
「お祝い好きなのかしら・・・ゾリム陛下は」
王のことに対して、そのような言い草は失礼だろうが、ウェンディは、呆れた表情になっていた。
「あ、それで、私の荷物って言うのはどれ?」
「そこの落ちてしまった二つの箱です」
ひょいとウェンディが目で指された箱を持つと、元通りサジの荷物の上に乗せるのではなく、自分で運び出した。
「あっ、いけません。御荷物を運ぶのは・・・・・・」
「いいの。どうせ行く方向は違うでしょ?それに、アランは、騎士だけど私はただの魔術団員だし・・・・・・」
「いえ。魔術団員の方も騎士と同じぐらいの地位になりますよ」
「え・・・。そうだったんだ」
新たな他国事情を聞いて、なるほど、と頷くウェンディは、唖然とするサジを置いて、自分の部屋に足を戻した。
(新たな発見ってあるものね。それに、王子ってどんな方なのかな?)
ウェンディが自分の部屋につき、一度床に荷物を置いて、扉を開くとジンが、出る前に消したはずの暖炉の前で寝そべっていた。
「ちょっと。いつの間に帰っていたの?」
荷物をベッドに置くと、机の上に置いていた、小さな風車を回していた。それは、グリンに作ってもらったもので、風が吹けば回る仕組みのものを、と作ってもらったのだ。
さっきだ、と機嫌悪そうにグダッとしたジンの様子にいつもとは違う具合を感じていた。
「風邪でも引いた?お医者さんに見てもらった方がいいんじゃ・・・」
俺の心配はいいから、自分の心配しろよ、とウェンディの言葉を無理矢理遮った。
「そうだった。今夜はパーティーがあるのよ。だから、遅くまで帰ってこれないから、食べ物は置いていくから、早く寝てね」
ウェンディは、パタパタと、ベッドに一度置いたドレスを持ってジョージアの部屋に行くと言い、部屋を出ていった。
一人残されたジンは、だるそうに身体を持ち上げると、昼の明るい中を青く光る、月を見定めながらいた。
そして、次の瞬間には、部屋の中には、黒猫の姿は無かった。
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ゾリム王の第三子であるリチャード王太子は、王と正妃の間に生まれた唯一の子供だった。
先に生まれた二人は、流行り病で死に、リチャードを生んだあと、元々身体が弱かった正妃は、その後子供は生めなかった。
そのリチャード王子はというと、自分の知識を広げるためにと、自ら遠方へも向かったり、積極的に剣の技を磨いていた。
学識もあり、国中の有名な学者達から学び、王子と論ずることが出来る者は少ないとも言われる。
そのことからも未来を期待されていて、『漆黒の賢聖』と呼ばれていた。
「…と、有名な所はそんなところだ。まあ、私的な面で知りたければ、エレナに聞くといいと思うが」
「へぇ…」
ウェンディはあまりに凄い噂の王子に、驚いていた。
「でも、お前の兄は気が早くないか?招待も決まってないのに・・・・・・」
「いいえ。ウェンディは強制的に出席です!私からお父様にお願いしたのですから大丈夫ですわ」
突然ジョージアの部屋の扉が開いたかと思うと、そこにはエレナがドレスをきちんと着ていて立っていた。
「え。どういうこ・・・・・・」
「問答無用っ!ウェンディさんをお連れしなさい」
後ろに控える侍女に命じると、エレナも侍女達もニヤッと笑った・・・ようにウェンディには見えた。
「・・・ひっ!」
予想以上に強い力で有無を言わせず、あっという間にウェンディを連れていってしまった。
それについていこうとしたエレナは、後ろから名を呼ばれたことに気が付いた。
「どうせお前だけの企みじゃないんだろう?」
ややため息混じりのジョージアの言葉に、いつもの微笑みで仮面を着けた。
「・・・さあ?」
「お前がはぐらかす時は、大抵秘め事がある時だ」
しばらくそのままの微笑みでいたが、無理だと判断したのか、ふうっと息をつき、肩を竦めた。
「駄目ですね。ジョージアには隠し事が出来ないようです」
「それで、今回は?」
ジョージアは、椅子に座り直し、男物の下衣を履いた足を組んだ。
「ロジャーに頼まれたのたのと、伯父様からよ」
「陛下から?」
「何故かは分からないわ。でも、私もあの子は気に入ったから、此の役を買って出たのよ」
少し考えたようなジョージアは、しばらくして口を開いた。
「私は行く必要はないのだな?」
「えぇ。あ、ジョージアも来たかったかしら?」
「いや・・・。国立図書館に行ってくる」
長いコートを掴み、羽織ると、暖炉の火を消した。
そして、思い出したように部屋から立ち去ろうとするエレナに声をかけた。
「それと、そこの荷物をウェンディに持っていってもらえないか?彼女の兄からのドレスらしい」
近くに通りかかった侍女に運ぶ指示を与えているエレナの声を聞きながら、ジョージアは外へと向かった。
最初に、謝らなければいけないことがあります。
次回新キャラが出る、とか言っておきながら、出せませんでした(((・・;)
ごめんなさい。次回こそ頑張ります(;´д`)
次回の予告をしておくと
1.今度こそ新キャラ登場?(いや、断定しようよ
2.ジョージアさんの調べものとは?(入りきるかな・・・
3.パーティーでは、ウェンディ真っ赤に?!(まぁ、誰にとは言いませんが
そろそろ番外編(主にジンくん?かお兄ちゃん。)も書こうかなと思ってるので、次の次か・・・その次か・・・そのまた次か(いつだよ?!
ま、そんなこんなで早いうちには出そうと思います。
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