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二十六章

 頬を差すような寒さは、確実に冬に近づいていることを知らせていた。

 ウェンディは、あまりの寒さに、うっすら目が開いたが、それよりも眠気が勝っていた。

「うぅ・・・・・・ん・・・」

 もう一度寝ようと、もぞもぞと頭まで被ろうとした。が――

「・・・・・・っふぐーぅ・・・!」

 顔の部分に何かが乗っていた。

「ぷはっ!・・・また君か!!」

 ピョンとベッドの隣にある椅子に飛び移ると、黒猫は、素知らぬ顔で後ろ足で掻いていた。さっさと着替えないと、フリッツの魔術指導があるんじゃないか?、とチラッとウェンディに目を向けて言った。

「・・・あ。そうだった・・・」

 はぁっと深いため息をつくと、いつも着ている物の上にスカーフを何度か首に巻き付け、寒さ予防をしていた。

「集合場所は、屋外だって言うし。寒さなんか関係なく、全く容赦しなさそうだからね、あの人(フリッツ)」

 朝から確実にテンションが下がったウェンディだった。




 ウェンディは、集合場所にされていた、『練習場』への道が分からず、侍女や小姓に聞きながら、向かっていた。

「ねぇ、ジン。《風魔術》の練習って必要だと思う?」

 肩に乗っていたジンにふと尋ねた。

 さあな、だが《風魔術》は、必要になることになるかもな、と猫らしくない『眉間に皺を寄せた表情』になっていた。

「団長さんしか魔術団の中でできないって言うけど忙しそうだし、フリッツさんには、もってのほか教えてもらえないし・・・。あ・・・・・・ジン、この話はまた後でにしよう?」

 ウェンディの足は止まった。

 その視線の先には、フリッツが、ただでさえ寒い気温を下げてしまうような底冷えした白銀の瞳で仁王立ちしていた。

「遅いぞ。いつまで待たせるつもりだ。日が暮れてしまう」

 まだ朝です、と反論を口にしそうになったが、開きかけた口を閉じた。

 彼以外にその場にいる女性がいたからだ。

「あら。おはようございます、ウェンディさん。昨日は楽しめましたか?」

 ニコリと優雅に微笑んだ黒髪の、ウェンディより二、三歳ほど年上の美女は、昨晩とまた違う実用的な暖かそうな服を身に纏っていたが、貴族らしい雰囲気はしっかりあった。

「はい。・・・・・・って、エレナさん。どうしてこちらに・・・・・・?」

 うっかりエレナの朗らかな雰囲気に呑まれかけたウェンディだったが、どうにか持ち直していた。

「団舎(だんしゃ)に行ってしまう前に、貴女に会っておきたくてね?」

「はぁ……。ん?団舎(だんしゃ)って何ですか?」

 機嫌が悪そうに腕を組んでいたフリッツが説明した。

「王都駐在部隊の事は聞いているだろう。其(そ)の部隊には、近くの高台にある治療院の隣にある《魔術院》の運営をすることが仕事だ。それに伴って、近くにある棟(むね)に殆んどの団員は、暮らしている。其(そ)の場所が通称・団舎(だんしゃ)だ」

「私(わたくし)の場合、普段は此方(こちら)か、自分の城で暮らしておりますので、仕事に行くのですけれどね」

「そうですか・・・・・・」

 自分のような国境付近貴族(いなかきぞく)とは、違う雰囲気を醸(かも)し出すエレナに、唯唯(ただただ)凄いな、と感じていた。

「おい。ボサッとしてないで、さっさと始めるぞ」

「はーい・・・・・・エレナさんは?」

「私(わたくし)は、見てるわ」

 それまで浮かべていた自然な微笑みとは違う、何か哀しいことを隠すような微笑みがあったが、一瞬で消えた――否、ウェンディが見れなくなったのだ。

「・・・・・《ダーチィ》」

「どわぁ!」

 ウェンディの足下の土が穴が開いたように柔らかくなり、沈み込んだ土と共にウェンディは、落とし穴に填まっていた。

 不意討ちをしかけた相手は、穴を見下ろしながら、鼻で笑っていた。

「ふん。注意を反らすからだ」

「今のは明らかに話し中の所を狙いましたよね!」

 頬を膨らませて、見上げるウェンディは、目の前の土の壁に両手で触れていた。

「・・・・・・ハッ!お前もしや・・・!」

 ウェンディのその後のにやりとした表情に、フリッツは逃げようとしたが、遅かった。

「《ダーチィ》!!」

 フリッツの足元が一気に無くなり、フリッツの身丈の倍以上の深さの穴に落ちていた。

「要するにあれですよね。土の軟らかさを変えられる術なんですね」

 いつの間に穴から出たのか、ウェンディは服の土を払っていた。

「というわけで、今日『も』私の勝ちですね、フリッツさん。ジン、私ちょっと砂だらけだから、着替えてくる」

 穴に落ちる前に肩から飛び下りていたジンに声をかけると、エレナに軽く礼をして、練習場を後にした。

「・・・・・・フリッツ。『今回も』って、貴方、毎回負けてるんですか?」

 地面を硬くして、持ち上げたフリッツは、眉間に皺を寄せていた。

「・・・・・・あぁ。論理的に教えるのは何となく分かっているようだから、実際にやって見せている。口では、負けたことはないがな」

「・・・・・・口ではって・・・・・。貴方、そんなことでは、あの子(ウェンディ)は気づかないわよ」

「・・・・・・何にだ?」

 不思議そうに問うフリッツに、エレナは、肩を竦(すく)めてため息をついていた。




お久しぶりの後書きへのキャラクター登場です★


フリッツ:なぁ、作者。エレナが言った意味を教えろ。


教えろといわれても…。読者の皆さんは、分かってるかも知れませんから、改めて言う必要は…


フリッツ:ふんっ!


あ(汗)。そ、そんなに拗ねなくても・・・。


フリッツ:拗ねてなどいない。次回も楽しみに待っていろ。新しいキャラも出るからな


やっぱり拗ねてるでしょ汗。

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