二十三章
「・・・・・・たまにその夢を見るの」
ジョージアに事情を説明して、部屋に二人(と一匹)でウェンディの部屋に入った。
ベッドの上に荷物を置くと、ウェンディはジンを膝に乗せて、そのままベッドに座り、アランは書き物机の椅子に座った。ウェンディは、アランに促され、アランから別れたあと、そして『夢』の事を話した。
「ダーウィンにいた頃には見ていなかったのだろ?」
「えぇ。でも、どこかで見たことあると思うの、あの草原・・・」
「お前の《勘》の一部なのかもな・・・・・・」
「「・・・・・・・・・」」
二人とも真相が分からず、言葉に詰まったが、アランが話を変えようと口を開いた。
「……あ、そういえば、魔術団歓迎のパーティーには、出るのか?」
ベッドに座るウェンディは、ぶらぶらさせていた足をピタリと止めた。
「・・・・・・今何て・・・・・・・・・?」
「え?パーティーに出るのかって・・・」
ウェンディは、ドバッと立ち上がり、突然だったため、膝に座っていたジンは、床に落とされ、ふざけんな、と言っていた。
「何それっ?」
「聞いてないのか。魔術団の歓迎のパーティーだ。夜のパーティーに参加できる年頃の団員は参加すると聞いたが・・・・・・って、お前どこに行くんだ?」
ドアに手をかけていたウェンディは、あたふたしていた。
「ジョージアに聞きに行かなきゃ・・・・・・だってドレス持ってないもの」
そう言うと、アランとジンを置いて部屋を出ていってしまった。
アランは、暖炉の前で丸くなって寝始めた黒猫を眺めて、猫に話しかけていた。
「せっかく会いに来たのになんてひどい扱いなんだろうな」
まずアンタのその妹至上主義をどうにかしろ、銀色の目をチラッと開けて、ジンがボソッと言うと、反論した。
「失礼な!僕はウェンディが離ればなれになっていたことを寂しがっているに決ま……って………ん?…何で猫の言葉が分かってるんだ、僕…?」
ふと気がついた『事』に唸って悩み続けるアランは、サジの迎えが来るまでずっとウェンディの部屋にい続けていたのであった。
ウェンディは、隣のジョージアの部屋に行くと、すぐさま仕立てに向かった。
「パーティーは今夜だからな…間に合うかどうかは怪しいが、聞いてみる」
「あ、お願いしまーす」
最初は、女官長と話始めたジョージアの回りをうろうろしていたが、近くで裁縫をしていた初老のお針子の作業を見ていた。
「……ね、じゃあ此方の菫色のにするわ」
少し離れた所から若い女性の声が聞こえた。
「それでは、今夜には間に合うように致します、エレナ様」
「あ、急がなくていいわ。貴女方も忙しいでしょう」
優しげに言う女性の声に、ほっと息をつくお針子達の様子や相手の言葉遣いから、相手が貴族であることは分かった。
興味がわいたウェンディは、そっと服の間から、見てみようとしていた。だが
「うろうろするな、ウェンディ。初めて来たんだから」
後ろから来たジョージアに止められた。
「あ、ジョージア。で、どうだった、ドレスは?」
肩をすくめて、ジョージアは答えた。
「今夜に間に合うには、無理らしい。採寸もしてないお前では、型紙やら何やらから今からは、難しいからな。そうだな・・・兄がせっかく来ているのだから、ドレス姿も見せたいだろう。私のを貸そうか?本当は、体格の似ている者から借りた方が良いが」
ジョージアの申し出にウェンディは、考えてみた。
「・・・・・・ジョージアから借りるとして・・・・・・確実に背丈が違うから裾の長さは変わるし・・・胸も・・・うわっ、絶対着れない!」
ぶつぶつ言って、頭を抱えていたウェンディを不思議そうな顔でジョージアは、見ていた。
「おい・・・」
「私が貸しましょうか?」
先ほどまで自身のドレスを頼んでいた女性の声が後ろからした。
「え・・・」
ウェンディが後ろを振り向くと、侍女を一人連れた黒髪のレディがいた。気品が溢れ、黒い髪と同じくらい深い黒の瞳は知的で、好奇心を感じさせた。
「彼女に合うのは・・・そうね、紅の衣紋掛けにかかったのを取ってきてちょうだい」
はい、と言って駆け出した侍女を唖然としてウェンディは見ていたが、ジョージアはレディに話していた。
「悪いな、エレナ」
「そんなことないわ。それで、そちらの彼女は、騎士・アランの妹君という噂は、本当かしら?」
「あぁ。そうらしい。だろう?」
呼び掛けられて、やっとハッと気づくと、ジョージアに尋ねた。
「彼女はどなたなの?」
「エレナ。ヒャスヌ公爵家の令嬢だ」
(こ、公爵!)
ウェンディは、驚きで目を丸くしたが、エレナは、やんわり否定した。
「公爵令嬢って言っても、お父様が国王の弟だと言うですし。私も弟も魔術団に入ってるから、そんなに貴族のような事はしていないわ」
「え・・・ということは・・・」
「私は、首都駐在の魔術団員の一人よ。宜しくね」
にこっと微笑んだ。




