十四章
魔術指導が始まって数日たったある日。ウェンディは、アレニウスに呼び出されていた。
「《魔術》の練習は、順調かね?」
「はい」
どんな用件なのか分からずに、びくびくしながらいたため、少しホッとして答えていた。
「そうか。よかった、よかった」
孫に向けるような微笑を見せていた。
(あ・・・・・・そういえば・・・・・・)
ふとウェンディは、近頃思っていた質問を投げかけてみた。
「あの、質問なのですが、《魔術》ってそもそも何なのですか?」
アレニウスの顔に驚きが浮かんだ。
「おや?それは、教えられておらなかったのかのぉ」
「え、えぇ」
「フリッツもサファル出身じゃから、《魔術》が知られておるのが、普通じゃと固定観念を持っておるのかの。
それでは教えよう・・・・・・《魔術》の歴史を・・・・・・」
古の時代。
まだ世界に統治者がいない頃。
人は、《魔術》と呼ばれる能力は持っていなかった。
《魔術》が現れたのは、突然だった。
ある日。とある男は荒れ地に小さな木を見つけた。
その男は荒れ地に一本生え出ているのは、愛しく想え、毎日世話をした。
日が明けた頃は、嵐が荒れ狂うときには、倒れぬよう支えていた。
何十年も経った時には、男の膝丈ほどだった木も、身丈をゆうに越えるほどの大きさに育ち、男は老人になっていた。
老人は、病に倒れた。老人が来なくなったことを木は、悲しんだ。
何ヶ月も経ったある日。老人は、木に会いに行った。
死期を悟ったためだった。
老人は、木に言った。
(大きな大木になってくれ。そして、この世界を見守ってくれ)
木は、そのことを約束した。
そして、約束に実をつけた。
その実は、果実ではなく、光り輝く《宝石》だった。
老人は、数日すると、死んだ。
老人の心臓が止まった時。木から《宝石》が飛んでいった。
その《宝石》は、人々に力を与え、人々を守っている。
そして、この木は、大木に育っている。その名を『ジュネール』と言う。
話が終わったとき、ウェンディは、きょとんとしていた。
「・・・・・・え?昔話か何かですか?」
「そうじゃ。サファルの子供たちはこう教えられておる。この話は、《魔術》の成り立ちを伝えておるのじゃ」
「・・・・・・?」
「《魔術》は、神より与えられし業であるってことじゃよ」
「え・・・・・・神?」
ウェンディは、首をかくんと傾げた。
「《宝石神》は知っておろう。木の実は宝石、つまりは神より与えられし《魔術》であるのじゃ」
「な、なるほど・・・・・・」
アレニウスは、ウェンディに背を向け、壁にかかった大きな絵を見つめていた。
「・・・団長?・・・その絵は?」
「・・・あぁ。昔・・・五十年ほど前の東西戦争のものだ」
その絵は、たくさんの兵が血を流し、あちらこちらから炎や雷が出ている様子が描写されていた。
その戦争は、今世紀史上一番長く、無惨な戦争だった。
そのときには、生まれていないウェンディにまで悲惨さが伝わる絵だった。
(団長さん・・・・・・)
アレニウスが、哀しげな表情になっていることは、アレニウスの老いた背中から感じられた。
「この時の戦争では、たくさんの魔術師が、老若男女関係なく、戦力として徴兵された・・・。《魔術》を武力として国家に提供させられたのじゃよ」
「ぶ、武力って・・・・・・」
ウェンディは、青ざめてしまっていた。
「だから、ワシは戦後にこの魔術団を使い、神より与えられし業を人を傷つけるためでなく、人を助けるために組織されたのだよ」
振り返ったアレニウスの顔には、苦しげで、憎々しげで、哀しげな表情だった。
だが、その表情もウェンディが瞬きをする間に消えて、いつもの優しげな表情に戻っていた。
「《魔術》の細かいことは、フリッツに教えるように言っておこう。夕食を取りに行きなさい」
「は、はい・・・・・・・」
アレニウスのどこか普段とは違う雰囲気に戸惑いを覚えながら、ウェンディは、首を傾げながら、一礼して部屋を出た。
「母親そっくりだな・・・・・・」
ウェンディの出て行った扉を見つめると、書き途中だった手紙を書きに机に戻った。
作者:今回は、昔話編でしたぁ☆
ウェンディ:ダーウィンでは、伝わってなかった話が聞けて良かったといえばよかったんですけど・・・
作者:・・・ですけど?
ウェンディ:なんだか団長さんの様子が・・・
作者:それについては、後々書けるかな?それでは、次回もお楽しみに・・・♪




