7-パーティーナイト①
シンと静まりかえった会場の中で、ヴィルフレム王太子の手を打つ音が響く。
招待客の視線が集中する中、王太子が大振りのジェスチャーで話し始めた。
「さて諸君。つまらないものを見せてしまったな。
残念ながら我が婚約者殿は、革命家と親密な関係を築いていたようだ。
未だに混乱している御仁もいるやもしれぬ。
僅かではあるが、事の経緯を説明しよう。
ここ数年、我が国では近年稀に見る凶作に見舞われている。
それに伴い王家からの恩賞が減少したのは非常に遺憾ではあるが、皆の知るところである。
それに不満を感じていたある貴族が、数年前、王位簒奪を企てた。
その人物は、民衆の暴動に乗じて王位の簒奪を図ることにした。
彼の計画の為には、自分に従順な手駒が必要であった。
そして彼は、まさに手駒としてうってつけの人物を見つけた。
自分の娘と”偶然”知り合ったという、弁護士の青年だ。
青年は若くカリスマ性があり、多くの人から信頼されていた。
友も多く、何より平民でありながら非常に勉強熱心であった。
彼は、青年が何のために娘に近付いていたのか正確に理解していた。
しかし欲にくらんでいた彼は、あろうことか、国敵をも利用する。
彼は争いを引き起こそうと企む青年を支援し、駒を増やす事に決めたのだ。
しかしここで重大な問題に直面した。資金が足りないのだ。資金がなくてはどうすることも出来ない。
彼は結果として、とある国から資金を借りる事にした。」
話題の人物に一斉に視線が集中する。
しかしながら、その人物は一切声を発さないまま眼前のヴィルフレム王太子を睨みつけていた。
「すまないね、公爵。
非常に不愉快だと思うのだが、君の計画が破綻した以上、君は私にとって不利益しか齎さないだろう。
国家機密が漏洩する可能性を考慮し、拘束させて貰った。
今しばらくの辛抱だ、我慢してくれたまえ。」
「うっ、うわああぁあああああッッ‼︎」
公爵の横で呆然としていた彼の息子が親の危機に気付いたのか、拘束する騎士から掴まれていた手を振り解き、自らの両腕を自由にする。
「死ねッッ!!!」
そうして隠し持っていたナイフを、苦し紛れにヴィルに向かって投げる。
しかしそのナイフは、届く前に大きな火に包まれて霧散した。
いつの間にかヴィルを守るように立ちはだかり、右手を掲げて魔術を行使した彼女の瞳が金色から元の蒼に戻る。
「お怪我は御座いませんか?」
「ああ。良くやったマリアンナ。」
ここで会場の皆が理解する。
彼女は王太子の恋人なんて存在では無い。
彼女は彼の側近の護衛なのだ。
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