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SAMONNER  作者: churunosu
12/14

力が欲しい。

今回短いです。

小町さんに真相を聞いた次の日、私はレイジさんと授業が終わってから、一緒にアメルさんの家にいく約束をして学院で授業を受けています。


「おいおい、剣先で俺の斬撃が受け止められると思うなよ?」

「くっそ、フッ!」


とはいっても、ほとんどの授業が一緒なのでいつでも話せるのですが。

今日は外は雨なのでドームの中での授業です。

ああ、今日も素敵だなぁ。

ピンチになっても、いつでも乗り越えられる鋭い観察眼と強い精神力を持ったレイジさんはすごく頼りになります。


・・・そう、頼りにしてばっかり。


今のところ他にレイジさんを狙っている人はいないので、焦らず慎重に進めるべきなのかな。

胸を揉まれた時は本当の所・・・少し嬉しかったです。

レイジさんの暖かい手の温度が、今でも胸に残っています。


「ほらほらもっと強く、受け止めると同時に弾き返す!

相手に近づかれたら終わりだぞ?そら!」

「ぐはっ!」

「はい、お前の負けだ。館内10周、急いでいってこい!

次、ハヅキ来い!」


鬼かよ・・・。そう呟きながらレイジさんが走っていきます。

一緒に頑張りましょう。

心のなかで励まして、私はアルゴ先生に剣を振るいます。


カンカンカン!


鈍い音をたててアルゴ先生の繰り出す残撃を受け止めていきます。


「軽いな・・・。」

「ツッ!」


先生が思わず口に出した言葉が私の心に突き刺さりました。

やっぱり私はレイジさんに迷惑を掛けてばかりいるんじゃ・・・。

そう思った瞬間、様々な光景が浮かんでは消えて。


初めて会ったとき、いきなり悪口をいって困らせた事。

奴隷商人に誘拐されそうになった時、助けてもらった上に怪我をさせたこと。

私はレイジさんに何も返せてない。


考え事をしていると、頭上から剣が降り下ろされます。

考え事をしながらじゃ怪我するだけ!

相手の足に注意しながらそれを跳ね返して、斜め上からの一撃。

頭のなかに浮かんだ不安を振り払う思いで、強く鋭く振るう。

すると!


パキィィィィィン


室内に甲高い音を響かせて、ナイトソードが半ばから折れる。

私は宙をクルクル回り床に転がる、ヒビの入った刃をぼうぜんと見つめました。


「あー、あれだな。お前は得物が合ってない。

もっと自分に合うヤツを選んだらどうだ?」


アルゴ先生の言葉が聞こえるが、信じる気になれない。

武器のせいとかそんなんじゃなくて、ただ、私、には、


実力がない。


レイジさんの使うアトラント流も、観察眼もなく、

この手にあるのは中途半端な力とフォルトラ流だけ。

ああ、近くにいても迷惑なだけなのかな・・・?






ハヅキが元気ないな、何かあったのだろうか?

俺の隣で歩くハヅキを心配しつつ、まずはアメルの家に小町のことを話しに行く。

時刻はもう5時。

ハヅキに合う新しい両手剣を探すのに少し時間がかかってしまった。

日が長くなっているせいで時間の感覚がずれてきている。


(なぁ、ハヅキ元気ないよな。)

(はい、私もそう感じます。体調がすぐれないのでしょうか?)


もうすぐ夏本番だというのに、ベージュのコートと赤いマフラーという場違いな格好をしているエクリプスも、ハヅキの隣で心配そうに見つめている。

エクリプスの寒がりも心配ではあるが。


(ま、これで金貨30枚はいただいた。)

(3日で30枚はうれしいですね。)

(ああ、少しは贅沢できるんじゃないか?)


最近気づいたのだが、異変解決以来の報酬は割と高いものが多い。

冒険者たちは脳筋が多いのか、あまりやりたがらないのである。

もういっそ探偵になってしまおうか?

そんなことを考えていると、


(なんでしょうか?少し焦げ臭いですね。)

(は?おいおい、雨が降った後だぞ。)


まだぬかるんでいる地面に目を向けながら、俺は聞く。

エクリプスは鼻がいい。

犬並みの嗅覚をもっている気がする。


ふと、横から話し声が聞こえてきた。


「なあ聞いたか、昨日公園の桜の木が燃えてたらしいぜ?」

「へぇ、雷でも落ちたの?」

「いや、なんか悪霊が取りついてるとかで、アイゼン邸の主人が燃やしたらしい。」

「あの木、結構好きだったのにねえ。」


なっ!

俺は思わず耳を疑った。

小町が燃やされた!?


脳が言葉を理解する前に走り出す。

ハヅキとエクリプスも後からついてくる。


公園に落ちていたのは、炭と化した真っ黒な桜の残骸だった。






レイジさんの後を追って公園に来た私の目に飛び込んできた光景は、見るも無残な桜の残骸。

悲しみよりも先に怒りが脳を支配する。

メイドにしていることといい、許せない。

(きびす)を返して走り出す。


「あ、おい!」

「先に行ってます。」


新しく買った剣を肩にかけなおす。


役に立ってみせる!




遮蔽物のない広い芝原の上をできるだけ怪しまれないように歩く。

門の前で門番に止められる。


「依頼は解決されたはずですが?」

「別件です。」


言うが早いか門番の剣をはじき、声が上がらないように足で胸のみぞおちを蹴りつける。

慣れていないのだろう、門番は扉に体を打ち付けて気絶する。

扉はくぐらずに崖から飛び降り防御魔法を発現、空中を渡って屋敷の裏に回る。

屋敷の前の庭には昨日はいなかった黒服の男が20人以上、やはり正面から入らなくてよかったと胸をなでおろす。

海の見える景観を重視したのだろう、やはり崖の裏手に壁はなく、そして見張りもいない。


「フーッ、」


深呼吸して息を整える。


「ハッ。」


水魔法で窓を枠ごと吹き飛ばして館の中に急襲する。

これで屋敷に異変が起こったことは気づかれた。

ここからは時間との勝負!

クラッドの部屋を見つけるために廊下を走り出す。

最初から目星をつけていた廊下の一番奥の部屋に突っ込む。


当たり(ビンゴ)


そこにはクラッドと、それを囲むように立つメイドの姿。


「フン、来たか。

だがな、小娘一人にできることなど限られているぞ?

どうだ、俺のメイドにならんか?毎晩イキ狂わせてやるが。」

「お断りよ、豚野郎。」


以前の口調で返答する。


「フッ、そうか。」


それが合図だった。

立っていたメイドたちが私の周りを囲む。

3人の手にはダガーが握られている。

右後ろにいたメイドが切りかかってくる。それとほぼ同時に残り2人も切りかかってくる。


最初に攻撃してきたメイドの横をすり抜け、足を踏んで背中を押しだす。

倒れこむメイドを避けてほかの二人が切りかかってくる。

一つを防御魔法で受け止め、もう一つを剣ではじく。

ナイフを失くしたメイドは素手で殴りかかってくる。

心得があるのだろうか、いきなり動きがよくなる。

身体強化魔法!

何より彼女の体は魔力が通っているので防御魔法が1度しか効果をなさない!


防御魔法、その正体は魔力を込めれば込めるほど物理攻撃に強くなり、その魔法陣に注いだ魔力で相手の魔法を中和する障壁。

魔法陣に注いだ魔力が相手のぶつけた魔法より多ければ再び使えるが、少なければその魔法を打ち消したのちに消えてしまう。

相手の魔法を中和すればするほど障壁はもろくなってゆき、デコピンで砕けるようにもなる。

この魔方陣に対して最も効果的なのが素手で殴ること。

体内にとおった魔力で、必要最低限の量を魔法陣の破壊にまわせるからである。


水魔法で水を高圧で打ち出しながら剣で斬っていく。

高圧の水が二人のメイドの太ももを貫く。


最後の一人、素手で殴りかかってきたメイドはそのすべてを防御魔法で防ぎ、接近してくる。

剣は邪魔なだけだと悟り、背後のデブに放る。


「ぐあああぁああ!」


デブの肩に剣が突き刺ってデブがうめき声をあげる。


突き出されたメイドの右腕をつかんで腹に膝蹴りを放つ。

左手で受け止められ、左の軸足を払われる。


しまった!


慣れない素手での殴り合いをしたせいか、支えるものの無くなった体が宙に浮かぶ。

いつの間にか手から離れたメイドの右腕が、私の首をつかんですさまじい勢いで宙に浮いた私を地面にたたきつける。

地面にたたきつけられて遠くなっていく意識の中、私はメイドの足元に見なれない魔法文字が刻まれているを見つける。

あの字を使うのは、禁止になった、奴隷契約・・・




私は意識を失った。






ここは・・・


「ああ起きましたか、ハヅキ様。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「まったく、侵入者を排除するために雇った見張りが空気同然とは、雇った意味がないではないか。」


あの竜人が攻めてきた時を考えて、万全の態勢で待っていたのだが、人ひとりに対してほとんど機能していない。

門番が倒されたと()から報告が来ただけである。

普段は雇わない屈強な男たちを30人も雇った。

にもかかわらず、このありさまだ。

次、警備会社が電話をかけてきたら絶対に文句を言ってやる。

そう心に決めて、俺はメイドに指示を出す。


「おい、倉庫にしまってあるあれを出せ。」

「えっ、あれ・・・でございますか?

しかしもったいないからと・・・」

「そうだ。いいから屋敷のホールにおいておけ。」

「・・・かしこまりました。」


高い金を出して買った王国の最新武器だ。

あのくそガキが来たらたっぷりと味あわせてやろう。


「それにしてもあの娘、なかなかいい体つきをしているな。」

「奴隷刻印の準備には奴隷商人が必要ですが?」

「そんなことはわかっている。今から呼べばいつになるだろうか?」

「3日後かと、彼らは王都に身をひそめていますので。」

「電話しろ。」

「かしこまりました。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ここにはハヅキ様は来られておりません。」


見え透いた嘘を・・・。


「くそ、帰るぞ。」

「主、いかないのですか!?

こんな見え透いた嘘、私の闇魔法で悪夢を見せて吐かせればいいではありませんか!」


魔法の中には相手の魔力に関係なく発動するものがある。

回復魔法(ヒール)や闇魔法の悪夢(ナイトメア)、付与魔術の強化(フォース)などだ。


エクリプスが驚いた顔で聞いてくる。

それを聞いて門番が震え上がって扉の中へ逃げ込む。

いや、仕事放棄しちゃダメだろ・・・。

俺は黙って屋敷に背を向ける。




エクリプスはまだ語りかけてくる。


「なぜです!今すぐにでもあの屋敷をつぶしましょう!」


俺だってつぶしたい。

だが、伯爵に喧嘩を売って、タダでは済まないだろう。

何かそうする理由が必要になる。

それにさっきから感じるこれは・・・


「いや、準備をしてから出直そう。

それにあいつの性格からして、ハヅキを殺すとは思えない。

牢屋に閉じ込められているとかそんなところだろう。」


メイドに手を出すやつだ。ハヅキに命の危険はない。

貞操の危険は保障できないが・・・。






突入は、明日。

読んでくれてありがとうございます。

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