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【休載中※第2幕執筆中】Re:Call  作者: 織姫
第8話 Re:Call

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Re:Call②

 

そして――


「最後まで、一緒に楽しもう!」


 前奏と合わせて聞こえた紬の声。同時に彼女たちをシルエットにしていた逆光がふっと消えた。直後、正面から強いライトが照射される。それまで影に隠れていた五人の顔が初めて客席に晒され、観客からは悲鳴に近い感嘆の声が上がる。

「ひとまず成功ってことですかね」

「そうですね。それにしてもすぐ【Re:Light】だとわかるものなんですね」

「ウチの子たちを侮って貰っては困りますね。あの子たちはあたしが大切に育ててきた子たちなんですから」

 音響ブースから【Re:Light】の演奏を見つめる俺たちはサプライズの成功を確信した。

 誰かが中心になっている訳じゃない。紬や白峰さん、他のメンバーもみんな五人が一つの曲を作り上げている。紬が言っていた全てが一つになって初めて『曲』になるという意味がわかった気がした。

「今日のあの子たち。すごく楽しそう。あんなに楽しそうにしているのは久しぶりに見ました」

 ふと横を見ると榊さんは目を細め、感慨深そうに紬たちを見ていた。これが紬の本当に最後のステージになるのだと実感しているようだった。

 ステージの中心に立つ紬は時折マイクスタンドを両手で握りながら歌を紡いでいく。白峰さんたちが紡ぐ曲に乗せ、紬自身が書いた詩を音にしていく。その姿は輝き、俺の知らない夜凪紬がいた。

「すごく輝いてますね。あんな姿見るの初めてです」

「その輝きを作ったのはあなたですよ」

 あなたがこの話を持ち掛けなかったらいまの輝きはありません。そう微笑む榊さんは「やって良かった」と本音を漏らした。

「社長たちを説得するのは大変だったんですよ? でも絶対あの子たちの為になるからって押し切って正解でした」

 軽い口調で話す榊さんだが間違いなく骨を折る仕事だったのだろう。いまさらながら無茶を言ったことを申し訳なく感じる。

「まぁ、失敗したら費用は全部請求するつもりでしたけど。でも、その必要はないみたいですね」

「ハハ……それは良かったです」

「藤城くん。あの子たちに、紬にこんな素敵な機会を作ってくれてありがとうございます」

 礼を言うのはこっちの方だ。改めて礼を言おうとしたら榊さんは首を振り、いまはあの子たちを見守りましょうと言う。ちょうど一曲目が終わるところで白峰さんが奏でるリードギターの音が鳴り止むと同時に拍手が沸き起こる。その喝采に応えるように紬がマイクを握る。

「びっくりした?」

 マイクを握った紬が最初に発したのは意外な言葉だった。観客たちの反応を楽しむように紬の顔は笑っている。

「改めまして、私たち【Re:Light】です!」

 バンド名を名乗ると同時にドラムが響き、紬たちを照らすライトが一段と明るくなる。観客たちも一段と大きな声援を送る。ここが学校の体育館の中だとは思えない熱気に包まれている。

「……えっと、皆さんはもう知っていると思いますが私、夜凪紬は八月に【Re:Light】を卒業しました。いまはこの学校に通っています」

 説明だけはするべきだ。そう思ったのだろう。歓声が止まぬ中で紬は静かに今回の経緯を語り始めた。

「このシークレットライブも実は先週決まりました。卒業ライブを開けなかった私のためにみんなが用意してくれました」

 みんなと言うのはおそらく白峰さんたちのことだ。その中に俺は入っていない。それで良い。紬は俺が仕掛け人だとは知らないのだ。白峰さんたちが紬のために用意したライブで良いのだ。

「今回のライブは私の都合を優先して計画されました。シークレットライブという形になったのはそのためです。あくまで文化祭を楽しんで欲しい。そう願って事前告知なし、一日限りのライブを計画しました」

 この辺りの説明はたぶん榊さんが台本作ったんだろうな。普通に考えれば今回のシークレットライブはツッコミどころ満載だもんな。

 全国の《Lighters》には悪いが今日はあくまで文化祭だ。ここにいる観客たちには全員同じ夢を見たってことにしてもらおう。そんなことを思いながらMCを続ける紬を見ていると彼女は少し照れたように笑っていた。

「本当はちゃんとさよならを言う機会を作りたかった。だから今日は私にとっても、みんなにとっても特別な日にしたい!」

 紬が叫んだ刹那、前触れなく曲が始まる。二曲目の始まりだ。

「聞いて下さい―Sparkle―」

 音楽番組で何度も耳にしたことがある。夕月もライブの定番だと言っていた曲だ。

 明るいギターの音にドラムとベースギターが重なり、ライブハウスと化した体育館に広がっていく。そこへ紬の歌声が加わることで観客たちは完全に【Re:Light】の虜となった。

(すごい迫力だ。あいつの歌声に引き寄せられていくようだ)

 紬の歌声に引き寄せられてしまう。そう夕月が紬の魅力を語っていたことがあったがその意味がわかった気がする。曲の構成とかギターの技術とか正直俺にはわからない。ただ聴いていて楽しい。それだけは言えた。

(俺だけが音響ブース(特等席)から見れて申し訳ないな)

 浩一も夕月を連れてステージイベントには来ているらしいが何処にいるのだろうか。あいつらくらいはと贔屓したいが何処にいるのか見当がつかない。

(夕月のやつ、絶対泣いてるよな)

 まさか紬が一日限定で【Re:Light】復帰しただけでなく、歌っているところを生で観れてるんだからな。きっと号泣してるだろう。そんなことを思いながら紬の歌を幼馴染として、夜凪紬のファン第一号として楽しむ俺。ちなみにファン第一号と言うのは自称だがその称号は誰にも譲るつもりはない。紬のファン第一号は俺だ。


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