幕が上がるまで②
ライブ当日の流れがメッセージアプリで届いたのは二十二時を少し過ぎた時だった。
白峰さんから送られてきたメッセージによれば、ライブは予定されているプログラムが終わった後に四曲程度を演奏するらしい。音合わせの時間が無いから定番曲で固めるらしい。それにしても定番なら一発勝負が出来ると言い切れるところがすごい。
「プロってすげぇな」
この感じだと紬ともうまく連絡を取れているみたいだ。相変わらず紬はなにも言ってこないが裏では一人練習とかしているんだろうな。そういえば今日も授業が終わると夕月を連れてさっさと下校してたな。もしかして一人で練習は嫌だから夕月を巻き込んでいるのか? いや、もしそうなら夕月が狂喜するだろうからすぐにバレてしまうか。
「ま、当日のお楽しみってやつだな」
紬の歌声が人を魅了することは知っている。夕月から聞いたからではない。
あいつの明るく芯のある歌声は時に力強く、時に儚く曲を染め上げる。テレビの画面越しでも感じた魔法を間近で感じられるのだ。発起人だからではなく幼馴染として、そして紬を推す一人の《Lighters》として楽しみだ。それは事実だが……
「掛かってこないな」
首を傾げるのはいつものように紬から電話が掛かってこないからだ。
俺から掛けることもあるが別に毎日電話すると約束している訳ではない。それでも毎日電話していると日課をやり残しているような感覚に陥り、妙に心がソワソワして落ち着かない。
(ま、こういう日もあるよな)
きっと白峰さんたちと連絡を取り合っているのだろう。そう思うことにした俺はスマホを枕元に放り投げる。
――文化祭終わるまで電話できない。ごめんね。
紬からのメッセージに気付いたのは翌朝。夜中に送られてきたその文言の意味にこの時はまだ気づくことが出来なかった。




