143話 ヘドロができちゃう
私は知育玩具と教育道具、まずどこから手をつけるかをゆっくり考えようと思った。
一朝一夕でどうにか出来るとは思ってないもん。
朝食の席でお義父さまに私が思いついたことなんだけどってジュリアスさまがちょっと話したら、
「クラウス、お前がリーシャちゃんの手足となり整えてやれ」
ってお義父さまが決めちゃった。
ジュリアスさまは領主兼グレーデン騎士団総帥で、セリウスさまは現在は騎士団幹部らしいの扱いで、クラウスさまは今後内政を任せていくことで足場を作る予定だったからちょうど良かったらしい。
もちろんクラウスさまも騎士団では中隊長扱いで結構な強さなんだって。
婿に出ないなら領地領民の役に立てということで。
騎士団に籍を置くのはここグレーデンの地が辺境で、いざとなったら戦いに参加するからなんだろうけど、内政もやれって貴族のお家なのに手厳しくない?普通?
学園の普通科での同級生たちってあまり熱心に勉強してなかったし、のほほんとした雰囲気だったけど卒業後はダブルワークでバリバリなんだろうか?
ジュリアスさまもトリプルワークくらい抱えてるから高位貴族家の子供で生まれ育つのって大変なのかも。
「リーシャちゃんは午前中はお勉強だからクラウスは午後に離れに行ってあげてね」
「はーい。よろしくね。リーシャちゃん」
クラウスさまは騎士の訓練を楽しそうにしてるからデスクワークは嬉しくないんだろうに明るく快諾してくれた。
「リーシャちゃんの思いつきは面白いから何が出来るか楽しみだね~」
あれ?なんか楽しまれちゃってる。
みんな好奇心旺盛でフットワーク軽すぎて困っちゃうよ!
なんとなく解せない気持ちで離れでのお勉強に向かう。
「それでリーシャさまはいったいどんなことを思いついたのですか?」
ここでも好奇心強めの人たちに囲まれてるんだった。
そうだよ、教授たちは教育のプロたちだから頼れば良いのだ!
「まだ何も構想が練れてないので少し形が出来たら相談に乗ってください~」
すぐさまとか翌日に始めるとか思ってないから!
いっぱい質問攻めされてから調薬の訓練が始まる。
傷薬はどうしても仕上がりが上位互換になっちゃうけど、今日は疲労回復?日本の感覚でいうと風邪薬って言うか葛根湯くらいの役目な薬に挑戦。
ドゴン!!
薬草をすり潰して使ってるのになぜか塊が爆発したみたいな感じで破裂したよ。
「・・・なぜ」
「逆に器用じゃなぁ」
自分の教育もままならないのに人の教育について考えてごめんなさい。
ワタシハチリアクタナゴミニモナラナイクズ……
爆発四散したので何も仕上がらない。
材料が無駄になっただけ。
リックさまがお手本に作ってくれたのは薄いグリーンの透き通った液体なのに。
私が使った道具に飛び散ったのはヘドロだよ。
良薬口に苦しって、苦そう以前の出来。
おかしいな。お母さまが作ってたのを思い出してみてもリックさまの手順と同じ、私も同じようにやったはずなんだけどな。
3回試してちょっとずつ爆発の規模が違う程度で全部失敗。
調薬の才能がないんだよ。これは。
「ちょっと一緒にやってみましょう」
リックさまが私を抱っこして後ろから二人羽織みたいな感じで作業してみる事に。
材料を測ってすり潰して、魔力を込めて混ぜるときにリックさまの魔力が私の手を通って、薬がまとまっていく。
爆発はせず、綺麗な濃いめのグリーンな薬が仕上がった。
「あー……リーシャさま、魔力が貯まりすぎですね」
んん?
「発散していないから引き出そうとした時に物凄い勢いで出てきてしまうようです」
え?
「これで暴走していないのが不思議ですが、制御はできているのか?だが今のようにいざ魔力を使う時に一気に出るようです」
リックさまが考え事をしながらブツブツつぶやくように話す。
「ほう?普通にしていると魔力過剰には感じんがどうなっておるんじゃ?」
カンダルー教授が聞くとリックさまが私の額や首、手首などに魔力を通して調べてる。私がちびっ子じゃなかったらセクハラ行為だぞ!
「詰まってる訳ではなさそうだから問題が起きるわけではなさそうですがこれでは簡単な調薬ではコントロールが難しいかもしれません」
「ハイポーションを作るくらいのが楽なのかの?」
「だからミスリルなど扱っても平気なのか?」
リックさまたちが検証を始めてしまった。
まず私を降ろしてくれ。
ちなみに出来上がった薬は疲労回復薬の三倍くらい効果があるらしく、一週間くらい寝なくても元気モリモリとか言う意味のわからない代物だったよ。
寝ないなんてダメだ。睡眠大事。
お昼のお弁当を食べたら、クラウスさまが早速やってきた。
私は完全に1人で引き篭もって物作りに没頭したいんだけど、そんな機会は持てそうにない。ニーナだけはつけていないと心配されちゃうからしね。
「今日は何をするの~?」
クラウスさまにはとりあえず、木材や文字書きが出来るものが欲しいことを伝えた。
やっぱり石板くらいしかないみたいなのでそれを人数分と石板の大きいのが欲しいってお願い。
「あとはグレーデン領で採れる食物、生き物とか書き出して欲しいのと絵が描ける人を探して欲しいかな」
ちなみに私が使ってるのはちょっと粗い和紙みたいな繊維が丸見えな紙。
メモくらいに使われてるもの。
魔導書の翻訳とかちゃんとしたお仕事には羊皮紙みたいな皮製のものを使ってる。
「木工職人は兄上が手配するって言ってたから絵描きだね~」
「絵描きほどじゃなくても果物とか描ける人で大丈夫ですよ」
「んー?」
私は表に絵描いて裏に説明や注意を書く絵札?の説明をした。
「食べて良い草や毒のある草を覚えるためのカード?です」
「へぇ」
「私が野草を覚えたいと思った時に見た目も名前も実物を見て覚えるしかないと知って、でも私は滅多に森に行けないでしょ?」
「なるほど、現場に行かなくても姿形と名前を覚えられるんだね」
あとは箱に仕切りを置いて木の実を一列五個はめれるようにして、木の実を入れたり出したりして数を数える説明。
そろばんのように一列で十を表した方がいいかな?
最初はおチビさんたちが両手で数えるくらいの計算でいいよね?
「これが遊びながらって意味なんだ~」
クラウスさまが木の実をはめ込みながら考え込んでる。
「文字もカードの応用で食べ物とかの読み方で覚えるのが早いと思うんです」
カルタみたいにことわざとかのがいいかな?
「僕の時はハロルドやロジャーが本読み聞かせしてくれてそのあと音読とかで勉強めんどくさいと思ったからこれだと気軽かもね~」
え、ロジャー先生のイケボで読み聞かせ、ウラヤマシ~。課金してでも聴きたいぞ。あのボイスで囁かれたい。
「でもクラウスさま、まだちょっとしか思いついてないのにクラウスさま巻き込んじゃってごめんなさい~」
「あはは。いいよ~こういうことがすぐ軌道に乗るとか誰も思ってないよ。人生かけてやっとカタチになっていくんだよーって僕らみたいな若輩が言うことじゃないか」
クラウスさまがアランたちと植物とこの近隣でよく出る獣、魔獣を書き出してくれる間に私は九九表をメモに書いた。
大きい木板に字の上手い人に描いてもらおう。
同じように文字表も書く。この国の文字はルーン文字に似てるからアルファベットみたいに一種類で済む。日本語とかだったら漢字ひらがなカタカナって面倒で大変だったろうな。
「この数字のどうなってんの?」
「掛け算の早覚え?です」
クラウスさまは一の段から三の段くらいまで目で追ってみて計算が当てはまるのを理解して驚いたらしい。
「はー、これは覚えやすそうだね~」
「リーシャちゃんにはビックリさせられてばかりだよ」
って言われて思い出した!
ルルゥにビックリ箱を見せるんだった。
クラウスさまはまだ植物とかを書き出してるから私は作業部屋にある端材から木箱を作って、中に飛び出すのは前に鍛治師さんにスプリングを作ってもらった時の見本でミニサイズのがあったからそれを布で包んで飛び出した時に散らかるように花びらを仕込んで。
一番簡単でシンプルなのだけど許して欲しい。
ルルゥのビックリさを思うと木の実や匂い玉でも入れたいけど危ないからね。
時間になったので本邸に戻る事に。
なぜかクラウスさまの抱っこです。
「リーシャちゃんはまだまだ軽いねぇ!もっと食べないと~」
いや多分王都の令嬢より食べれるようになったから!
「知ってる?学園の令嬢たちってさ、人前じゃあまり食べないけど家じゃ貪り食べてるって感じなんだってさ、姉妹がいると夢が見れないとかよく愚痴られてたよー」
いやそれはきっとレアケース……
「なんかさ~コルセットってキツいんでしょ?無理して締めてるって言うんだよ。細くいるために食べたら吐くんだって~もったいないよね~。食料に困ったことがないんだろうねぇ~」
うーん?吐いて維持は嫌だな。キミーがどうしてたか全然思い出せないけど何かの時に見かけた食事タイムは確かに暴食気味だった気がする。
って言うかクラウスさまも、ジュリアスさまやセリウスさまと同じで取り繕わないと言うか、デリカシー無しだー!
「母上ほどは無理だろうけどいっぱい食べなよねー」
お義母さまは別腹でケーキを五ホールはイケる人だから真似は無理。
あれ暴食の範囲じゃないんだ⁉
屋敷に着いたので私はアランに渡されて一旦着替えに部屋に戻った。




