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仮面勇者  作者: Toooji
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第十三話 討伐軍との出会い


チャイムの街を出てから、セレナは再び街道を歩いていた。


魔法使いの手がかりは、相変わらず少ない。


森で見つけた紙片についても、それが何らかの魔法に関係しているらしいということだけだった。


「……もう少し、別の場所も調べてみるか」


独り言をこぼし、街道脇の草むらへ目を向けた、そのときだった。


遠くから、金属のぶつかり合う音が聞こえた。


続いて、男たちの怒号。


セレナは剣の柄に手をかけ、音のする方向へ走った。


街道から少し外れた開けた場所で、数人の兵士たちが魔物の群れと戦っていた。


相手は、狼に似た姿をした魔獣だった。普通の狼よりも一回り大きく、鋭い牙と爪を持っている。


兵士たちは互いに声を掛け合いながら戦っていたが、魔物の数が多い。


一体を押さえ込んでいる間に、別の一体が背後へ回り込もうとしていた。


「右だ! 後ろに回らせるな!」


指揮官らしい男の声が響く。


しかし、その声に反応した兵士が振り向くより早く、魔獣が地面を蹴った。


「危ない!」


セレナは駆け込むと、兵士と魔獣の間へ滑り込んだ。


振り下ろされた爪を剣で受け流し、魔獣の懐へ踏み込む。


すれ違いざまに刃を走らせると、魔獣は地面に倒れた。


「助かった!」


兵士が叫ぶ。


「まだ来るぞ!」


セレナは答える代わりに、次の魔獣へ向き直った。


剣を振るうたび、魔獣の動きが止まる。


力任せに押し切るのではなく、相手の動きを見極め、攻撃の隙を突く剣だった。


やがて、残った魔獣たちは仲間の死を察したのか、森の奥へと逃げていった。


戦場に静けさが戻る。


セレナは剣についた血を払い、兵士たちを見回した。


「怪我はありませんか?」


「おかげでな。あんた、旅の剣士か?」


「はい。魔物は少しだけ退治したことがあるだけですが」


「少し、ねえ……」


兵士は倒れた魔獣とセレナを交互に見た。


そこへ、先ほど指示を出していた男が歩み寄ってきた。


年齢は三十代ほど。


身体には無数の傷が刻まれていたが、立ち姿には無駄がない。


片目を失っているが、鋭い目つきで、左腕は肘から先がなかった。


しかしその表情には人を威圧するような険しさばかりではなく、どこか親しみやすいものもあった。


「俺はヒイラギ。この討伐隊を率いている」


「セレナです」


「助太刀に感謝する。見たところ、まだ若いようだが、なかなかの腕だな」


「ありがとうございます」


「このあたりは魔物の出没が多い。ひとりで旅をしているなら、苦労も多いだろう」


ヒイラギは少し考えるように顎へ手を当てた。


「どうだ。しばらく俺たちと行動を共にしないか?」


「一緒に、ですか?」


「ああ。魔物討伐の仕事がある。腕の立つ傭兵はいつでも歓迎だ。もちろん、働いた分の報酬も出す」


セレナにとって、願ってもない話だった。


旅を続けるには金がいる。


それに、討伐隊なら魔物の情報も集まりやすい。


魔法使いについて何か知っている者に出会える可能性もあるだろう。


「……ぜひ、お願いします」


「よし。決まりだ、今日からでも頼む」


ヒイラギは笑って右手を差し出した。


セレナは一瞬だけ戸惑ったあと、その手を握り返した。


「よろしくお願いします」


「こちらこそだ。ところで、ひとつ聞いてもいいか?」


「はい」


「その仮面、ずいぶん年季が入っているな。顔に傷でもあるのか?」


セレナは仮面に手を触れた。


「いえ。これは……旅のお守りのようなものです」


「そうか。なら、無理には聞かん」


ヒイラギはあっさりと話を切り上げた。


「さあ、戻るぞ。こいつらの素材も回収しておけ。せっかく倒したんだ、無駄にはできん」


兵士たちが動き始める。


セレナも彼らに続いた。


魔法使いを探す旅は、まだ続いている。


けれど、今日からは少しだけ違う旅になりそうだった。


ひとりで歩いてきた道が、少しだけ賑やかになりそうだった。


*


討伐隊の仮設陣地へ戻ると、セレナは兵士たちから次々と声を掛けられた。


「さっきの剣、どうやって振ってるんだ?」


「いや、あれは相手の懐に入るのが早かったんだよ」


「お前、仮面の下もそんなに涼しい顔をしてるのか?」


「……どうでしょう」


答えに困ったセレナを見て、周囲から笑い声が上がった。


その輪の向こうで、ヒイラギは静かに彼の様子を見ていた。


剣の構え。

敵との間合いの取り方。

そして、あの秀でた戦闘センス。


どこかで見た景色を思い出させる。


「……いや、まさかな」


ヒイラギは小さく呟き、すぐにその考えを振り払った。


今はまだ、確かめようのないことだった。


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