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奴隷市場から始まる異世界冒険譚―第二部エルフ王国編  作者: たーけし
北部の英雄

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フウの景色

王都、アルフォンス第二王子の離宮。

今日も、王都は平和だった。

「ふぅー。」

小さなオーガの子供、フウは目を覚ます。

知らない天井。

いや、少しだけ知っている天井だ。

赤いのがいる。

「おはよう、フウ。」

あかいの。

りでぃあ。

だっこしてくれる。

やさしい。

でも。

「ふぅ?」

鼻をふんふんと鳴らす。

いない。

黒いのがいない。

いつもいた。

一緒に寝て。

一緒にご飯を食べて。

一緒に遊んで。

一緒に木の棒を振っていた。

「シフォンたちなら、旅に出てるよ。」

めがねが言った。

ふぅ。

わからない。

でも。

いない。

部屋の隅。

見たことのあるものがあった。

「ふぅ。」

とことこと歩いていく。

木の棒。

黒いのが、いつも振っていた。

ぶん。

ぶん。

ぶん。

速かった。

「ふぅ。」

持ち上げようとする。

重い。

仕方がないので、かじる。

「こら。」

あかいのが取り上げた。

「それは食べるものではない。」

「ふぅー。」

でも、においがする。

黒いののにおい。

「……。」

リディアは何も言わず、小さな頭を撫でた。

昼。

王宮の庭。

「ふぅー。」

鼻をふんふん。

いない。

黒いのも。

きらきらも。

みどりも。

大きいのも。

いない。

「どうした?」

あかいのが聞く。

「ふぅ。」

わからない。

ただ。

いない。

夕方。

あかいのが木の棒を振っていた。

ぶん。

ぶん。

ぶん。

つよい。

でも。

ちがう。

黒いのは、もっといっぱい振る。

ぶん。

ぶん。

ぶん。

「……シフォンを思い出しているのか。」

「ふぅ。」

あかいのは少しだけ困った顔をした。

「もう少しだ。」

「きっと帰ってくる。」

わからない。

でも。

あかいのは、やさしい。

夜。

「ふぅ……。」

今日は少しだけ静かだった。

「寝るぞ。」

だっこされる。

あったかい。

目を閉じる。

夢を見た。

『フウー!ご飯ですよー!』

『ふぅー!』

黒いのが笑っていた。

目が覚める。

「……ふぅ。」

いない。

でも。

少しだけむねがあったかい。

きっと。

またいる。

そんな気がした。

窓の外では、王都の夜風が静かに吹いていた。

焚き火を囲みながら、シフォンが呟く。

「フウ、元気ですかねぇ。」

「元気だろ。ケガも病気もしたこと無かったろ。」

「そうですけどー…。」

北部にも、夜風が吹いていた。

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