地下への入口
ターケシが続ける。
「次の問題は、具体的に、この安息の間へどう行くか。」
シフォンが手を挙げる。
「歩いていくしかないですよ?」
「そのとおりだけど、そうじゃない。安息の間があるとして、そこへどう歩いていけばたどり着けるのか。通路や階段があるのか、その入口はどこなのか。それが分からないということだ。」
シフォンの問いに、言い直して説明する。
「地図がありますよ。」
「地図?」
「私たちが作ったシーツの地図に、地上の怪しい通路や入口っぽい所を書き込みました。」
ターケシも気づいた。
「確かに。あれを見て考えようか。」
「カバンに入れてます。私たちがいない間に、部屋でお掃除の人とかに見つかると大変だから。」
本をいったんどかし、シフォンがカバンから引っ張り出したベッドシーツを机の上に広げる。
この国へ来てから歩いた場所を書き込んだ地図。
観光のつもりで歩いた道。
階段。
壁。
庭。
水路。
見張り。
狐の穴まで。
「補修記録と照合してみれば、隠し通路が見つかるかもしれませんわ。」
古い見取り図と、シーツの地図を見比べる。
「ここ。」
ユヅカが指した。
ターケシたちが歩いた場所。
市街の一角。
現在は、行き止まりになっている。
ただの壁だった。
だが、古い図面では。
一本の細い線が、その先へ続いている。
そして。
下へ。
世界樹の根の中へ。
「……階段。」
シフォンが呟いた。
「らしいな。」
「でも。」
ユヅカが言う。
「本当に残ってるか分からないわ。」
「ああ。」
「何百年前の図面かも、はっきりしない。」
「ああ。」
「壁の向こうが埋まってるかもしれないし、途中で崩れてるかもしれない。」
「そうだな。」
「それに。」
ユヅカは、机に置かれた御伽噺を見る。
「そもそも私たち、死者が世界樹の根へ帰るっていう御伽噺から、ここまで推測してきただけ。」
ターケシも本を見る。
長い旅を終えた旅人。
地下へ帰り。
水を飲み。
眠り。
やがて再び旅立っていく。
本当にそんな場所があるのか。
そこにフィリアがいるのか。
何一つ確証はない。
ターケシは古い図面へ目を戻した。
「行ってみるか。」
「……やっぱりそうなるんだ。」
「他に手掛かりがない。」
「地下がどこまで続いてるかも分からないよ。」
「そうだな。」
「数時間で済むかもしれないし、一日かかるかもしれない。そもそも目的の場所がないかもしれない。」
ターケシは娘を見た。
「俺たちをなんだと思っている?」
ユヅカが瞬きをした。
ターケシは、古い図面を指で叩いた。
「C級冒険者だ。」
隣でシフォンの耳がぴんと立った。
「ダンジョン探索! 廃鉱山を調べたことがあります!」
「ああ。」
ターケシは笑った。
「冒険者の本業だ。」




