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奴隷市場から始まる異世界冒険譚―第二部エルフ王国編  作者: たーけし
北部の英雄

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帰ってきた英雄

前方に土煙が見えた。

「……ご主人様。」

シフォンが耳を立てる。

「馬です。」

「何騎だ。」

「いっぱい。」

「雑だな…いや。」

やがて、それは見えた。

旗を掲げる騎馬。

一騎。

二騎。

十騎。

……数十騎。確かに、いっぱいだ。

ターケシは思わず目を細めた。

全員が甲冑を纏い、馬には馬鎧。

遠目にも精鋭と分かる。

「みんな、落ち着け。」

「いきなり襲ってくることはないと思うが……。」

先頭の一騎が速度を上げる。

「止まれー!」

素直に馬車を停める。

騎士が馬を止め、バイザーを上げた。若い青年だ。

「失礼する!どちらからお越しになられたかな?」

「第二王子アルフォンス殿下の使いだ。先触れは届いていると思うが。」

若い騎士の目が大きく見開かれる。

「おお!」

彼は慌てて馬を降り、胸へ拳を当てた。

「馬上より失礼した!」

「私はヴィンターベルク辺境伯家三男、クラウス・ヴィンターベルク!」

「ターケシ殿、ロザリア・フォン・ハリントン嬢御一行のご案内を仕ります!」

「私に続いてください!」

再び馬へ飛び乗る。

「勅使ご通過!」

「ささげー剣!!」

道の両側へ騎馬隊が並ぶ。

一斉に剣が抜かれた。

鏡のように磨かれた刀身が、夏の日差しを反射する。

「おお……。」

シフォンが目を丸くする。

「辺境伯家って、すごいんですね……。」

「北の守り手だからな。」

ターケシは苦笑する。

「……いや、勅使じゃないんだけどな。」

「よろしいのです!」

いつの間にか御者台の隣へ座っていたロザリアが、なぜか胸を張っていた。

「辺境伯家にとって、アルフォンス殿下の名代は勅使も同然です!」

「そういうものか。」

「そういうものです!」

少しだけ、誇らしそうな顔だった。

道の両脇には、いつの間にか人々が集まっていた。

農夫。

商人。

子供たち。

皆、馬車を見ている。

「あれが……。」

「ハリントン家の。」

「ロザリア様……?」

「本当に生きておられたのか。」

ターケシは隣を見る。

ロザリアは固まっていた。

「どうした。」

「い、いえ……。」

「手を振らないのか?」

「えっ!?」

「いや、振ってるぞ。」

気づけば、小さな女の子が両手を振っていた。

「ロザリアさまー!」

「あ……。」

「ほら。」

「で、ですが……。」

「昔はどうしてた。」

「……こう、です。」

恐る恐る手を振る。

一瞬の静寂。

次の瞬間。

「おおおおっ!!」

「ロザリア様だ!!」

「ご無事で!!」

「王都を制したんだって!?」

「王国最強を倒したそうだぞ!」

「さすがはガレオス様の娘だ!」

「ハリントン家万歳!!」

「ロザリア様ー!!」

「ひゃっ!?」

シフォンが目を輝かせる。

「ご主人様!人気者です!」

「みたいだな。」

フィリアが小さく笑った。

「ふふ。」

「北部の人たちは、昔からハリントン家が好きだったもの。」

ロザリアは呆然としていた。

四年前。

全てを失ったと思った。

誰も覚えていないと思っていた。

だが、違った。

「お帰りなさい!」

誰かがそう叫んだ。

ロザリアの目が大きく見開かれる。

「……。」

「お帰りなさいませ!ロザリア様!」

「……ただいま。」

その声は、歓声にかき消されるほど小さく、少し震えていた。

「泣いてるのか?」

「泣いてません!」

「泣いてますよ?」

「泣いてますね」

「もう!!」

やけになったように大きく手を振るロザリアに、更に歓声が大きくなった。

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