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奴隷市場から始まる異世界冒険譚―第二部エルフ王国編  作者: たーけし
攻防

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29/65

対応

天幕へ一人の斥候が駆け込んできた。

「報告!」

リリアが視線だけを向ける。

「何だ。」

「辺境伯軍が動きました!」

天幕の空気が変わる。

「規模は。」

「騎士五十ほど!」

「街道沿いの町村へ分散しております!」

「各地で猟師や木こり、民兵まで招集している模様!」

参謀が顔をしかめる。

「こちらを嗅ぎ回っているのか……?」

リリアは答えない。

地図へ視線を落とす。

辺境伯軍。

ローズ。

自軍。

三つを頭の中で並べる。

やがて口を開いた。

「目的は。」

斥候は首を振る。

「不明です。」

「ロザリアたちを捜索している、との話は耳にしました。」

「何でも、王都からエルフ王国へ向かう使節が行方不明になったとか。」

ロザリア・ハリントン。

ローズの妹か。

地図を見つめる。

「……そうか。」

リリアは静かに頷いた。

「ローズとの繋がりがあるとは限らん。」

「偶然かもしれん。」

「だが。」

指先が西の森を叩く。

「辺境伯軍とローズに接触されれば厄介だ。」

参謀が息を呑む。

「では……。」

「西へ百二十。」

参謀が目を見開く。

「百二十…。」

「先行した三十と合わせれば、西へ百五十になります。」

「ああ。」

リリアが言葉を続ける。

「ローズに速やかにとどめを刺す。」

「辺境伯軍とぶつかる前にな。」

天幕の外で怒号が飛ぶ。

「第三隊から第六隊!」

「西へ!」

武装した男たちが次々と持ち場を離れ、西の森へ駆け出していく。

赤牙の兵力は、目に見えて西へ流れ始めた。

その様子を、少し離れた樹上から一人のエルフが静かに見下ろしていた。

(……西へ増派。)

(敵拠点は、手薄になる。)

事態は、ターケシとローズ達の望むように動いていた。

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