捜索活動
辺境伯領では、不穏な空気が広がっていた。
既に、ロザリアたちの失踪は民草の噂になっている。
このままでは、真相が何であれ、北部の反王都感情の高まりは避けられない。
クラウスは騎士団の主だったメンバーを辺境伯居城の会議室へ集めた。
「最後の目撃は五日前。」
「宿場村を北へ。」
暗殺者による襲撃を受けた村だ。
「そこから先は誰も見ていない。」
クラウスは地図を広げる。
街道。
森。
川。
山道。
一つ一つへ視線を走らせた。
「騎士団五十名を動員する。」
「五名ずつ十班に分けろ。」
参謀が復唱する。
「十班。」
「街道沿いの町村へ分散展開します。」
クラウスは頷いた。
「各村の猟師、木こり、民兵を招集。」
「森は森を知る者に任せる。」
「騎士はその指揮を執れ。」
「無闇に森へ踏み込むな。」
「痕跡を見つけたら角笛。」
「単独で追うことは禁止だ。」
「伝令は常に確保しろ。」
「はっ!」
命令は瞬く間に伝令騎兵によって各地へ運ばれていく。
やがて城門が開いた。
赤髪の若き騎士が馬へ跨る。
クラウス・ヴィンターベルク。
辺境伯直属騎士団長。
「出発!」
五十騎が一斉に駆け出した。
分かれ道ごとに五騎ずつ十班へ分かれ、それぞれに割り当てられた町村を目指す。
その日のうちに、北部は動いた。
村では鐘が鳴る。
猟師は弓を背負い、
木こりは鉈を腰へ差し、
農民たちも槍を手に集まってくる。
「ロザリア嬢一行の捜索だ!」
「森へ入るぞ!」
誰一人、それを他人事とは思わなかった。
ロザリアは北部の娘だった。
その仲間を探すことは、
北部を守る者すべての務めだった。
こうして、辺境伯領全域を巻き込んだ捜索が始まる。
彼らはまだ知らない。
その森の奥で、
既に戦いが始まっていることを。




