↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奴隷市場から始まる異世界冒険譚―第二部エルフ王国編  作者: たーけし
北の灯火

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/67

保護と拘束

ターケシたちが連れて来られたのは、森の奥深くに作られた隠れ里だった。

木々の間を縫うように建てられた小屋。 見張り台。 偽装された柵。 そして、武装した男女。

「止まれ!」

目隠しを外されたターケシは思わず目を細めた。

「……思ったより立派だな。」

「黙れ、奴隷商人。」

「まだその扱いなのか。」

「当然だ!」

縄で縛られたまま背中を押される。

隣ではフィリアも同じように拘束されていた。

「災難ね。」

「お前の知り合いじゃないのか。」

「知らないわよ。」

「本当か?」

「たぶん。」

「たぶんか。」

男たちは、そんな二人を険しい目で睨んでいた。

「エルフが人間に与するなど、聞いたことがない。」

「それは私も同意見ね。」

「何?」

「だから、あなたたちの気持ちは分かるって言ったの。」

「……。」

話が通じているようで通じていない。

「この二人は別々の牢へ!」

「はっ!」

「おい。」

ターケシが手を挙げる。

「何だ。」

「せめて説明を聞いてからにしてくれ。」

「黙れ!」

「やっぱり駄目か。」

一方。

ロザリアは、洞窟の中だがベッドが置いてあり清潔な一室に通されていた。掃除が定期的にされているのだろう。

「ロザリア!」

「は、はい!」

ローズは両手で妹の手を包み込み、また涙を流していた。

「疲れただろう!お腹は空いていないか!?」

「い、いえ、それよりも――」

「湯を用意しろ!」

「毛布もだ!」

「あと甘いものも!」

「姉様、少しお話を――」

「話は今晩だ!」

ローズは行ってしまった。

「私は…。あなた、お名前は何ていうの?」

女性の獣人…茶色い垂れた獣耳が印象的な、年上のお姉さんという感じ。何となくだが、懐かしい匂い。

「シフォンです。」

「シフォンちゃんね。どこの村で生まれたの?」

「生まれたのは、灰狼族のグラエヴァル……だと思います。」

「……。」

「で、でも、村が焼かれて奴隷になった時、まだ小さくて!よく覚えてないんです!」

女性は両手を口に当てて、まぁ…と息を呑む。

「グラエヴァル……。」

「知ってるんですか?」

「ええ。」

「北部で知らない獣人はいないわ。」

「……え?」

「あの村は、とても良い村だったもの。」

女性は涙ぐむ。

「それなのに赤牙に突然襲撃されて…。」

「シフォンちゃん!」

「は、はい!?」

「よく生きていてくれた……!」

今度はシフォンを抱きしめる。

「可哀想に……。」

「え?」

「もう大丈夫だからね。」

「はぁ。」

「重い荷物を持たされたんでしょう?」

「持ってました!」

「やっぱり!」

「水汲みも!」

「してました!」

「なんてことなの……!」

「でもご主人様も一緒に――」

「言わなくていいのよ!」

話が噛み合わない。

「今日からここがあなたのお家だからね。」

「えっ。」

「ご飯もいっぱい食べていいの。」

「本当ですか!?」

「もちろん!」

「ご主人様も呼んでいいですか?」

「……。」

女性の顔が曇った。

「シフォンちゃん。」

「はい。」

「その男のことは忘れなさい。」

「ええっ!?」

忘れろと言われても、困る。

ご主人様は、ご主人様だ。

一緒にご飯を食べて。

一緒に旅をして。

一緒に怒られて。

一緒に笑った。

忘れるという意味が、シフォンにはよく分からなかった。

「連れて行け!」

ターケシは小屋の地下へ連れて行かれていた。

「階段か。」

「黙れ。」

「ちなみに晩飯は出るか?」

「奴隷商人に出す飯などない。」

「なるほど。」

鉄格子の扉が開く。

中は簡素な牢だった。

藁の寝床が一つ。

水桶。

以上。

「入れ。」

「へいへい。」

ガシャン。

扉が閉まる。

「……。」

しばらくして、隣の牢から聞き慣れた声がした。

「あなたも捕まったのね。」

「フィリアか。」

「ええ。」

「何か言うことは?」

「特に。」

「お前な。」

フィリアは鉄格子にもたれ、小さく肩をすくめた。

「でも、久しぶりなんじゃないの?」

「何がだ。」

「あなたが牢屋に入るの。」

「言われてみれば。」

闘技奴隷時代以来かもしれない。

「ご主人様ー!!」

突然、遠くからシフォンの声が響いた。

「ご主人様ー!!どこですかー!!」

「元気そうだな。」

「元気そうね。」

「ご主人様ー!!ご飯あるそうですよー!!」

「良かったな。」

「良かったわね。」

ターケシは大きくため息をついた。

「……ややこしいことになったな。」

「そうね。」

「でも。」

「何だ。」

フィリアが小さく笑う。

「悪くないんじゃない?」

「どこがだ。」

「だって、姉妹が再会したもの。」

「それはそうだ。」

「それに。」

「?」

「シフォンも、故郷を覚えている人に会えた。」

「……。」

「あなたが牢屋に入った価値くらいはあったんじゃない?」

「安い扱いだな、おれ。」

「元奴隷なんだから慣れてるでしょう?」

「まぁな。」

森の奥では、久しく聞かなかった笑い声が響いていた。

「ご主人様ー!!本当にご飯ありますよー!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。