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異世界のひと  作者: くものひと


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かつての勇者や使徒の姿を表した像や絵画は多い

各地にあるそれらを見て誰しもが彼らはそうであったと記憶する

彼らの記録や伝記を綴じた書物を読む者の頭の中では記憶した彼らが躍動し、その空想はやがて真実として置き換えられていく



玉座を擁する中央の城

その一室にも彼らの絵画が飾られている


中央の椅子に腰掛けた美しい衣を纏う聖女

その肩に手を置く立派な鎧と聖剣を携えた勇者

その勇者と肩を並べるように

剛者の体格と厳格な雰囲気を持つ武神

知性と神秘性を帯びた賢者


四人が一枚の絵の中で描かれている

それはいつ描かれたというのか


世界が危機に瀕している戦時中にそんな余裕は果たしてあったのか

平和が訪れた時には聖女は崩御されている



何が言いたいかというと勇者一行の姿や動向を伝えるものは全て制作者の主観や願望によるものであり、彼らの本当の顔がどうであったかはもう誰も知らないのである



この城にある一枚の絵

けして上等とはいえぬ材質の紙

それは聖女が書いたとされる勇者の似顔絵

そう伝え聞いている

勿論それとて真偽を確かめる術はない


どの絵画にも見る様なそれではなく、只々あどけなく素朴な顔をした青年が精巧に描かれている

それが領主一族のみが閲覧できる書物の中に保管されているのだ

朽ちぬように術まで施されて


幼い頃より、私はこの領にあるこの絵こそが真実であると疑わなかった



私は今日、勇者を見た

隣領で起きた悲劇とその原因

それらの詳細を報告に来た傭兵

彼を見た瞬間、思わず目を見張った



使徒と同じ境遇を持つ存在の出現

私の信じる勇者の来訪

大森林の異変


これらをまとめて偶然だと投げやる理由が私には無かった

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