話し合う男
促されて焚き火の前に座る
バルドさんは闇に佇む彼女に視線を向けたまま僕に問う
「現在のご自分の状況などで理解できている事は何かありますか?」
「どうして焚き火を挟む様に座るんですか?」
「…あれは貴方に敵意を持っていないと感じますがその認識でよろしいのでしょうか?」
「火の様子を見て風下に誘導しましたよね?」
「………」
「………」
大滝の轟音がわずかに聞こえる夜の森
僕達の話し合いは悲しいすれ違いの末、答えが出ずに難航していた
沈黙に業を煮やしたのか、のそりと闇から現れた彼女が『もう帰ろう』と言わんばかりに頭上から僕を咥えようとする
「それは助けた方がよろしいのですか?」
「でお゛だずどでぎに゛ん゛でい゛ざれ゛る゛がも゛じれ゛ま゛ぜん゛んんん!」
迫るひげ袋と巨大な牙から必死に抵抗する僕を涼しげに見守るバルドさん
ちょっと半笑いなのを僕は見逃さない
抵抗を理解してくれたのか、彼女は僕をひと舐めして僕の後ろに横たわる
「この森が縄張りなんだと思います
この子が子離れできるまで一緒にいてあげようかと思うんですが駄目ですかね…?」
「それはこの森で、という事ですか?」
「はい…多分、縄張りを出ようとすると怒るんじゃないかな」
微かに、ほんの微かにあの子の記憶がフラッシュバックする
有り余る体力…暴れたい盛り…遠くまで走れる脚力…初めて見る生き物………初めて受ける限界以上の痛み
一瞬通り過ぎた目の前の人への怒りは僕への優しさが塗り潰した
「と言っても試したわけじゃないですし…子離れできなくてもうまく誘導すればこの子と一緒にロックハントまで行けるようになるんじゃないかな」
「それ…は…どうか遠慮願いたく…」
「バルドさん、騎士団に合流して僕の無事の報告をお願いできますか?
とりあえず大丈夫だし、大丈夫になったら帰りますからと…あと迷惑かけてごめんなさい」
「…分かりました、私がここにいても、その…刺激するだけでしょうし
近くの町から定期的に食料を配達してもらえるよう領主様に頼んでみます
他に何か必要な物はありますか?」
「ベッドがほしi「なさそうですね」




