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『私の名はバルド
とある理由で放浪しているただのバルドだ
これを読む者の前には何者か分からぬ遺体となっている事だろう』
火を起こし、簡単な食事の後
そう書き出した日記
長い旅になる
治療は添え木で強く固定しただけのものだ
綺麗に折れていたようで安静にしていれば治るのは早いだろうと言われた
中央には即座に治癒を完全させる術師もいるらしいが、我が領には確認されていない
可能な限り馬に積める物資を分けてもらうと、止める友人に父への言伝を頼み私は団を抜けた
『私はとある使命を自らに課し、旅をしている
これを読む者はトゥフォッカ国ロックハント領領主にこの日記を届ければ謝礼が出る事を約束する』
私が家名を汚した事で勘当されていなければ、だが
モンスタ―の向かった方向
大滝の辺りで痕跡を探すだけですぐに辺りは暗くなった
あれほど巨体のその足跡をここでは見つけることはできなかった
人と違い水の在り処を見つける事など、モンスターには簡単なのだろう
ロックハントとオータヴェストの領境としてベルクフォルムまで横たわる大山脈
山頂はどこも雲に隠れ、稀に雲が抜けてもその輪郭は霞むほどだ
先ずはロックハント側を行く
どこまで登る
可能な限りどこまでも登ろう
大滝を囲む森林の中、木々を抜けたわずかな風の中に獣臭を嗅ぎ取る
怪我の痛みと熱に負け、森林を抜ける前に火を起こしたのはやはり早計だったか
草木をかき分ける音
真っ直ぐにこちらへ向かってくる
光に誘われたか、獲物の匂いに誘われたか
「あ、え?バルドさん?」
闇に浮かぶ巨大な2つの眼の下、彼の顔が焚き火の明かりにさらされた
私が日記の続きを書くことはなかった




