山岳地帯へ向かう男
参加する予定はなかったが僕も山岳地帯へ向かう分遣隊に同行する
元々この遠征自体にも同行している立場なので、必要以上の戦闘に参加させたくないと一度は断られたがどうしてもと押し通した
どんな心境の変化かと片眉を上げるバルドさんも護衛として同行してくれる
多分僕を呼んでいる…正確には僕ではないが
山岳地帯の手前に陣を張る
ここまでの移動の際、遠見の騎馬の一騎が山岳地帯へ向け草原を走る影を目撃した
故に捜索の照準は自ずと絞られた
といっても山岳地帯は広範囲であり、棲息するモンスターの数や種類も明確ではない
当該の標的かどうかはともかく、推察や怪しい動きをするものを対象として討伐し様子を見る
これ以降も目撃や被害が報告されるようなら対応できるギルドに引き継ぐという形になる
ただなんとなくだけど、僕はその姿を予想していた
だから僕も一緒に行く
誰より先に僕が見つけなければならないし、きっと向こうが僕が見つける
山岳地帯に入る
とは言ってもその入り口と呼べるようなあたりをウロウロするぐらいだ
麓ですら既に険しく人の侵入を拒んでいる
深く入ればそこはこの辺りに巣食うもの共の縄張りになるだろう
餌場に餌が自ら飛び込むようなものだ
知能の高いものが存在すれば退路など無くなるだろう
部隊は慎重に捜索する
時折、遠吠えが聞こえる
山肌に反響して距離も方角もわからない
これじゃない
これでもない
これもちがう
僕らは呼び合い引き合う
バルドさんが僕に向かって叫ぶ
もう遅い
見上げる僕の前にはあの子よりもっと大きな黒いサーバルキャットがいた




