歌ったり訓練したりな男
ふん ふーふふん ふん ふーふふん
ふん ふーふーふーふーふーん
「良い歌ですね、故郷の歌ですか?」
遠征延長2日目、僕が何気なく浮かんだメロディーを口ずさんでいると副団長のヘイムスさんが声をかけてきた
数日前の領主様からの伝令で、遠征に参加している騎士さん達の身辺調査が終わった事と疑いなしという事が報告された
元々は騎士団長さん厳選の団員で構成されていたけど団長さんもホッとしたと思う
「はい、故郷の歌です 光る虫が題名になっているんですよ」
「光る虫ですか 歌になるくらいなのだから美しいのでしょうね」
「もう帰る時間だよってなったら歌う歌です」
「そう…ですか…」
「ふふふふふーんふーん ふふふーん」
「それはどんな」
「売られていく子牛を歌った歌です」
「………」
「………」
ヘイムスさんと楽しくおしゃべりをしたあと、僕は装備を取りにテントへ戻る
バルドさんに稽古をつけてもらった成果と、あの日から伸びに伸びた身体能力
そのお披露目?も兼ねて騎士団の全体訓練に参加する
身体は確かに引き締まった感じはあるけど、筋肉ムキムキのゴリマッチョになったわけではない
なのに、単純な力勝負をしてムキムキゴリマッチョのバルドさんと良い勝負ができるようになってしまった
いつも以上に固く無表情になったバルドさんが提案し、そのバルドさんを薄い目で睨む団長さんが了承して今日の全体訓練の参加が決まった
ムキムキゴリマッチョなのに僕と良い勝負をするバルドさんと合流し、野営地から少し離れた場所へ向かう
身体をほぐしたり連携の確認が主なので、城にいる時ほど本格的なものではない
戦力として遠征に組み込まれて、訓練で怪我をしてお荷物になっては目も当てられない
「負傷者として護衛付きで城にご帰還できるよう手配いたしましょう」
「いやだ!」
周りの騎士さん達がハラハラしながら見守り、結局お忙しい団長さんと副団長さんを連れてくるまで僕とバルドさんの熱のこもった打ち合いは続いた




