東を目指す彼女
馬車はゆっくりと東へ向けて街道を進む
元々四頭の馬で引いていた馬車を、馬になったノアちゃんのゴーレムがそれ以上の馬力で力強く引いている
馬車の荷台に、ベッド代わりにしていた草を敷き詰めて乗り心地の悪さを誤魔化した
御者台に座るノアちゃんが時々、ゴーレムのお尻に手を伸ばしてペチペチと叩く
命令して動かしていたので不思議に思っていたが、見ていたら叩きたくなったとの事なので特に意味はないらしい
ゴーレムを馬に変えたおじさんは、ゴーレムの背中で器用に寝そべり寝息を立てていた
倒れた紬ちゃんの事もあり、寝ずの番をしてくれていたようだ
やがて前方に見上げるほどの大きな岩が現れる
街道はその岩の前を通るようにまっすぐ伸びている
「この岩が領境だよぉ」
岩の目の前までくるといつの間にか起きていたおじさんが胡座をかきながら岩を指差す
岩は綺麗に二つに割れていてそれが領境との事だ
ここで領土争いがあった際に武神が岩をここまで担いできて持っていた斧で真っ二つに割り、領境と定めて争いを無理矢理に収めたいう逸話があるそうで身振り手振りを交えながら話してくれる
北は大森林、南は川にあたるまで
武神の意思を汲み取り多少の曖昧さはあれどこの岩を基準に真っ直ぐに領境は伸びている
「夕方前には街に着く、そこに僕の知り合いがいるから紹介しよう」
肩に止まった鳥を指で撫でながらおじさんが言う
そこでお別れになる
大森林から逃げるように南に逸れる街道
次第に人の姿を見るようになり道の左右には田畑を望む
左手の小高いあたりには町が見えてきた
傾きと共に濃くなる陽の光が、並んだ赤い屋根の家々を照らしている
馬車が丁字路を町に向かって曲がる
正面にきた町を眺めていると馬が何頭か駆けて来るのが見えた
近くまで来ると踵を返し並走しながら馬上の人達がおじさんと何か親しげに話している
紹介されたのか私達に向けてそれぞれ丁寧な会釈を見せてくれた
「みんな疲れただろう?今夜はゆっくり休むといいよ」




