食後の私
おじさまは名乗ることなくおじさんで良いよと言った
古い知人の様子を見てきた、その帰りの途中だったそうだ
「膠着状態から一歩踏み出したみたいでねぇ」
「それはおめでとうございます」
満面の笑みが返ってきたのでよほど親しい間柄なのだろう
私達の事情を簡単に話すと、本来なら南に向けていた帰路を変更して安全な場所まで同行してくれる事になった
「ロックハントという街まで行きたいのです」
「あ〜それなら東だねぇ…ロックハント領に入って、更に東へ行けばその中心都市のロックハントだ
領境を越えたら近くの町か村で馬車でも探そうかねぇ」
おじさまから明確な答えを貰ったノアちゃんはほっとした顔を見せる
ここまで随分とこの小さな女の子に頼り切ってしまって申し訳ないと思う
この世界での常識は分からないが、私がノアちゃんの年齢の頃はまだまだお母さんにべったりだった
こんな状況に放り込まれたら、ただ泣いてお母さんを呼ぶしか出来なかったはずだ
「おじさま、不躾ですがご助力をどうかよろしくお願い致します」
頭を下げる私達におじさまはおどけて見せる
「いいよいいよぉ〜 急ぐ理由もないしねぇ
女性のピンチに手を差し伸べられておじさんも嬉しいよぉ」
気を使ってくれるおじさまの言葉にみんなが笑い合う中、おずおずとノアちゃんが小さく手を挙げる
「…あのぉ、【ぴんち】ってなんですか?」
「【ピンチ】っていうのは簡単に言うと『危ない状況』って意味かな」
私が答えるとノアちゃんはコクコクと頷く
そして覚える為か、繰り返し唱えるように小さな口が動く
そういえば…
「おじさまは…あ…その失礼でなければ良いのですが…」
「なんだいなんだい?」
「これほど日本語を流暢に話される事に感服いたしまして…どちらかで学ばれたのですか?」
「あぁ!別に失礼な事なんかないよぉ 僕に魔法を授けてくれた人にニホン語も…
『おじさん!大変!!』
綾乃さんが叫ぶ
少し離れた場所で魔法の練習をする紬さんの見学していた筈だ
『紬ちゃん、頭クラクラするって言って倒れちゃった!』




