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異世界のひと  作者: くものひと


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60/74

祈り願い求め望み念じ唱える僕

また逃げている

今度は人から

あんなに優しくしてくれたのに

いや、優しいままの人達もいた

だからこうして助かったのだろう


…助かった?

あんなに怖い思いをいっぱいして?

こんなに疲れて喉がカラカラなのに?

見渡す限りの草原

人のいる場所…安心できる場所までこれからどれだけ歩くのだろう

お腹も空いてる

寝て起きたらもっと体は弱ってるんじゃないかな



裕衣さんを見る

彼女はノアちゃん曰く魔法使いの素質があるらしい

羨ましい

僕も何か見たり感じ取る練習をしてみたけどダメだった

こんな時に彼女が魔法を使えたらこんな苦しい思いをしなくて済んだのでは…

そんな事を考える自分が嫌いだ

ただの嫉妬じゃないか




そういえば一度だけ

ほんの一瞬だけ

違和感を感じた事があった


ちょっと熱を出してベッドで横になっている時

朦朧とする意識の中、彼女が僕の額に手を当ててくれた時

あれは夢うつつ、熱にうなされた感覚の中だった


忘れていた

まぁ覚えていても人付き合いが苦手な僕がお願いなんてできなかったけど


でも今なら

こんなに辛い今なら

死んじゃうかもしれないなら



裕衣さんの前に座る


不思議そうな顔をされる


頑張って言う


「ゆ、裕衣さん、少し試したい事があるんです」


 「え?」


きっと他のみんなにも変な奴だって思われてる


「失礼します!」


そう言って裕衣さんの手を握る

頑張って探す


裕衣さんの片方の手を自分の額に当てる

目を瞑る

感覚を集中して探す捜すさがす

家でも学校でも、そしてこの世界に来ても散々妄想してきた不思議な力のイメージ



なにかが答えた気がした



『…っ!!水!水飲みたい!水よ集まれ!シャワー浴びたい!シャワー!いっぱい水!雨!水!シャワー!雨!雨!いっぱい雨!!』







目を開く

地面は乾いた色をしている

空を見上げる

綺麗な夕焼けだ

赤く染まった雲

影は小さい

あれでは雨は降らない



結衣さんに謝罪して手を離す

みんなが心配そうな目で見ている

この視線には慣れていた







『ん〜君かなぁ?さっき水〜!とかシャワー!とか雨〜!って叫んでたのはぁ?』



僕は叫んでいない

心の中で叫んだだけだ


声に振り返るとおじさんがいた

浮かんでいた

日本語だった

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