20
おかしい…
モンスターの再生の止まる気配を感じない
調子に乗って大技を連発していた連中は、その顔に疲労の色を隠せなくなっている
止まった足を触手に絡め取られた奴が口に運ばれるすんでのところで、ルディと筋肉ダルマの剣がその触手を切り落とした
礼を言うソイツを一瞥してルディはモンスタ―に向き直る
(別にお前の命なんかどうでもいい…これ以上手数が減ることも奴の体力が回復する事も許されねぇんだよ)
陣頭指揮を執る奴から声が上がる
奴の腹を満たすな、食われるようなノロマは戦線を離脱しろと
「なぁルディよぉ…なんでアレはあんなに動かねぇんだろうなぁ ああいう奴だと巻き付いてきたり尻尾で薙ぎ払ってきたりってのがお決まりだろ? 林に隠れた先が尻尾であればだがなぁ…」
筋肉ダルマの問いは、恐らく自分の嫌な予感や考えを整理しているだけで応えを求めているわけではない
明確ではないが嫌な想像をしたルディは思わず林の奥を睨む
指揮者が叫ぶ
「ルディ!奴の胴の先を辿れ!!」
逃げる獲物を逃がすまいとする触手を切り捨て林に飛び込む
その後ろではモンスターに少し変化が見えていた
触手が再生しない
勝機を悟った指揮者を筆頭に主だった者達が周囲に喝を入れる
一斉に響く応の声を微かに聞こえたルディは混乱する自分を抑えるのに必死だった
奴の太い胴はいつまでも太いまま続いていた
このまま走り追い続けるか、報告に戻るか
ルディはそのまま走る
目の錯覚か
胴の太さが奥に行くほど増しているように見えた
ただ胴の先を確認するだけの戻らぬルディを忘れ、最後の総攻撃が始まる
あらゆる場所にあった眼はもう見当たらない
口は頭部の中央のみ
触手も残すは5本にまで減っていた
筋肉ダルマこと、ザイオンの重い一撃を最後にモンスターの動きが止まる
ややあって轟音と共にその巨躯が大地に堕ちる
だが鬨の声は上がらない
最後の一撃を放ったザイオン
トドメを譲られたからではない
誰も動かなかったから自分が動いた
自分達が戦っていたものはなんだったのか
頭にあった口は消えていた
頭?違う…手のひらだった
目の前に倒れるのは巨大な左手
見つめる彼らの耳に、先程と同じ轟音が遠くに聞こえた
見るとここにあるものと同じモノが倒れているようだ
ならばあれは右手か
今までと比較にならぬ、さらなる轟音が林より響く
朝日が顔を出したばかりの世界にまた夜が訪れる
疲れ 諦め 絶望
乾いた唇はくっついたまま
声を発する者はいない
只々、それを見上げていた




