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異世界のひと  作者: くものひと


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15

つい部下に接するように強めに押してしまった

相対する前に彼が体制を立て直せたことに胸をなでおろす

団長は彼から視線は外さぬとも、怒りは私に向けているのがよくわかった

この距離ならば対応はできるが彼との間を一歩踏む

あくまで彼は我々の尻拭いをしてくれている立場なのがだから自重せねば…



…彼は何をしている?


装備を置いてモンスターににじり寄っている

思わず叫んだ声が団長と重なる

それはやたら圧力を感じる彼の手によって制された


重くて動き辛いからと彼は鎧を着ていない

戦いに身を置いた事のない故の浅慮には困った

故にモンスターはできるだけ弱らせた

だが盾すら捨て、あれ程無防備に近づくのはいただけない


…シャツを脱いだ

まぁ、アレの爪や牙にかかればないも同然だが…

…ズボンを脱いだ

どちらも腕に巻いている…何をしたいのか


遠巻きに見ている騎士達のざわつき声が大きくなる

彼に向かって振り下ろされる前足

素晴らしい動きで軽々避ける彼に少し安心する

衣服を巻きつけた腕に噛みつかれ…いや、噛みつかせた?




担架を用いて運ばせたのは『彼』ではなく『モンスター』

彼自身は腕の治療もそこそこに、モンスターに付き添い声をかけている

遠征に同行していた医師に見てもらうが恐怖と困惑に治療は捗らない

それはそうだ、医師は人を救う為にいる


なんとか治療を終えたあとも彼は側を離れない

モンスターもまるで泣く友を慰めるが如く、その舌で彼の涙を拭う

そしてそんな荒唐無稽な想像をする自分にも驚く

やがてモンスターが不安がるという理由で彼は団長と私を部屋から追い出した


当初の予定は果たされていない

混乱が生まれ、仕方なく騎士達の手を借りた

我々二人の信頼出来る者達を集めてはいる

…が、事が済むまで我々以外近づけるなと厳命を受けている

報告を聞けば領主様はさぞお怒りになられるだろう


とにかく…


とにかく明日からの予定も含めて父と相談しなければ…




その夜、治療と彼の看病の甲斐もなくモンスターは死んだ


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