狩りを見学する男
恐らくこの先の物語に関係ないと思うので、動物はイメージしやすい実在のものを出します
僕の手に渡されたナイフが首を深くえぐり血が吹き出す
まず助からない
致命傷だ
浴びた顔から
ナイフから流れて伝わる手から
その体温を教える
事切れて、もう何も見ていないはずの虚ろな目
確かに僕の目を見た気がした
お前が殺したんだと訴えている
違う…違うんです
今日、僕達は城から久しぶりに本当の外に出た
訓練所やお茶を頂いた中庭で空を仰いたが視界に必ず壁があった
馬車で街を通り抜け門をくぐり、着いた先は領主様達がよく狩りをする場所だ
近くには小川が流れていて野営用の調理場が設けられている
すでに日よけの為のテントも立てられていて、さながら休日を優雅に過ごす日帰りキャンプといった感じだ
ここでお昼まで過ごしご飯を食べてお城に戻るのだ
空が高い
草の感触を手で楽しむ
子供の頃に連れて行ってもらったキャンプでは走り回ってた記憶があるが、今はきっとあの時の親の気持ちと同調している
目を瞑った瞬間に少し遠くに怒声が聞こえた
…モンスター
ではなく動物を獲物とした狩りが行われていて、みんなでそれを見学している
流石にモンスター見学ツアーは却下された
そもそも街の近くにはモンスターは確認されていない
常日頃から依頼を受けた冒険者や傭兵の人達が巡回しているし、騎士団でも遠征訓練によるモンスターの排除を行なっている
放たれた矢が大きな鹿の脚を捉える
歓声が上がる
射手の名が呼ばれ称えられる
まだ少し暴れる獲物を射手が捕まえ軽々と掲げる
また上がる歓声
獲物は今から処理をするがすぐに食べられるわけではないそうで、僕達のお昼ご飯は別でちゃんと準備されている
でもそのうち『あの時の鹿です』と言われてお皿の上に出されるのかも知れない
まだ生きている鹿が吊るされる
これから血抜きをするそうだ
『やってみますか?』
護衛の騎士さんがそう言いながらナイフを渡してきた
無理無理無理無理!




